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しおりを挟むタタン…タタン……
線路を通る度に聞こえる音と微かに揺れる車内の振動に、俺はまたうつらうつらと睡魔に襲われていた。
頭は船を漕ぎかけ、重たい瞼は何度か開閉するといつの間にか閉じていた。
真っ暗闇が広がる中、聞こえていた筈の音が一切しなくなった。
何事かと瞼を開けるとそこには乗客達の姿が一切なく、俺だけ一人車内に取り残されていた。
「あれ?さっきまで沢山いたのに……」
慌てて肩に掛けていたスクールバッグの中からスマホを取り出し電源を入れた。
灯りと共に映し出された画面には8:12と時間が記されていた。
「嘘だろッ!?完全に乗り過ごした…」
スマホを持つ手が力無くダラリと垂れた。
あまりのショックに項垂れて、すっかり空いてしまった座席にゆるりと近づき腰を下ろす。
ハァと大きく溜め息を吐いて座席の背もたれに寄り掛かると乗り過ごした原因を考えた。
「なんで乗り過ごしたんだ?あの短時間で爆睡したのか…?でも普通、他の人が降りる時に気づくと思うけどなぁ……」
自身の眠りの深さに呆れつつ、静まり返る車内をぼんやりと眺めていた。
そしてふと気づく。
(それにしても、あんなに人がいたのに……)
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