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しおりを挟むしかし、そんなことを続けていたある日。
いつもの如くスマホを彼に向けてシャッターチャンスを狙っていると、不意に彼が此方に振り返った。
「宮田、何やってんの?」「ッ……!」
いきなり声を掛けられた事で手元が狂い、スマホのシャッター音が押されて鳴る。
カシャッ!
彼は辺りを見渡し、不思議そうに僕へと告げた。
「今何撮ったんだ?」「べ、別に?間違ってカメラが起動されただけだよ!」
咄嗟についた嘘に彼はふぅんと返答する。慌ててスマホを隠すと、今度は彼が目の前に立ちはだかって隠したスマホを指差さした。
「どうして慌てたようにスマホを隠すんだ?」「えっ」
唐突な問い掛けに暫く思考を巡らせる。当たり障りのない的確な返答をと、考え練った言葉が咄嗟に口から出た。
「えぇっと、壊れると大変だから、、かな?ハハ、ハッ……」
我ながら情けない返答だと思う。何とかやり遂げようと笑いながら誤魔化すと、意外にも彼はそっかと大して気にもとめない様子だった。内心安堵の溜め息を零し、それじゃあとその場から逃げるように立ち去ろうとした時、不意にポケットからスマホが抜け落ちる感覚がした。思わず振り返るとスマホは地面になく、彼の手の中に納められていた。
「えっ、ちょっ…千草君?」
慌てて彼の手からスマホを取り返そうとすると、彼は何を思ったのか突然僕のスマホを持ったまま走り出したのだ。訳が分からずその場に硬直していると、彼は走りながら僕に告げる。
「宮田ー、オマエのスマホは預かった!返して欲しけりゃ取りに来いっ!!」「はっ?」「もし来なければ中身は確認させて貰うからなっー!!」「え、はっ?ええっ!?」
まるで宝を盗む怪盗の如く。高笑いを上げながら走り去って行く彼を僕は慌てて追い掛けた。
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