恋する魚

冬生まれ

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深く深呼吸をして息を取り戻す。その様子を伺う飛魚さんは私をじっと見つめて手を目の前に差し出す。

「最後の仕上げだ!」「ひんっ!!」

バシッと指で弾かれた額を覆う私に飛魚さんはケタケタと意地悪い笑みを見せる。

「いっったぁ…」「もうすんじゃねぇぞ?」

それから頭を優しく撫でる飛魚さんに私は子供の様に頬を膨らませた。

「う~…飛魚さんのイジワル!」「大人は大体意地悪だよ!」

飛魚さんの顔をチラリと見ると、優しい顔に戻っていた。その顔は好きじゃない。子供を見つめる父親の顔だから……。

「そんじゃあ、この話はこれぐらいにして……」「飛魚さん」

立ち上がる飛魚さんの腕を引き止めると、飛魚さんは私を見下ろした。

「どうした?」「…ねぇ、やっぱり駄目?娘としか見られない……?」「……サヨリ」「あんなキスまでしたのに……」

飛魚さんは何も言わなかった。

何か言ってよ……。

「悪いな…サヨリ」

最後の言葉を置き去りにして、飛魚さんは私から遠ざかる。
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