似た者同士

冬生まれ

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誰もいない教室でお前は俺の机を漁り、今朝方貰った名も知らぬ女からの恋文を取り出した。
皆が移動教室に向かう際、忘れ物をしたと一人教室に向かったお前の後を他の友人らの声に耳も貸さずに走りだす。

お前の事ならなんだって知ってる俺が騙されるはずないだろ…?

お前は忘れ物なんかしていない。
いつも俺よりこまめに確認するお前が、忘れたなどと宣うのには何か理由が有るはずだ。

お前の胸元に抱える教材、筆箱、ノートと完璧に揃ったそれが何よりの証拠だ。

呆れて教室を覗き見ると、案の定。
お前は自分の席を通り過ぎ、俺の席へと足を伸ばす。
辺りを確認しながら俺の座席へと手を伸ばし、椅子を軽く引っ張ると、机をガサゴソ探り出した。

見られているとも知らないお前は、机の中から白い紙、基、恋文を取り出すと、その顔は見る見るウチに曇っていく。

あの顔には見覚えがあった。

昔、俺が色んな女から恋文やら告白やらを受けていた時に遠くの方から此方を見つめていたお前の顔だ。
お前が俺を羨んで見ていた時の顔。
お前は俺より全然モテないから僻んでいたんだろう。
唇を噛み締めて恨めしそうに女を見つめてさ?

けどな。

お前が女を見つめる度に、俺は心底腸が煮えくりかえる想いだった。
俺じゃなくて女を求めるお前にだ…。
お前の隣にいつも居たのは、この俺だ。
お前の世話を人一倍誰よりもみてきてやったのも、優しく色々教えてやったのも全部ぜんぶこの俺なのに、、、。

なんでお前は俺を見ない?

恋文を握りしめ、自身の筆箱から鋏を取り出したお前は、躊躇せずにその手紙を切り刻む。
先ほどの曇り顔から一変、今度は然も愉快そうに、ジョキリジョキリと切り刻まれた恋文は紙吹雪の如く床に散った。

俺はその光景をチャンスとばかりに教室の扉を開けた。
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