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落としたのは、ガラスの靴ではなくカツラでした

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 今日は前回のテストの結果が発表される日。
 結果はーーやっぱり奴の勝ち。


 「告白の返事、この後伝えたいんだけど…」
 「うん」

 神妙な顔をして、奴は頷いた。


 「すまない。気持ちは嬉しいけど、答えることはできない。君も、僕も、生家を発展させる義務がある。君も、そのためにこの学校に通っているのだろう?もし仮にそうじゃなくても、僕は家をこれから盛り立てていかなくてはならない。それが、僕の義務だから。そのためには政略結婚たって厭わないつもりだ。恋だの愛だの言っている場合じゃないんだ。…だから、諦めてくれ」


 ペラペラと言い訳のごとく言葉を紡ぐ口。
 奴のことは見れなかった。
 だからずっと俯いていて、全て言い切ると…逃げ出した。

 「ま、待ってくれ!」

 当然、奴の制止を聞くはずも無く、私の足は走り続ける。
 後ろから奴が追いかけて来ていることが足音でわかる。
 早く逃げないと。

 迎えに来ている馬車まであと少し。
 そこまで来ればあとはこっちのもの!

 おとぎ話のシンデレラも、こんな気持ちだったんだろうか。
 いや、今の私と逆かもしれない。
 だってシンデレラは王子様のことが好きだったから。
 ギリギリ私は馬車に飛び乗り、急いで出してもらうよう御者に頼むと、ホッと一息ついた。

 セーフ!


 ふと、妙に頭が軽いと思って頭に手をやると、そこにあるはずのものがなかった。
 カツラがない⁈
 馬車の小さな窓から遠ざかっていく後ろをのぞいてみると、私のカツラを持ち、呆然と立ち尽くす奴の姿があった。
 

 かっ、カツラーーーーーー‼︎


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