公爵令嬢は奪われる 〜悪役にならなかった公爵令嬢が辺境伯に嫁ぐまでの話〜

とうや

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閑話

第三王子は失恋する5

私はローズマリーに援助を申し入れることはできなかった。

だがせめて、生徒会メンバーとアンジェからの防波堤になろうと決めた。

卒業パーティーのドレスを仕立てる金はあるのか、と思い気付く。ドレスも売り払ったのなら、まさか制服で出る気なのか!?

そういう生徒はいるとは聞く。……が、いずれも貧乏な下位の貴族や平民だろう。

公爵令嬢がそんな見窄らしい姿でこの学園を巣立つのか?

私はローズマリーのドレスを密かに注文する。

彼女の淡い金の髪によく似合う、深いブルーのドレスだ。

あまり豪華すぎず、それでいて公爵令嬢が着てもおかしくない程度の品。

だがその気遣いは裏目に出る。

やっと届いたドレスは、アンジェの元に届いていた。

「ダメですよぉ、王子。腰も肩もキツキツなのに胸がブカブカじゃないですかー?丈も長すぎだしぃ?………それとも…コレ、あたしのじゃないのかなあ?」

天真爛漫に微笑むアンジェと、冷たい視線の生徒会メンバー。

 ーーー ああ…そうか。

私は悟る。

アンジェは私自身が気付くよりずっと前から、私がローズマリーに恋をしたのに気付いていた。

「……よく…似合っているよアンジェ」

「ホント?嬉しい!」

アンジェが勢いよく抱きついてくる。

私は ーーー 知ってしまったのだ。

この王国の醜さも。

ローズマリーの美しさも。

アンジェの歪さも。

私は賢くならなくてはならない。

私は勉学や戦略の座学、実技にも力を入れるようになった。

表面上は阿呆を装いながら、注意深く観察する。

そうすれば、ローズマリー公爵令嬢という婚約者を失った私はとても危うい立場なのだと気付く。

身分だけは高い第一王妃の産んだ、愚鈍な第三王子。

王位継承権 ーーー 二位。

私の愚行に王が呆れ果てて王位継承権を剥奪するのだという噂が流れ始める。

きっと……あの父なりの温情だ。

私がそれに気付けば、命だけは助かるのだろう。

兄上と私が争えば国が割れる。だが私が廃嫡されれば全て丸く収まる。

ああ…誰かと話したい。

だがこのような話ができるだろうローズマリーは、すでにこの手から離れてしまっていた。

私は発作的にあのフロレスタ家執事に連絡を取った。




フロレスタ家執事はすでに執事ではなく、タケノコノサト商事頭目として時の人となっていた。

私の顔を見るなり、元執事 ーーー ギーヴはニヤリと笑った。

「いい顔になったな、王子サマ」

……と。

「あんたがあいつを ーーー ローズマリーお嬢様を守ってくれてるのは報告が上がってる。………ありがとな」

ギーヴに頭を下げられた途端、涙が出た。

理解者がいた。わかってくれる者がいた。

それだけで、 こんなに嬉しいのだと初めて知った。

嬉しくて涙が出るのだと初めて知った。

ギーヴは私の現状を、本人より よく知っていた。

「あんたが阿呆を演じてるのは得策ベターだ。そこまでバカじゃなくて良かったよ。ホントのバカだったら見捨てるとこだったわwww」

………え。

「…助けて……くれる、のか………?」

「ゲームと違ってあんたが真性のクズじゃねぇって知っちまったからなあ…。あいつを影ながら守ってくれた恩もあるし?……ま、基本 俺は手の届く範囲でしか行動しないポリシーだけどな」

その信条ポリシーで言うと、ギーヴの【手の届く範囲】は かなり広い。

私はギーヴの描いた青写真に乗ることにした。





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