転生したらビッチ悪役令息だったので

とうや

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俺の雇い主のお坊ちゃんはおかしい。

俺は冒険者としては底辺の『虫使いバグテイマー』だ。小さな虫1匹しか使役できない、斥候としてしか役に立たない最底辺。それも3年前の怪我で冒険者もできなくなった。

足がイカれてるから普通の仕事はできない。学もない。顔の火傷で恋人だった女も俺を捨てた。ゴミ箱を漁り、道端の賤銭を集めて回る毎日。いっそ死のうかとも思ったが、そんな勇気すらなかった。

そんな時だ。俺の幼馴染だった男が俺を探してやってきた。


「領主様の弟君が『虫使いバグテイマー』を探している。蜂を育てたいんだそうだ」


頭がおかしいのか、そのお坊ちゃんは!?

正直、蜂なんか飼い慣らしても何もできない。だけど俺は金が欲しい。お坊ちゃんが怪我でもして俺を殺してくれたらなおいい。そう思って引き受けた……んだが…。


お坊ちゃんは普通じゃなかった。


俺との顔合わせの際、すでに『巣箱』を用意していた。

えっ…。

蜂の巣箱だぞ!?何故形状を知っているんだ!?魔蜂の巣の構造は国家機密だ。そして『蜂蜜』はSランク以上のパーティーが命がけで採取しに行くものだ。


「蜂蜜食べたいんだ。熱々のホットケーキに蕩けるバター!その上からじゃぶじゃぶかけて!」


正気の沙汰とは思えない。

そのお綺麗な顔で富豪の愛人でもしていたのか!?

……まあいい。失敗しても前金は返さなくていいらしい。女王蜂を使役するだけでいいと言われた俺は、近くにいた女王蜂をテイムする。……何故かすんなり巣箱に入った。


「えへへ…今日からよろしくね?女王様」


ブブブ…と女王蜂が笑った気がした。


次の日にはコロニーができていた。まずい…!!俺は身構える。これはSランク級の事案だ。そう思ったのに、お坊ちゃんはトコトコ近付いて行って


「女王様、巣箱の居心地はどう?」


話しかけた。蜂たちは攻撃の気配も見せない。それどころか、女王蜂の主人が何故かお坊ちゃんに移っていた。


「女王様、この辺り一面に花畑を作るね?蜂を殺さないでって偉い人に言っておいたから、たくさん蜜を集めてたくさん卵を産んでね?でね……ちょっとでいいから、蜜をわけてね?」


ブブブ…ブブブ……と蜂たちが羽音を立てる。……奇跡だ。魔蜂があのお坊ちゃんに友好になってる…!


花畑が広がる。


『いちご』とかいう植物の苗も植えられた。領主様がわざわざモールドレ王国から取り寄せたらしい。

『えんしんぶんりき』という機械の導入。巣を壊さずに蜜だけ集めるらしい。


「蜂蜜が溜まりすぎると蜂たちも育児が出来ないから、ちょっとだけ頂くんだよ」


………この方は……………。


いいや、考えてはいけない。『渡界人』は国に。俺は何も知らない。ここで蜂の世話をしながら、この方の笑顔が見たい。








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