アネモネを君に

野部 悠愛

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背けては居られない

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砂糖をたくさん溶かしたみたいに甘く優しいのに、一緒にいるとなんだか少しだけ胸の奥底が苦くなる。

なんて、ぼんやり思いながら、
「そんなに言うほど苦くないと思うけど?」
にやりと笑って、言うと、
「苦いもん。」
すっごく苦いと顔を未だにしかめながらさよちゃんが言った。
はつみんが飲んでるやつはみんな苦いもん、なんて言うくせに、甘そうなパッケージに惹かれるようで(実際とても甘い)毎回私が飲むものに興味を示すのだ。
「ひと口いる?」
と聞くと毎回頷いて、そして毎回苦いと言って顔を歪めるものだから私としてはとても面白い。

苦いと言うのが目に見えているのにわざわざ飲むかどうか聞いているのは内緒だ。

………………………

放課後、今日も今日とて部活だ。
私たちの部活は3kmのランニングから始まる。
集まる時間はクラスや学年によって違うので走るのはバラバラだ。しかし、女子はいつも部室で他の人を待ってから一緒に走りに行く。
そうそう、他の人と言えば、この頃新しい女子部員が入ってきた。
他の部から転部してきたのだ。
先輩や同期たちはどうやらこの女子部員を酷く気に入ったようで、取り囲んでは何かとちやほやしている。
そんな状況なので私はほとんどハブられたような状態だ。
なぜなら私なんかに構うより新しい女子部員に構うことの方が楽しく、そちらで忙しいらしい。
別に構いやしないのだけど。心の中でそっと呟きながら黙って走る。
最初は私も新しい女子部員というものに興味があって話しかけたのだけれど、私は最近の流行りに疎く、どうにも共通の話題がなくて会話が続かなかった。
しかも、なんだか性格も自己中心的なように感じてあまり好きにはなれなかった。
そんなこんなで、私は1年生の中頃から部活ではほぼ1人で過ごすことになった。
構いやしないとはいえ、寂しさは感じるもので、話しかけても会話からシャットアウトされるような感覚には酷く傷ついた。
部活の中で、私の話をシャットアウトしないでくれる人物は男子の先輩1人と時々話しかけてくれる部長である女子の先輩だけになった。
まぁ、その2人も人がいいので他の先輩や同期に話しかけられればそちらに行ってしまうので、余り変わらないのだけれど。
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