胸の奥

野部 悠愛

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真っ黒の独白

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私はずっとお前を殺してやりたかった。

私が夜にぬいぐるみに囲まれていないと眠れない理由を1度でも考えたことがあるのだろうか?
無意識に比べられてきたことへの諦めを、それを飲み込まざるを得なかった私の気持ちを、恐らくやつは1ミリたりとも考えたことは無いだろう。
そんな必要は無いのだから。

奴と私はまさに正反対だった。
家の中で全く気を使わない奴と家の中でも少しばかりでも気を使う私。
それは家事手伝いだとか、ちょっとした整理整頓だとかそういうことではなかったけれど、スマートフォンで音楽を流す時には周りがうるさくないようにイヤホンをするだとか、深夜に友人と通話する際には声のトーンを落とすだとか、そういう小さなことから八つ当たりをされても文句を言わず、悩んでいることも本当に嫌なことがあっても隠して何も考えていないように振る舞うだとかそういう気の使い方を私はしていたのだ。
蓋をして蓋をして、怒りも苛立ちも押し込めて飲み込んで全部"なかったこと"にしてきた。
それでも、なかったことにしてきた感情が本当になくなっている訳では無いのだ。
それは時として、私の胸から喉奥で蜷局を巻いて今か今かと外に出る時を伺っている。

そいつは真っ黒でドロドロとした私の本体なのだと思う。
私はきっと本当は冷たくて無関心で常に人に怒っているそういう憎悪や劣等感の塊なのだ。
それが外に出ないように偽って偽って普通を装って生きている。
きっとそれはこれからも変わらないのだろう。

今日も私はナイフを握りしめた手を眺めてあと一歩のところで踏みとどまるようにして、そうして諦めて生きている。
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