《完結》私好みのあなた。もう離しませんよ。

ポカポカ妖気

文字の大きさ
38 / 54

第34話

しおりを挟む


在来線、新幹線そして又在来線と電車を乗り継いで約三時間。
ようやくミカさんの地元の駅に辿り着いた。

待ち合わせまであと一時間程有るので近くの店で時間を潰そうとキョロキョロしていると背後から声が掛かった。



「あ、あの、、ゆづ葉さんですよね?」



聞き覚えの有る声だ。その声の持ち主の方に振り向くと、やはり思った通りミカさんが居た。



「ミカさん久しぶりだね、元気してた?
え、でも時間、、、もしかして私、待ち合わせ時間間違えてたかな?ごめんね。」



と謝った。
すると何故か泣きそうな表情のミカさんは勢い良く頭を下げたかと思うと



「ーー違う、、、違うの!!!
ごめんなさい!!!」



と謝罪に謝罪が返って来た。
訳が分からずあたふたして居たが、ミカさんの肩が震えているのに気付きそっとその肩に触れ声を掛ける。



「大丈夫だから。」



そしてそのまま近くのベンチに座らせる。
いくら私でも待ち合わせの時間だけでこんな風になるとは思っていない。
多分、ここに来た目的”リクさん“についてなのだろうと察する。



「ミカさんが謝る必要は全く無いんだよ。ーーーだから顔をあげて?
ミカさんの素敵な笑顔が見たいな。」



そう言ってからミカさんが落ち着くまで背中を撫で続けた。


しばらくして、、、落ち着いたのだろう。ミカさんはゆっくり私の方に顔を向けてくれた。目が赤くなっている。



「やっと可愛い顔を見せてくれたね。
まだ外で話すには暑い季節だから場所を移そう。いいかな?」



コクンと頷いてくれたので移動する。
二人でゆっくり話す為にカラオケボックスへと入る事にする。

角部屋へ案内され、ソファーに座り音響のボリュームをゼロにする。
幸い隣の部屋には誰もいないので落ち着いて話が出来そうだ。



「では改めて。
ミカさん、久しぶりだね。」



そう言うと今度はちゃんと返事を返してくれた。



「お久しぶりです。
ゆづ葉さんーーー髪型が違うから声を掛けるの少し、、躊躇ったんだ。
それウィッグだよね?ーーー変装それが必要な程の何かが起きてるの?」


「うん、まぁ、、、と、その話の前にミカさん監視アプリスマホは大丈夫?」


小さな声で「うん」と返事をするミカさんは一瞬下を向いたが再び視線を合わせ話しだす。



「あの手紙の後、携帯を調べたら、、、やっぱりあった。だからちゃんと削除したよ。
ーーー彼を知って居るつもりで居て、実際は全然分かって無かったんだね。」



苦しそうな彼女に心が痛むが、現状を伝える事にする。
はぐらかす方が彼女にとっては辛いだろう。



「うん、、、じゃあ話を続けるね。
そう以前手紙に書いた通りスマホに監視アプリ入ってるから盗聴やGPS情報に細心の注意を払って居るんだ。
私があえてアプリを消さないのは油断させる為。
いつでも情報を把握出来ると思っていればガードが緩くなるからね。

で、今日はここに来る為、自宅に友人を招いてスマホを預けて家を出たんだ。
だから私は今家に居ることになっている。
そんな私がもし外で目撃されたら不審だからこの変装って訳だよ。
ふふっ一瞬分からなかったでしょ?

っと、これ関係はこれ以上口に出せないから筆談で宜しく。」



鞄からノートとペンを出しテーブルに並べる。
それに戸惑いを見せるミカさん。


「スマホが無いなら別に話しても、、、。彼は、、、約束を守る人では無いし。」



「ん?あぁ、確かにそうなんだけど、守りたいんだ。あちらと同じ事だけはしたくない。
で、その約束の範囲内でとことん抗って叩きのめしたいって言う、私の完全なる我儘だよ。
ーーーそれに、はじめさんに害をなす人は絶対許せないから。。」



『まぁその我儘に付き合わせる形となってしまったミカさんには本当に申し訳なく思ってるんだけど、、、』と続けるとミカさんは目を見開いた後に微笑んでくれる。



「ゆづ葉さんは、、、強いね。
ーーーうん、分かった。
私が今するべき事は、私達の問題に巻き込んでしまった事への謝罪じゃ無かったね。全面的にゆづ葉さんに協力するよ。

だから私の知りうるの話を聞いて欲しい。」



そうして決意の篭った目に変わり、ミカさんは話し始める。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その話を要約するとこんな感じだ。



大学時代、バイト先の塾で受付をしていたミカさんは塾講師の彼と出会った。

当時彼は4つ年上の23歳。塾講師の傍ら就職活動をしていたそうだ。
内定が決まっていた会社が突然倒産してしまった所に以前バイトで来ていた塾にスカウトされ来たと言っていたが、今じゃそれが本当かは謎だと言う。
ただ、当時のミカさんは

『親を安心させたい、だから諦めず就職活動してるんだ。』

そんな彼の親思いな所に惹かれ、そのままお付き合いをする事になった。

順調なお付き合いの中、結婚を意識しミカさんの親に挨拶する流れとなり、間も無く彼は両親に気に入られた。
彼が就職先に困っていることを知ったミカさんの父親は自身の友人の学校を紹介したそうだ。
教員免許も有り講師としての実績もある為即採用が決まったそうだが、そこから彼はミカさんの前だけ変貌した。

学校の授業の資料作りをさせられたり、彼の部屋の掃除や食事作りを始め様々な家事を強要される。
断ればその都度、如何にミカさん自分が何も出来ない能無しなのかを永遠と語られたと言う。
最後には

『お前より従順で良くできる奴が学校には溢れて居るからな。役立たずのお前はせめて家事でもしていろ。』

と言われ、従っていたそうだ。


そんな中私との出会いで呪縛が解け此処に至るそうだ。




「多分、彼にとっての私の存在は就職斡旋業者や家政婦みたいな物だったんでしょうね。ーーー本当馬鹿よね。」



そう言葉を続けたミカさんはほんの少し悲しみを纏って居たが、以前よりも吹っ切れているように見えた。
ちゃんと過去の事だと分別できている。



「その後父は彼の素行について友人に全て話したの。
『しっかりと確認もせず紹介してしまい申し訳なかった。』って。
するとその方は学校内でも不審な点が前々から有ったのだと言ったそうよ。
なんでも、配られる資料に統一性が無かったり、提出書類の筆跡が違ったり、校内の評判は良いのに何故か研修会では散々なものばかりだったと。
そこで彼を問い詰めたけどのらりくらりとかわされたそうよ。
彼の身辺も調査したけど、、、親しそうな人はみんな口を噤んでしまって進展は無し。
そんな時、ある学校から声が掛かり彼の異動が決まった。引き抜きと言う形でね。
父の友人は彼の『人柄』と『疑惑』をちゃんと話したらしいけど『平気平気、こっちで面倒見るから。来る者拒まずだよ。』と。
ーーーまさかその学校にゆづ葉さんが居るとは思わなかった。」



その軽いノリで引き受けたのは多分うちの理事長だろう。
理事長は良くそう言って優しく微笑む人物で皆んなに慕われている。



「なるほど、そんな経緯でうちに来たんだね。うちの学校に来たのは偶然でも、数多くの『疑惑』が生まれたのは偶然じゃない。
そこを詳しく調べれば色々出て来そうだね。
まず『従順で良くできる奴』をその学校で探そうかな。
あと条件を加えるなら『か弱い女性』ってとこ。以前ポロっと口にしてたからね。」



そう言うと彼女は一枚の紙を取り出した。そこにはいくつか女性の名前が書かれている。



「これをあげる。彼と親しかった人の名簿よ。
私、実はあの学校の事務で働いているの。ーーーだから彼のことも彼女達の事も良く知ってる。見ないフリしていたんだ。」



ミカさんが彼と同じ学校に勤めて居た事にも驚いたが、何より彼と親しい人の目星が付いてることに驚いた。
私が驚愕していると



「言ったでしょ、私は家政婦の様なものだって。
だから彼は全く気にせずいろんな女性と親しくしていたの。
そんな彼の眼中に無いが彼の彼女だなんて誰も気付かないから、私の所にも噂がどんどん入って来たのよ。
ふふっ、皮肉な事にそのお陰でゆづ葉さんの力になれそうで嬉しいわ。」



そう微笑えむ彼女は先程までの消え入りそうな姿とは違い、力強い光を放っていた。



「やっぱりミカさんは『強い』人だよ。
私が男なら完全に惚れてるなぁ。」



「あらっ、女でも惚れて欲しいわ。」



と悪戯っぽく微笑むミカさんと目が合い、二人で思いっきり笑った。


その後お礼を言って名簿を貰おうとすると、ミカさんは紙から手を離さなかった。
どうしたんだろう?と首を傾げると



「実は今日、文化祭の準備で殆どの人が学校に来て居るの。
事務員は休みなんだけど忘れ物しちゃったのよね。
ーーー独りで行くのって意外に勇気居るのよ?だから付き合ってくれない?」



そんなミカさんのお誘いを断るなんて出来ない。
本当に敵わないなぁ。



「はい、喜んでお供します。」



そう言ってミカさんの手を取りエスコートしながらカラオケボックスを後にした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

48歳主婦の宅建試験挑戦―そして年下彼がくれた勇気と恋

MisakiNonagase
恋愛
「お母さん」でも「奥さん」でもない、私の名前を呼び止めたのは、26つも年下の彼だった。 「48歳、主婦。私が手に入れたのは、資格(ライセンス)と、甘く切ない自由だった。」 スーパーのパートに明け暮れる平凡な主婦・中西京香、48歳。 目的もなく始めた宅建試験への挑戦が、枯れかけていた彼女の人生を激変させる。 インスタの勉強垢で出会ったのは、娘よりも年下の22歳大学生・幸正。 「不倫なんて、別の世界の出来事だと思っていた――」 そんな保守的で、誰より否定的な考えを持っていたはずの京香が、孤独な受験勉強の中で彼と心を通わせ、気づけば過去問演習よりも重い「境界線」を越えていく。 資格取得、秘めた大人の恋。そして再スタート、 50歳を迎えた彼女が見つけた、自分だけの「地平線」とは。 不動産、法学、そして予期せぬ情熱が交錯する、48歳からの再生と自立の物語。

処理中です...