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第39話
しおりを挟む校長室を後にし二人並んで歩いている。
その間の会話と言えば
『久しぶりですね』
『元気だったか』
などお互い当たり障りが無い物でギクシャクした状態であった。
校内ということもあり本音を口に出せないでいた。
このままじゃ埒が明かないとはじめさんが口火を切る。
「本郷、顔色が悪い。今日はこのまま俺が送ろう。」
そう言うが早いか、携帯で誰かに電話を掛ける。
大声で言ったのは周りへのアピールだろう。
私の返答を聞く前にさっさと電話を終え、すぐ様これからどうするかの指示を出してきた。
「よし、許可は得た。
これから教室に戻り荷物を持って職員用玄関に来てもらえるか?直ぐ乗り込めるように車を横付けにする。
もしそれが無理なら俺が荷物を持って来るが、、、どうする?」
多分先程の呼び出しで気分を悪くしたとでも言ったのだろう。然るべき人物に許可を得たのであればそれに甘えるしかない。
それに今のはじめさんに何を言っても聞いてくれないと察し、その指示に従うことにする。
「いえ、取りに行けますので、その後職員用玄関へ向かいますね。
ありがとうございます。」
そのまま教室に戻るが既に誰も居ない状態で教室内は閑散としていた。
夕子の席を見ると既に通学鞄が無く帰宅した模様。
はじめさんと話を付けたら直ぐに今日の事を連絡しようと心に決め荷物をまとめ教室を後にする。
そのまま下駄箱に向かい靴を持ち職員用玄関へ向かう。
するとはじめさんと学年主任が話をしている姿が目に入る。
今声を掛けるのは良くないと思い、踵を返そうとしたがその前にはじめさんが私に気付き声を掛けて来た。
「本郷来たか。やはり顔色が戻らないな。気分が悪かったら言ってくれ。」
そうはじめさんが心配顔をすれば学年主任が慌てた様子で声を掛ける。
「本郷さん大丈夫ですか?
私の配慮が足りず申し訳有りません。
大人びては居ても貴女は高校生だったと言うのに。。。
今日は山田先生に送ってもらってご両親とよく話し合ってください。
ーーー山田先生は校長の指示ですのでこのまま本郷さんを送り届け直帰して下さい。そしていつでも本郷さんの所へ駆けつけられるようにしておく事。
ーー良いですね?」
学年主任の話について行けず、呆気に取られていたがすかさずはじめさんがフォローしてくれる。
「先程校長が言ってくれた通り、今は無理をせずゆっくり休むんだぞ。いつでも駆けつけるから何かあったらすぐに連絡をしてくれ。いいな?」
まるで先程校長に言われた内容で有るかの様な言い回しに困惑しつつ小さく頷いた。
そしてそのままはじめさんの車に乗り込むとゆっくりと走り始める。
校門を出て車の波に乗ると漸く話せる状況となる。
「さっきは気付かなかったけどはじめさんって徒歩通勤だよね?
私を送る為にわざわざ車を取りに行ってくれたの?」
「そりゃあ、、な。
お前は気づいてないんだろうが、本当に顔色は良くないんだ。
ーーーそんな奴を一人で帰らせられる程俺は図太く無い。」
そう言われ申し訳ない気持ちを抱きつつ、はじめさんの横顔を見つめる。
はじめさんこそここ一ヶ月ずっと体調が悪そうに見えていた。
自惚れじゃ無ければ、、、私の所為だろう。
「ごめ、、、ううん、ありがとう。」
ここは謝る所では無いと感じ感謝を伝える。
溢れて来そうになる心を落ち着かせようと少し話題を変えてみることに。
「ーーー先程の電話の相手が校長先生と言うのは何となく察しがついたけど、一体全体どんな話をしたの?」
そう問えば簡潔に話してくれた。
校長に私とゆっくり話がしたいのでこのまま帰宅して良いか聞いた所、
『そうなると思って既に学年主任に話を通して置いたから気にせず本郷さんを連れて帰宅しなさい。』
と言われたそうだ。
その後帰宅の準備を進めていた所に学年主任が現れて直接話したら、校長の語った内容の全貌が明らかになった。
なんでも、私がストーカー被害に悩んでいて昔からの知り合いで有る金森先生や担任の山田先生に相談していたのが噂の発端になったのだと学年主任は校長から聞いたそうだ。
そしてそのストーカーは対処したがここ数週間の過度のストレスにより体調を崩している私を山田先生が送ると言う話になったと。
校長の用意周到な対応で今現在一緒の帰宅が実現していることに有難いと思う反面、金森先生の罪を上手く有耶無耶にしたやり口にやはり食えない人だと苦笑いが溢れる。
その後は家まで無言のドライブとなった。
この一ヶ月の空白は確実に私達の関係に溝を与えた。
だから全てが終わった今。
私達は正面から顔を合わせて話し合うべきだ。
嘘偽りのない言葉を、心を、伝えるんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の家に着き一緒に自宅へ入る。
玄関のドアが閉まり私ははじめさんを振り向き謝罪の言葉を口にする。
「はじめさん、、、、ごめんなさい。」
心からの謝罪ではあるがこのまま許されると歓楽的に思ってはいない。
許されないであろう事を分かっていて実行していたのだ。どんな言葉でも行動でも全て受け入れるつもりだ。
するとはじめさんが口を開く。
「ーーー本郷、、、目を、閉じろ。。。」
そう言われこれは流石に戒めの一発を頂くのであろうと覚悟を決めゆっくりと瞼を閉じた。
だがいつまで経っても、どこにも衝撃は来なかった。
つい我慢出来ず薄ら目を開けると涙を流し鼻水まで垂れ流しにしてしまって居るはじめさんが目の前に居た。
「はじめさん!!!何で泣いて居るんですか!?」
慌てて近寄りその身を胸に抱いたが泣き止むこともなく、更にギリギリ音がしそうな程歯を食いしばっている姿が目に映る。
「ーーーお願い、、泣かないで!!
分かってる、、、私がはじめさんを傷つけて居るって事も!私が勝手な事ばかりしたから。。。」
そう言葉を発した瞬間、、、恐怖、悲しみ、怒り、寂しさ、憎悪、愛しさ、後悔、色々な感情がごちゃ混ぜになりながら押し寄せてきて、、、いつの間にかそれらが涙として溢れ私の頬をつたう。
私達はお互い声を上げながら泣き、そして抱き締め合った。
言葉は無い。只々、、、泣いた。。。
全ての涙を出し切ったような疲労感が訪れふとはじめさんを見上げた。
彼の瞼は赤くパンパンに腫れておりこちらを見る瞳はほんの僅かしか見えない。
多分私も同じような状態なのだろう。
お互いの姿を確認すると、同時にふっと吹き出した。
落ち着いた頃玄関先からリビングに移動しソファに隣り合わせに座った。
まずは私がこの一ヶ月のことを語り出す。
全て偽りなく正直に。
金森先生に脅された状況や詳細。
化学準備室での出来事。
調査の為にミカさんに会いに行った事。
ーーーはじめさんの意思を無視して守ると決めた私の決意。
「私は例えはじめさんが嫌だと言ったとしても意思を曲げるつもりは無かった。それにより貴方が苦しんだとしても、それがベストだったのだと今でもハッキリと言える。
ーーーそれで嫌われても、重いと逃げられても、、私は貴方を離す気は無い。
縛り付けてでも離さない。」
この発言に流石のはじめさんも完全に引いただろうと身構えたが、はじめさんは私の肩を自分に強く引き寄せたかと思えば「ありがとう」とこめかみにキスをくれた。
「俺の事をそんなに思ってくれたのはとても嬉しかった。
ゆづ葉になら俺の全てを渡しても構わないんだ。
ーーだが、俺はゆづ葉だけに全て背負わせる事が嫌だ。
それなら二人で学校を辞めるという選択をして欲しかった!
一人であの学校に居続けるなんてもう無理だ!!ーーー俺こそがお前と離れる事ができなんだ。。。」
そう言って唇が塞がれる。
触れるだけのキスじゃなく喰らい尽くすような激しさで息をするのもままならない。
息も絶え絶えになった頃ゆっくり唇が離れていく。その離れた温もりに寂しさを覚え唇を名残惜しく見つめてしまう。
するとそれに気づいたように再度チュとリップ音と共に優しく唇に触れてくれた。
息が落ち着いた頃に今度ははじめさんが一ヶ月間の出来事を話してくれた。
そこには私の知らない事実も含まれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続きます。
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