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Brotherhood
31話 苛烈
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オリジナルのビスタの意識が、再び表から消え去る。
顔付きからは穏やかさが消え失せ、既にこちらが主人格と言えるビスタの方へと立ち戻っていく。
「ふう、ただいまっと」
立ち返ったビスタは早々に、既に剣を構えていたクルーイルに気付く。
「へえ……もう臨戦態勢なんだね」
ビスタも相手に倣って構えようとする。
だが、正中線を隠すように剣を両手で持ちピンと背筋を伸ばしたクルーイルのその構えを見て、何かを思い出す。
「キミ……もしかして、俺と前に戦ったよね? その構え方、やっぱりそうだ!」
「……なんだと?」
思い出せた事に一人で勝手に喜ぶビスタからの突拍子もないその質問。
クルーイルも思わず聞き返してしまった。
ビスタが言う"俺"とは、本人のビスタの脳内に入り込む前の、魔神の事を指す。
しかし人間の姿を借りている現在とはまるで風貌が違うため、クルーイルにはその問いに心当たりが露ほども無かったのだが――。
「ほら、キミの部下を全員ドロドロに溶かして、剣も破壊してあげた……あの魔神だよ」
「――っ!?」
そこまでの情報を受け取って、初めて正体に気付く。
毅然と振る舞っていた彼だが、まるでフラッシュバックでもするかのように精神的外傷が掘り起こされてしまう。
次第に剣を持つ手は震えを増し、膝が笑い始める。
「思い出した……? 思い出したよねえ? またあの時の様に無様に逃げ回ってもいいんだよ? あはははははははははははは――」
恐怖に震える相手を高らかに笑い上げる。
オリジナルの人格では絶対にこのような笑い方はしなかっただろう。
(くそっ、くそぉ……! なんで震えるんだよ……!)
剣を更に強く握り、丹田に力を込めるように足腰をどっしりと構えようとする。
だが、心に負った深すぎる傷はこの短期間では易々と癒えず、震えが止まることは無かった。
「やっぱり面白いねえ、キミ。でも安心してよ。もうあの溶かす"特性"もコッチの身体では使えないみたいだし、長い両腕も無いからさ。だから……」
ピタリと笑うのを止め、助言でもするかの如く話すビスタは、続けた。
「――キミの大好きなトモダチの姿で今度こそ殺してあげるよ」
その表情は悪意に満ちた粘り気のある笑み。
心の傷をこれでもかと抉り、愉しむ。
「お前……絶対に許さんぞ!」
クルーイルは、震えながらも憎しみを口にする。
しかしそんな彼の強がりを袖にするように、ビスタは持っていた剣を腰に差してある鞘に収め――。
「――"ブレイズ・ブラーデ"」
火術を唱えてみせた。
すると、ビスタの開いた両手から炎が勢い良く出現し、二刀の小振りな剣の形に変化したのだ。
(この術は……!)
見慣れないその火術にクルーイルは目を疑う。
だが、ビスタは思慮を巡らす暇を与えてはくれず。
「行くよ……!」
その言葉と共にビスタは石畳を強く蹴り、真っ直ぐにクルーイルへと向かう。
初撃は左手に持つ剣状の炎を、上半身目掛けて薙ぐ。
「くっ――!」
屈み、なんとかクルーイルはそれを避けてみせた。
「まだまだ――」
ビスタが次いで放ったのは鼻先への膝蹴り。
今度は左に転がっての回避。
しかし、間髪入れずに右手の炎での追撃。
剣で防ぐは余裕は無く、咄嗟に両手で握っていた柄から左手だけを離しての防御。
「ぐ、うぅっ――!」
左腕を使い頭部への攻撃をガードするが、炎が直接服の袖を焼き、クルーイルは小さく呻く。
「はははっ、そりゃあ熱いよねえ」
馬鹿にでもするかのようにビスタが笑う。
対してクルーイルは更なる追撃から逃れるために後ろへと跳び、その場から離れる。
筋肉まで達する火傷の痛みに苦悶の表情を浮かべ、狼狽えるクルーイル。
(くそっ、ガードが意味を為さない……。完全に回避をしないと無傷で済まないのか……!)
想像以上に厄介なビスタの炎での攻撃に、頭を悩ませる。
"リーベ・グアルド"を駆使しての相手攻撃への対処は、避ける・受け止める・弾く、の三つに分類される。
その内の一つである“受け止める”が通用しないのは致命的だろう。
「安心してよ。すぐに殺しはしないからね。このまま少しずついたぶってじわじわと恐怖を与えてあげるからさ」
右手一本で剣を構え、息を荒げるクルーイルに対しビスタはそう言いのける。
そして再び大地を蹴った――。
今度の初撃は右手の炎による左脇腹への水平打ち。
クルーイルはそれを剣の刀身で受け止める。
すると今度はビスタが、左に持つ炎で胸元への刺突を繰り出す。
しかしクルーイルはガードしていた剣ごと、右にクルリと身を翻してみせた。
鮮やかにそれを避けアウルとの手合いで見せたものと同様、後ろ手に回り込み延髄に向けて峰での一撃を打とうとするが――。
「――甘いよ」
「なにっ!?」
その一言と共にビスタは前のめりに身体を傾けて攻撃を回避。
そのまま馬が後ろ足で蹴り上げるこのように、左足での後ろ蹴りをクルーイルの腹部に見舞う。
「ガハッ……っ!」
反射的に小さくバックステップ。
蹴りの威力を未然に殺せはしたが、十全に防げた訳では無い。
直撃のダメージは勿論あった。
鈍く残るような痛みに、表情をしかめる。
(やはりサイケデリック・アカルト状態でもリーベ・グアルドは使えるのか……。しかし、動き自体は……)
「まだまだ行くよ――」
腹部を抑えよろめくクルーイルに、ビスタは容赦なく追撃をしようと飛び掛かる――。
「くっ――!」
ジャンプした状態からの、首元への横薙ぎ。
間一髪でスウェーの要領で避ける。
炎で形成された剣。
横切った剣閃から来る熱波がYシャツの襟を焦がす。
「……やるね」
ビスタが言い放ったその後も、炎の剣撃が矢継ぎ早にクルーイルへと襲い掛かる。
しかし、それらを全て紙一重で避け、剣で捌く――。
幼少期から、親であり現在は団長であるヴェルスミス・ピースキーパーに、リーベ・グアルドを指南されていたクルーイル。
単純な回避能力だけなら、全団士の中でも上位を誇っていた。
更に、防戦一方ではあるが相手の剣撃の鋭さや炎剣の性質にも慣れてきた彼は、徐々に震えの方も治まっていったのだ。
そして一瞬の隙を衝いたところで、遂に―――
「……っ!」
――斬った。
血飛沫を散らし、腕が舞う――。
「な……」
左腕を肩口から斬り飛ばされたビスタ。
何が起こったか解らない。
表情が物語っていた。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
じわじわと痛む火傷と、避け続けた疲労のお陰ですっかり息が上がっているクルーイル。
しかし、勝利を確信していた。
「どうして……」
ダメージを少しも顔色に出さないビスタの口から思わず零れた言葉。クルーイルが、その答えを紡ぐ。
「……お前の剣術の腕は確かに凄まじかった。でもお前が使ったその術は、ビスタがどうしても習得出来なかった術なんだ。その意味がわかるか?」
「……?」
オリジナルのビスタは火術を得意とする。
だが、炎で武器を形取るような精微な魔力のコントロールは苦手だった。
先程ビスタが唱えた『ブレイズ・ブラーデ』とは、クルーイルの言う通りどうしても習得することが叶わなかった術だった。
『マナの力で身体を稼働させていると言っても過言では無い』
それほどまでにマナのコントロールに長けた魔神族が彼の精神を乗っ取ったお陰で、ビスタはその術を元々覚えていたかのように易々と唱えてみせた。
しかしその術を扱ったことが無いオリジナルのビスタ。彼の身体と記憶を借り、いくら剣術の腕を向上させることが出来たところで、長剣ではない炎剣での攻撃はオリジナルに比べると僅かに精彩を欠いていたのだ。
その結果、かつてのビスタとは剣の腕がほぼ互角であったクルーイルに対し、こうして遅れを取ってしまったということになる――。
「……ふぅん、なるほど、ね」
オリジナルの記憶を探り起こし、原因を究明し終えたビスタ。
切り口から血を勢い良く流し続けながら、納得を見せる。
「最初から大人しく剣で戦っていればお前は勝てたかもな。敗因は、お前の油断だ」
構えていた剣を下ろし、クルーイルは更に告げる。
「もう諦めろ……。その傷と出血量じゃもう助からん。俺に止めを刺させるな」
そう諭す彼の『止めを刺したくない』という発言は本音である。
いくら人格が違うと言えど、友人の左腕を断つのにはやはり心が傷むのだ。
「……はは、キミはなに勝った気でいるのさ?」
「なんだと……!?」
そう言葉を発したビスタは、炎剣を手品の様にパッと消して解除。
すると右手を上に翳し――。
(また"プロミネート"か……!)
「――"クアドレイド・プロミネ"」
「なにっ!?」
今度は全く聞き覚えの無い術の詠唱。
クルーイルは戸惑いを見せる。
だが、自身の頭上に出現した先刻と同様の赤い光輪に気付く。
当然、同じように転がって降り注ぐ火柱をどうにか避ける。
(くそっ、やはり魔神……! 許容量がオリジナルとは桁違いだ! しかし今の術は一体……)
転がった先で態勢を整えようとしたクルーイル。
だが、今度は自身が立つ位置を中心に囲うよう、石畳に光輪が映る。
(に、二発目……だと? 避けきれ――)
堰を切り勢い良く噴火する火山の如く、火柱がクルーイルの足元から打ち上がった――。
顔付きからは穏やかさが消え失せ、既にこちらが主人格と言えるビスタの方へと立ち戻っていく。
「ふう、ただいまっと」
立ち返ったビスタは早々に、既に剣を構えていたクルーイルに気付く。
「へえ……もう臨戦態勢なんだね」
ビスタも相手に倣って構えようとする。
だが、正中線を隠すように剣を両手で持ちピンと背筋を伸ばしたクルーイルのその構えを見て、何かを思い出す。
「キミ……もしかして、俺と前に戦ったよね? その構え方、やっぱりそうだ!」
「……なんだと?」
思い出せた事に一人で勝手に喜ぶビスタからの突拍子もないその質問。
クルーイルも思わず聞き返してしまった。
ビスタが言う"俺"とは、本人のビスタの脳内に入り込む前の、魔神の事を指す。
しかし人間の姿を借りている現在とはまるで風貌が違うため、クルーイルにはその問いに心当たりが露ほども無かったのだが――。
「ほら、キミの部下を全員ドロドロに溶かして、剣も破壊してあげた……あの魔神だよ」
「――っ!?」
そこまでの情報を受け取って、初めて正体に気付く。
毅然と振る舞っていた彼だが、まるでフラッシュバックでもするかのように精神的外傷が掘り起こされてしまう。
次第に剣を持つ手は震えを増し、膝が笑い始める。
「思い出した……? 思い出したよねえ? またあの時の様に無様に逃げ回ってもいいんだよ? あはははははははははははは――」
恐怖に震える相手を高らかに笑い上げる。
オリジナルの人格では絶対にこのような笑い方はしなかっただろう。
(くそっ、くそぉ……! なんで震えるんだよ……!)
剣を更に強く握り、丹田に力を込めるように足腰をどっしりと構えようとする。
だが、心に負った深すぎる傷はこの短期間では易々と癒えず、震えが止まることは無かった。
「やっぱり面白いねえ、キミ。でも安心してよ。もうあの溶かす"特性"もコッチの身体では使えないみたいだし、長い両腕も無いからさ。だから……」
ピタリと笑うのを止め、助言でもするかの如く話すビスタは、続けた。
「――キミの大好きなトモダチの姿で今度こそ殺してあげるよ」
その表情は悪意に満ちた粘り気のある笑み。
心の傷をこれでもかと抉り、愉しむ。
「お前……絶対に許さんぞ!」
クルーイルは、震えながらも憎しみを口にする。
しかしそんな彼の強がりを袖にするように、ビスタは持っていた剣を腰に差してある鞘に収め――。
「――"ブレイズ・ブラーデ"」
火術を唱えてみせた。
すると、ビスタの開いた両手から炎が勢い良く出現し、二刀の小振りな剣の形に変化したのだ。
(この術は……!)
見慣れないその火術にクルーイルは目を疑う。
だが、ビスタは思慮を巡らす暇を与えてはくれず。
「行くよ……!」
その言葉と共にビスタは石畳を強く蹴り、真っ直ぐにクルーイルへと向かう。
初撃は左手に持つ剣状の炎を、上半身目掛けて薙ぐ。
「くっ――!」
屈み、なんとかクルーイルはそれを避けてみせた。
「まだまだ――」
ビスタが次いで放ったのは鼻先への膝蹴り。
今度は左に転がっての回避。
しかし、間髪入れずに右手の炎での追撃。
剣で防ぐは余裕は無く、咄嗟に両手で握っていた柄から左手だけを離しての防御。
「ぐ、うぅっ――!」
左腕を使い頭部への攻撃をガードするが、炎が直接服の袖を焼き、クルーイルは小さく呻く。
「はははっ、そりゃあ熱いよねえ」
馬鹿にでもするかのようにビスタが笑う。
対してクルーイルは更なる追撃から逃れるために後ろへと跳び、その場から離れる。
筋肉まで達する火傷の痛みに苦悶の表情を浮かべ、狼狽えるクルーイル。
(くそっ、ガードが意味を為さない……。完全に回避をしないと無傷で済まないのか……!)
想像以上に厄介なビスタの炎での攻撃に、頭を悩ませる。
"リーベ・グアルド"を駆使しての相手攻撃への対処は、避ける・受け止める・弾く、の三つに分類される。
その内の一つである“受け止める”が通用しないのは致命的だろう。
「安心してよ。すぐに殺しはしないからね。このまま少しずついたぶってじわじわと恐怖を与えてあげるからさ」
右手一本で剣を構え、息を荒げるクルーイルに対しビスタはそう言いのける。
そして再び大地を蹴った――。
今度の初撃は右手の炎による左脇腹への水平打ち。
クルーイルはそれを剣の刀身で受け止める。
すると今度はビスタが、左に持つ炎で胸元への刺突を繰り出す。
しかしクルーイルはガードしていた剣ごと、右にクルリと身を翻してみせた。
鮮やかにそれを避けアウルとの手合いで見せたものと同様、後ろ手に回り込み延髄に向けて峰での一撃を打とうとするが――。
「――甘いよ」
「なにっ!?」
その一言と共にビスタは前のめりに身体を傾けて攻撃を回避。
そのまま馬が後ろ足で蹴り上げるこのように、左足での後ろ蹴りをクルーイルの腹部に見舞う。
「ガハッ……っ!」
反射的に小さくバックステップ。
蹴りの威力を未然に殺せはしたが、十全に防げた訳では無い。
直撃のダメージは勿論あった。
鈍く残るような痛みに、表情をしかめる。
(やはりサイケデリック・アカルト状態でもリーベ・グアルドは使えるのか……。しかし、動き自体は……)
「まだまだ行くよ――」
腹部を抑えよろめくクルーイルに、ビスタは容赦なく追撃をしようと飛び掛かる――。
「くっ――!」
ジャンプした状態からの、首元への横薙ぎ。
間一髪でスウェーの要領で避ける。
炎で形成された剣。
横切った剣閃から来る熱波がYシャツの襟を焦がす。
「……やるね」
ビスタが言い放ったその後も、炎の剣撃が矢継ぎ早にクルーイルへと襲い掛かる。
しかし、それらを全て紙一重で避け、剣で捌く――。
幼少期から、親であり現在は団長であるヴェルスミス・ピースキーパーに、リーベ・グアルドを指南されていたクルーイル。
単純な回避能力だけなら、全団士の中でも上位を誇っていた。
更に、防戦一方ではあるが相手の剣撃の鋭さや炎剣の性質にも慣れてきた彼は、徐々に震えの方も治まっていったのだ。
そして一瞬の隙を衝いたところで、遂に―――
「……っ!」
――斬った。
血飛沫を散らし、腕が舞う――。
「な……」
左腕を肩口から斬り飛ばされたビスタ。
何が起こったか解らない。
表情が物語っていた。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
じわじわと痛む火傷と、避け続けた疲労のお陰ですっかり息が上がっているクルーイル。
しかし、勝利を確信していた。
「どうして……」
ダメージを少しも顔色に出さないビスタの口から思わず零れた言葉。クルーイルが、その答えを紡ぐ。
「……お前の剣術の腕は確かに凄まじかった。でもお前が使ったその術は、ビスタがどうしても習得出来なかった術なんだ。その意味がわかるか?」
「……?」
オリジナルのビスタは火術を得意とする。
だが、炎で武器を形取るような精微な魔力のコントロールは苦手だった。
先程ビスタが唱えた『ブレイズ・ブラーデ』とは、クルーイルの言う通りどうしても習得することが叶わなかった術だった。
『マナの力で身体を稼働させていると言っても過言では無い』
それほどまでにマナのコントロールに長けた魔神族が彼の精神を乗っ取ったお陰で、ビスタはその術を元々覚えていたかのように易々と唱えてみせた。
しかしその術を扱ったことが無いオリジナルのビスタ。彼の身体と記憶を借り、いくら剣術の腕を向上させることが出来たところで、長剣ではない炎剣での攻撃はオリジナルに比べると僅かに精彩を欠いていたのだ。
その結果、かつてのビスタとは剣の腕がほぼ互角であったクルーイルに対し、こうして遅れを取ってしまったということになる――。
「……ふぅん、なるほど、ね」
オリジナルの記憶を探り起こし、原因を究明し終えたビスタ。
切り口から血を勢い良く流し続けながら、納得を見せる。
「最初から大人しく剣で戦っていればお前は勝てたかもな。敗因は、お前の油断だ」
構えていた剣を下ろし、クルーイルは更に告げる。
「もう諦めろ……。その傷と出血量じゃもう助からん。俺に止めを刺させるな」
そう諭す彼の『止めを刺したくない』という発言は本音である。
いくら人格が違うと言えど、友人の左腕を断つのにはやはり心が傷むのだ。
「……はは、キミはなに勝った気でいるのさ?」
「なんだと……!?」
そう言葉を発したビスタは、炎剣を手品の様にパッと消して解除。
すると右手を上に翳し――。
(また"プロミネート"か……!)
「――"クアドレイド・プロミネ"」
「なにっ!?」
今度は全く聞き覚えの無い術の詠唱。
クルーイルは戸惑いを見せる。
だが、自身の頭上に出現した先刻と同様の赤い光輪に気付く。
当然、同じように転がって降り注ぐ火柱をどうにか避ける。
(くそっ、やはり魔神……! 許容量がオリジナルとは桁違いだ! しかし今の術は一体……)
転がった先で態勢を整えようとしたクルーイル。
だが、今度は自身が立つ位置を中心に囲うよう、石畳に光輪が映る。
(に、二発目……だと? 避けきれ――)
堰を切り勢い良く噴火する火山の如く、火柱がクルーイルの足元から打ち上がった――。
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