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友情崩壊

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「おかけになった番号はお客様の都合によりお繋ぎ出来ません」スマホから届いた無情な報せ。
それは、友人との絆の終わりを告げるものだった。琉壱はタメ息をつき、脱力して、ベッドへと腰を落とした。

 ゛所詮、金の切れ目が縁の切れ目か……。〟そう思った。

 琉壱は自身が友人だと思っていた裏切り者の名をスマホから抹消した。これで、かつて友人と呼べた奴等の名は全て消えたコトとなった。
 何も果たせず、何も生み出せず、派遣社員という身の上の琉壱は時が来たら仕事に向かい、指示されたことを黙々とこなし、時が経つのをただじっと耐え待つだけというそんな不変で刺激のない退屈な毎日を過ごしている。

 ただ、無駄に日々を浪費し、両親から貰ったかけがえのない生命イノチを粗く削っていった。そんな生活を二十歳迎えた時から続け、早7年もの尊き年月が経とうとしていた。

 母からは「もっとちゃんとした仕事に就いたら?夜からの仕事というのはちゃんとした仕事と言えないと思う」と、実家に顔出す度、耳タコな程言われた。

「派遣している中で自分に合うものを探すよ」
「それは、夜から仕事している人達への偏見だよ。そういった人がいることで成り立っている仕事もあるんだからさ」

現実イマとなっては、このニ文が母に言われた際の常套句となってしまった。

 将来の夢はある。が、それを叶える術を知らない。
知ったところで権力も金もコネも、ましてや相談出来る相手すらもいない。そんなナイナイ尽くしの琉壱にはどうすることも出来なかった。

「琉ちゃんとの将来ミライに希望が持てない……。ごめんね」
高3から付き合っていた茉莉とは、涙を浮かべ言われたこの一言で半年前に別れた。何も言い返せなかった。

 付き合っていた頃は、目の前がキラキラと輝くほどに景色セカイが変わって見えた。友達が自身から離れていくことも気にならず、代わり映えしない毎日のルーティンワークにも意欲的になれた。一時期は作業実績でトップ10に入ったこともあった。茉莉が側にいてくれさえすれば他に何も要らなかった。
別れてからは、その輝いていた景色セカイがガラガラと音をたてて崩れ、次第に心が荒んでいき仕事に身が入らなくなり休みがちになった。
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