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第四部 また追放されました!?
第11話『薬師、ようやくの新人指導』
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皆で工房側に回ってみると、そこには見知らぬ女性がうろたえた様子で立っていた。
「ああ、よかった。娘が、急に苦しみだして」
「アンナが!?」
続くロヴェル君の言葉で、わたしは察した。彼女はアンナちゃんの母親らしい。
「なんでだよ! 薬、ちゃんと飲ませなかったのか!?」
「も、もちろん飲ませました。でも、今日は朝から咳がひどくて……部屋で休ませていたんですが、症状は悪くなるばかりで……」
もともと気の弱い性格なのか、アンナちゃんの母親はロヴェル君の剣幕に圧倒されながらそう答える。
……予想通りというか、ロヴェル君の作った薬は効き目が薄かったようだ。それにしても、症状の悪化が早すぎるような。
「あ、あの」
そんなことを思いつつ、わたしはおずおずと挙手する。
この二人の間に入るのは気が引けたけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「え、あなたは?」
最近この村にやってきた薬師で、エリン・ハーランドと申します」
「ああ……噂は聞いています。国王陛下を不治の病から救ったという、伝説の薬師様ですね」
……なんか、前にも増して噂に尾ひれがついているけど、今は逆に都合がいい。わたしはあえて否定しなかった。
「先生、お願いします。娘を、アンナを診ていただけませんか」
やがて、彼女は懇願してきた。渡りに船と、わたしは快諾する。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
アンナちゃんの母親は安心感からか、涙声で頭を下げた。
「すぐに準備をしますので、少々お待ちください」
「……俺も行くからな!」
わたしが支度を始めると、ロヴェル君も同じように準備をする。
彼がアンナちゃんを心配する気持ちもわかるし、ここは同行してもらおう。
それから双子ちゃんたちに留守番を頼むと、わたしとロヴェル君は工房を飛び出したのだった。
◇
やがてアンナちゃんの家に到着すると、彼女は自室のベッドで横になっていた。
ベッド脇に向かい、その様子を見る。時折苦しそうに咳き込んでいた。
「はぁっ……ゲホッ、ゲホッ」
「アンナ、大丈夫か!?」
わたしの隣に立つロヴェル君は顔面蒼白で、アンナちゃんに必死に声をかける。
彼女もわずかに頷くくらいで、返事らしい返事はできない。それがより一層、ロヴェル君を不安にさせているようだった。
「……俺のせいだ。俺の薬が中途半端だったせいで」
「ロ、ロヴェル君、落ち着いてください。気持ちはわかりますが、薬師であるあなたが取り乱してどうするんですか」
「……っ!」
思わずそう伝えると、ロヴェル君ははっとした表情で固まった。
それを横目に、わたしは診察を開始する。
「うぅっ……ゲホッ、ゴホッ」
特に熱はなく、時折、痰の絡むような咳をしている。
それに加え、稀にひゅーひゅーと喘鳴のような症状も出ていた。
……これは、喘息だ。
ロヴェル君の作っていた薬からして、風邪をこじらせた程度のものだと思っていたけど……この子、喘息の持病があったなんて。
「あの、先生、アンナは治るんでしょうか……?」
「だ、大丈夫です。そこまで重い発作じゃないですし、専用薬で対処できます」
そう口にしつつ、わたしの頭の中にはすでに必要な薬材の一覧ができていた。
主に使うのは炎症止めの効果がある石膏で、他には咳を鎮めるビリビリ草とリリクル樹の根、そして痰を除去するためのアプリコットの種だ。どの薬材も手持ちがあるので、すぐに調合可能だ。
「せ、専用薬……それは高いのですか? うちには、とてもそんなお金は……」
その時、アンナちゃんの母親は不安げな声で言った。
言われてみれば、ロヴェル君が喉の薬を作った時も、その代金はもらっていなかった気がする。つまり、それだけ生活が困窮しているということだろう。
「お、お金の話は、また今度にしましょう。今は、アンナちゃんを楽にしてあげませんと」
一瞬考えて、わたしはそうお茶を濁した。
「……ロヴェル君は、どうしますか」
「え?」
それから、呆然と立ち尽くすロヴェル君に問いかける。
「ここで、アンナちゃんの看病をしますか。それとも、一緒に薬を作りますか」
「……もちろん、薬を作るよ。今度こそ、ちゃんとした薬を」
すると、彼はまっすぐな目でわたしを見ながら、はっきりとそう口にした。
「だから手伝わせてくれ。先生」
その碧眼の奥に強い意志を感じて、わたしは思わず微笑んだのだった。
◇
工房に戻ったわたしとロヴェル君は、手分けして喘息の薬の調合に取りかかる。
「わたしは石膏とリリクル樹の根を砕きますので、ロヴェル君はアプリコットの種の粉砕作業をお願いします」
「わ、わかった」
ロヴェル君は深呼吸をしたあと、用意したアプリコットの種を自分の薬研へと入れていく。
それから粉砕作業を始めるも、彼は肘から下の腕の力だけで薬材を潰していた。あれだと腕が疲れるだけだ。
初めて彼の調合作業を間近で見たけど、独学と言っていたぶん、無駄な動きが多い。
「……あの、そのやり方だと、うまく力が伝わりません。腕の角度はこうで、体重を乗せるようにするんです」
「え? こ、こうか?」
「いえ、もう少し体を起こして。薬研の刃は、器に対し常に垂直に。薬材を潰すのではなく、ゆっくりと切るように」
彼のすぐ隣に自分の薬研を設置し、手本を示す。
すると、ロヴェル君はじっくりとわたしの動きを見て、必死に真似ていた。
……今までだったら、話すら聞いてくれなかったというのに。
アンナちゃんを救いたいという思いが、彼の中で何かを変えたのかもしれない。
「ゆっくりと、切るように……」
「そうそう。そんな感じです。上手ですよ」
学ぶ気持ちが強くなったロヴェル君は飲み込みも早く、すぐに薬研の扱い方を覚えていた。
さすが男の子というか、力も強く、硬いアプリコットの種をゴリゴリと粉砕していく。
それを確認して、わたしも自分の作業に集中する。
「……この薬を使えば、アンナの病気は治るんだよな?」
懸命に手を動かしていると、ロヴェル君が呟くように訊いてくる。
「経過を見ないとわかりませんが、日常生活に支障がない状態には戻れるかと」
「歌は……歌えるようになるのか?」
「え?」
「……アンナのやつ、歌うのが好きなんだ」
「そ、そうなんですね」
「村でも一番上手だし、本人も歌を仕事にするのが夢だって言ってた。その夢は……大丈夫なのか?」
「そ、それは……ロヴェル君次第です」
「……俺?」
「そうです。喘息という病気の治療には、長い時間がかかります。その間、治療薬を飲み続けることになりますが、提供される薬の効能に差があると、上手く治療ができません。治療薬を提供する薬師には、正しい効能の薬を、安定して調合し続ける技術が必要なんです」
「それなら、毎回先生が作ってくれたらいいじゃないか。国家公認工房の看板薬師なんだろ?」
「そ、それはできません。今回は非常時なので、特別ですが。本来わたしは、この村に指導に来ただけ。ニグラード工房の看板薬師は、ロヴェル君、あなたです」
そう伝えると、彼は一瞬薬研を動かす手を止め、目を見開いた。
「だ、だから、わたしがいる間にしっかりと勉強して、アンナちゃんの治療薬を作れるようになってください。それが、彼女の夢を応援することにもなります」
続けてそう言うと、ロヴェル君は真剣な表情で何度も頷いたあと、粉砕作業を再開した。
やっぱり、愛の力は偉大……ということなのかな。
「ああ、よかった。娘が、急に苦しみだして」
「アンナが!?」
続くロヴェル君の言葉で、わたしは察した。彼女はアンナちゃんの母親らしい。
「なんでだよ! 薬、ちゃんと飲ませなかったのか!?」
「も、もちろん飲ませました。でも、今日は朝から咳がひどくて……部屋で休ませていたんですが、症状は悪くなるばかりで……」
もともと気の弱い性格なのか、アンナちゃんの母親はロヴェル君の剣幕に圧倒されながらそう答える。
……予想通りというか、ロヴェル君の作った薬は効き目が薄かったようだ。それにしても、症状の悪化が早すぎるような。
「あ、あの」
そんなことを思いつつ、わたしはおずおずと挙手する。
この二人の間に入るのは気が引けたけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「え、あなたは?」
最近この村にやってきた薬師で、エリン・ハーランドと申します」
「ああ……噂は聞いています。国王陛下を不治の病から救ったという、伝説の薬師様ですね」
……なんか、前にも増して噂に尾ひれがついているけど、今は逆に都合がいい。わたしはあえて否定しなかった。
「先生、お願いします。娘を、アンナを診ていただけませんか」
やがて、彼女は懇願してきた。渡りに船と、わたしは快諾する。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
アンナちゃんの母親は安心感からか、涙声で頭を下げた。
「すぐに準備をしますので、少々お待ちください」
「……俺も行くからな!」
わたしが支度を始めると、ロヴェル君も同じように準備をする。
彼がアンナちゃんを心配する気持ちもわかるし、ここは同行してもらおう。
それから双子ちゃんたちに留守番を頼むと、わたしとロヴェル君は工房を飛び出したのだった。
◇
やがてアンナちゃんの家に到着すると、彼女は自室のベッドで横になっていた。
ベッド脇に向かい、その様子を見る。時折苦しそうに咳き込んでいた。
「はぁっ……ゲホッ、ゲホッ」
「アンナ、大丈夫か!?」
わたしの隣に立つロヴェル君は顔面蒼白で、アンナちゃんに必死に声をかける。
彼女もわずかに頷くくらいで、返事らしい返事はできない。それがより一層、ロヴェル君を不安にさせているようだった。
「……俺のせいだ。俺の薬が中途半端だったせいで」
「ロ、ロヴェル君、落ち着いてください。気持ちはわかりますが、薬師であるあなたが取り乱してどうするんですか」
「……っ!」
思わずそう伝えると、ロヴェル君ははっとした表情で固まった。
それを横目に、わたしは診察を開始する。
「うぅっ……ゲホッ、ゴホッ」
特に熱はなく、時折、痰の絡むような咳をしている。
それに加え、稀にひゅーひゅーと喘鳴のような症状も出ていた。
……これは、喘息だ。
ロヴェル君の作っていた薬からして、風邪をこじらせた程度のものだと思っていたけど……この子、喘息の持病があったなんて。
「あの、先生、アンナは治るんでしょうか……?」
「だ、大丈夫です。そこまで重い発作じゃないですし、専用薬で対処できます」
そう口にしつつ、わたしの頭の中にはすでに必要な薬材の一覧ができていた。
主に使うのは炎症止めの効果がある石膏で、他には咳を鎮めるビリビリ草とリリクル樹の根、そして痰を除去するためのアプリコットの種だ。どの薬材も手持ちがあるので、すぐに調合可能だ。
「せ、専用薬……それは高いのですか? うちには、とてもそんなお金は……」
その時、アンナちゃんの母親は不安げな声で言った。
言われてみれば、ロヴェル君が喉の薬を作った時も、その代金はもらっていなかった気がする。つまり、それだけ生活が困窮しているということだろう。
「お、お金の話は、また今度にしましょう。今は、アンナちゃんを楽にしてあげませんと」
一瞬考えて、わたしはそうお茶を濁した。
「……ロヴェル君は、どうしますか」
「え?」
それから、呆然と立ち尽くすロヴェル君に問いかける。
「ここで、アンナちゃんの看病をしますか。それとも、一緒に薬を作りますか」
「……もちろん、薬を作るよ。今度こそ、ちゃんとした薬を」
すると、彼はまっすぐな目でわたしを見ながら、はっきりとそう口にした。
「だから手伝わせてくれ。先生」
その碧眼の奥に強い意志を感じて、わたしは思わず微笑んだのだった。
◇
工房に戻ったわたしとロヴェル君は、手分けして喘息の薬の調合に取りかかる。
「わたしは石膏とリリクル樹の根を砕きますので、ロヴェル君はアプリコットの種の粉砕作業をお願いします」
「わ、わかった」
ロヴェル君は深呼吸をしたあと、用意したアプリコットの種を自分の薬研へと入れていく。
それから粉砕作業を始めるも、彼は肘から下の腕の力だけで薬材を潰していた。あれだと腕が疲れるだけだ。
初めて彼の調合作業を間近で見たけど、独学と言っていたぶん、無駄な動きが多い。
「……あの、そのやり方だと、うまく力が伝わりません。腕の角度はこうで、体重を乗せるようにするんです」
「え? こ、こうか?」
「いえ、もう少し体を起こして。薬研の刃は、器に対し常に垂直に。薬材を潰すのではなく、ゆっくりと切るように」
彼のすぐ隣に自分の薬研を設置し、手本を示す。
すると、ロヴェル君はじっくりとわたしの動きを見て、必死に真似ていた。
……今までだったら、話すら聞いてくれなかったというのに。
アンナちゃんを救いたいという思いが、彼の中で何かを変えたのかもしれない。
「ゆっくりと、切るように……」
「そうそう。そんな感じです。上手ですよ」
学ぶ気持ちが強くなったロヴェル君は飲み込みも早く、すぐに薬研の扱い方を覚えていた。
さすが男の子というか、力も強く、硬いアプリコットの種をゴリゴリと粉砕していく。
それを確認して、わたしも自分の作業に集中する。
「……この薬を使えば、アンナの病気は治るんだよな?」
懸命に手を動かしていると、ロヴェル君が呟くように訊いてくる。
「経過を見ないとわかりませんが、日常生活に支障がない状態には戻れるかと」
「歌は……歌えるようになるのか?」
「え?」
「……アンナのやつ、歌うのが好きなんだ」
「そ、そうなんですね」
「村でも一番上手だし、本人も歌を仕事にするのが夢だって言ってた。その夢は……大丈夫なのか?」
「そ、それは……ロヴェル君次第です」
「……俺?」
「そうです。喘息という病気の治療には、長い時間がかかります。その間、治療薬を飲み続けることになりますが、提供される薬の効能に差があると、上手く治療ができません。治療薬を提供する薬師には、正しい効能の薬を、安定して調合し続ける技術が必要なんです」
「それなら、毎回先生が作ってくれたらいいじゃないか。国家公認工房の看板薬師なんだろ?」
「そ、それはできません。今回は非常時なので、特別ですが。本来わたしは、この村に指導に来ただけ。ニグラード工房の看板薬師は、ロヴェル君、あなたです」
そう伝えると、彼は一瞬薬研を動かす手を止め、目を見開いた。
「だ、だから、わたしがいる間にしっかりと勉強して、アンナちゃんの治療薬を作れるようになってください。それが、彼女の夢を応援することにもなります」
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