転生した最強の死霊使いは平凡な日々を求めるが……

カルマ

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第一試験・サバイバル(3)

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 突如現れた魔獣は四本足に背中には二対の翼が生えており、長くしなやかな尻尾が生えていた。その姿を見て一体の魔獣の存在に気付いた。ふむ、あれはキメラか。


 その魔獣が上空に向けて大きな咆哮を上げると、辺りの魔獣はその虎の魔獣の近くに集まり捕食されていた。なるほど、これが融合(フュージョン)の意味か。捕食を繰り返す度にみるみる大きく強くなっていく魔獣、これはかなり厄介な相手になってきたぞ。果たして今の俺で勝てるかどうかも怪しい。おそらく他のメンバーでは太刀打ちすらできないだろう。最終局面はその魔獣から時間一杯逃げ回ることなのだろうと思うと俺は急ぎこの事態を知らすべく王女様が率いている集団の近くに転移をして地面に大きく魔法文字を描いた。


 魔法文字の内容は至ってシンプル「やばい魔獣が来る。死ぬ気で逃げろ。間違っても戦おうと思うな」この内容を目にした一団は皆各々真に受ける者、冗談だと嘲笑う者、恐怖を抱きわななく者など居たが、王女様はこの魔法文字を目にして思案している様子だった。そして、答えが纏まったのか一団に向け指示を出していた。


「皆さん! 残り時間一杯この文字に従い逃げる準備をします、索敵魔法が得意な方は辺りを索敵してください! 補助魔法が得意な方は他の方にバフによる補助を、他にも魔獣が居るかもしれません、前衛が得意な方は前に出て先行してください、他の皆さんも各々できる得意分野でそれぞれ補助をお願いします」


 完璧な指示だった。ほんとに王族か? あの指揮能力は歴戦の戦いを得て得られる代物だぞ? 一つの迷いもなく適材適所で役職を割り振り、尚且つメンバー全体の士気を高めている。だがこれでもあのバケモノには遠く及ばないだろう。そもそもこのプロセスに奴と戦うという工程は含まれてはいないはずだ。


 そして、例のバケモノが動き出した。その動きでようやく王女様率いる一段の皆も理解したのか、顔を青ざめながらたじろいでいた。仕方ない、時間稼ぎになるかわからないがここは一つ俺が殿を務めてやるか。俺は時間稼ぎをする旨をスキル通信(テレパシー)にて王女様に伝えた。


「聞こえますか?」
「え⁉ あ、はい」
「あまり時間が無いので手短にお伝えします。今から俺が少しの間だけ時間を稼ぎます、その間にみんなはこれより送る座標に向かって全力で走ってください。後ろを振り返らずに只ひたすらに前だけを向いて下さい」
「……わかりました。感謝致します。どうかご武運を」


 通信(テレパシー)を終えて、一団は俺の指示通り全力で駆けていた。これで人目も気にせずに思いっきり戦える。今の自分がどの程度まで力を出せるのか少し気になっていたものだし、時間稼ぎとは言ったが本気でこいつを倒すつもりで行こう。


「よぉ、お前の相手は俺がしてやろう。かかってこい」


 距離は離れてはいるが万が一にも俺の姿を見られてはまずいので魔力疎外の結界を張り、外部からの感傷を断った。あの魔獣がいきなり姿を消しては学園側も驚いてしまうことも計算に入れ、幻覚魔法・サモンにて先程の魔獣を召還した。一応魔力量は同じにして攻撃力を零にして召還した。これで追いかけはするが誰一人も殺されることなく済む。さて、そろそろ俺も臨戦態勢に入るか。


 スキル影の王を発動し、全身に黒い紋章が体を巡る。魔眼も出し惜しみせずに未来予知の魔眼と無限(インフィニティ)の魔眼二つを開眼した。そして、父さんからもらったバルムンクを空間魔法・インベントリの中にしまい、まずは小手調べをするために弓を創造した。


 俺が弓を構えても未だこちらに攻撃してこようとはしなかった。あちらも俺の出方を見ているのかもしれない、それに小手調べではあるが全力で弓矢をぶち込むつもりだ。普通の弓矢ではこいつの周りを覆っている魔力壁に弾かれてしまうだろうし、ここは昔俺が使っていたオリジナルの弓矢を使うか。創造のスキルで一本の長い槍の様な弓矢を取り出した。これは、魔槍ゲイ・ボルグを弓矢に変えた代物だ。それに加えその弓矢に必中、一撃必殺、貫通、分身の効果を付与し、弓を構えた。じりじりと肌を掠める緊張感に苛まれながら戦いの合図を窺っていた。辺りの木々や大地が俺と魔獣の魔力の衝突に揺れている。そして一本の木々が倒れこんだ時にお互いが動き出した。未来予知の魔眼による権能のお陰で魔獣の動きを予知していた俺は動き出すのと同時に転移し、魔獣の上空にてその矢を放った。


 弓技・星屑の雨(スターダストレイン)上空から無数の弓矢が降り注ぎその全ての弓矢に必中の効果が付与されているため、この矢は必ず魔獣に当たる。これで片が付いてくれればいいのだがな。星屑の雨の攻撃により辺り一面にその衝撃で起きた砂埃が舞っていた。その間も常時透視化(エコー)を使い魔獣の姿を検知していた。流石に一撃では無理か……、透視化(エコー)に映る魔獣はまるでダメージを負っている様子は伺えなかった。そして、未来予知の魔眼に次の未来が映し出されていた。その魔獣はこの砂埃の中、俺めがけて魔力砲を放とうとしていた。


「破壊(ブレイク)」


 なんとか発動前に術式を破壊して難を逃れた。あれは今の俺では喰らったら一たまりもないぞ。


 砂埃が収まり、魔獣の姿が見えた。予想通りダメージを負っている形跡は見受けられなかった。


 その後も距離を保ちつつ弓で牽制し続けた。ダメージが入らないのはひとえに俺の力不足に他ならない。それなら、魔法による補助を付ければいいだけの話だ。


 一度牽制を止め、弓をしまい、次は二丁拳銃を創造した。弾薬に混める魔力は先程と同様、それに加え風魔法と炎魔法の魔力を銃口に付与し、爆風による相乗効果で威力を底上げすることにした。


「喰らえ! 爆風砲(バースト・ウィング)」


 凄まじい勢いで放った弾丸に先程の攻撃より危機感を覚えたのか、魔獣は先程の魔力砲をぶつけて相殺してきた。これでもダメか。


 俺が次の策を志向している矢先に魔獣が立て続けに攻撃を繰り出してきた。この魔獣、学習能力があるのか、先程の俺の破壊(クラッシュ)による妨害を学習し、今度は俺の周囲全体を囲む形で魔力砲の術式が浮かび上がっていた。これは、まずいな。全部は消しきれない。


 一度思考を切り替え、今現状の危機を打開すべく瞬時に自身の後方にある術式を破壊した。それに続きすぐさま創造で盾を創り出して魔力砲に備えた。


 顕現した盾の権能は絶対防御(オベリスク)この盾は絶対に壊れない。その絶対防御を前方の魔力砲に向けて構えた。いくら壊れないと言っても扱うのは人間の身の俺だ。技の威力には当然押されてしまう。それを無限(インフィニティ)の魔眼にて魔力を永久的に無限にすることにより自信を強化し続けている。


 魔力砲を受けつつ、それを上空に押し上げた。その瞬間、魔獣は一気に間合いを詰めて、俺の脇腹に一撃を食らわしてきた。俺自身が常時発動させている魔力壁もいとも簡単に壊され、緊急用に張っておいた結界でさえもこの一撃で砕け散った。


 魔獣による一撃で吹き飛ばされた俺は意識が朦朧としながらも、自身の状況判断にあたった。一言で言うと瀕死の状態だった。肋骨に加え、あばらも折れている、内臓もかなり損傷していて、頭からは血が流れ、視界は血で赤く染め上げられていた。


 俺の損傷に影の世界の十影雄たちが騒ぎあげていた。確かに奴らをここに出せばこの魔獣でさえも一瞬で倒してしまうだろう。だが、それではダメなんだ。俺が昔の俺に近付くほど強くならなくてはいざというときもしも、大切な何かが出来た時己の力で切り抜けなければ恥ずかしくてその人に顔向けできない。だから、今はまだ、十影雄に頼るわけにはいかない。
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