白騎士と薔薇の婚姻

世羅

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夜更けの帰宅

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 ロザリアはうまくメイドや執事たちとはコミュニケーションが取れずに、夫がいないと心細くてたまらない。夫はといえば、仕事から帰ってくると、時たま凄まじく不機嫌な時がある。機嫌をとるためには黙るのが一番で、ただひたすら彼の意見に対して「はい」と言うしかない。今日は、宴会があって遅くなるとだけ言って、それに対してロザリアは「はい」とだけ言って見送った。
  夫がいない分、かなり早めに夕食と湯浴みを済ませた。そして、執事やメイドたちを下がらせて、ベッドに横たわった。一刻もしないうちに、微睡みの中に落ち始めてしまった。まだ、夫が帰宅していないのだから、寝てはいけないと自分に言い聞かせるが、睡魔に勝つことはできなかった。
 意識を手放して、少しすると遠くから「今日は、もう下がっていい」「ロザリアは?」という夫の声がして、ロザリアは重い瞼を持ち上げた。ゆっくりと、手をついて上半身を起こそうとすると同時に、寝室のドアから明かりが入って来た。眩しくて薄めを開けると、ヴァイスの「起こしたか?」と不安げな声がした。

「おかえり……なさい」

 ヴァイスはああと言って、ベッドの近くのソファに腰を下ろした。そして、いつの間にかテーブルに準備されていたウィスキーのボトルに手をかけた。ゆっくりと近くにあったグラスに液体を注いで、ボトルの栓をしめた。ヴァイスはグラスに入ったウィスキーを味わうかのようにゆっくりと飲み始めた。それを見たロザリアは、起こした上半身をどさりとまたベッドにに預けた。

(今日は機嫌が悪いわ……ーーー)

 とりあえず、刺激しない他手がないとロザリアが諦めているとヴァイスが質問してきた。

「君の容姿は、君の民族の中でも珍しいのか?」

 ロザリアははいと答えた。彼女は同族の中でも、異形だ。白く透き通るような肌に、黒い髪、そして碧眼。それはあってはならぬ、組み合わせだった。だから、同族からは弾き出されていた。醜い自分と誰が結婚してくれるのだろうかと思っていたところにヴァイスとの出逢いがあった。
 ヴァイスはベッドの端に腰掛けると、ロザリアの髪を一掴みして口付けた。

「ロザリア、もっとお前に笑ってほしい。もっと話してほしい」

 そう、彼女の民族の言葉で話しかけた。

「旦那様、明日はおやすみなので一緒に過ごしていただけますか?」

 もっとお互いを知る時間。それがロザリアの欲しいものだ……。




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