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酔ってるあなたも悪くない

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 今日は飲み会だから少し帰宅が遅くなると出勤するときに言われて、じゃあ今日は夕食を作る手間がなくなってラッキーだと私は思った。一人だからいつもよりベッドに入る時間が早くて、気づいたら意識が落ちていた。しかし、急にベッドのスプリングが飛び跳ねたので驚いて目を覚めしてしまった。何事かと思い、起きると横には和樹さんがスーツのまま大の字になっていた。



「和樹さん、大丈夫?」



 スーツが皺になってしまうと思い、とりあえず起こして寝る支度だけさせようと思って揺すってみた。しかし、んーという声だけして、彼は起きようとはしない。諦めて、また横になり、じっと和樹さんの顔を見ると少しぴくりとだけ反応があった。そして、急に起き上がり、ふらふらとキッチンのほうへと向かっていった。戻って来ると手にはミネラルウォーターがはいったペットボトルがあった。ミネラルウォーターを飲み干し、今度は、ベッドに腰掛けた。



「乃愛~~~」



 そう言って、抱きついて来た。そして、気づいたら手が胸にあって、柔らかいとかいう声が聞こえた。私の本心としては、眠いから寝たい。いまはえっちする気分でもない。すっと避けると、そのまま和樹さんはベッドに転がった。被害を最小限に抑えるため、私は別室のベッドで寝ることに決め、別室へと移動した。



 しかし、和樹さんが私に抱きつきながら一緒に移動して来たため、大人しく夫婦兼用のベッドに戻った。



「乃愛、えっちしよう」



 再び、彼の手がお腹らへんを行き来する。ゆっくりと唇を奪われそうになるも、自分の口に手を当てて拒否した。そうすると、彼がむっとしたのがわかった。



「夫婦の危機だ」



 酔っているのに、真剣なその声に思わず吹き出してしまった。ぎゅっと抱きしめられて、和樹さんの胸に顔を埋める形になった。ほんのりお酒くさいがそれは仕方ないから許してあげよう。


「乃愛にもっと好きになってもらいたい……だから、エッチだって頑張るってるんだぞ。おっさんだなんて思われないように、精力的に頑張ってるだろ? 若い男なんかにはまだまだ負けないだろ?」

「うん、そうだね」

「本当にわかって……る……の……か?」


 酔いにやられたのか、和樹さんは意識を手放した。

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