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第一章 女子校追放、聖ヴァレリー女子校へ転入

第09話 ヴァレー家のご令嬢(♂)

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「ミーシャさんの席はクロエさんの隣ね」
 クロエさん?どの子だろ?
 私が周りを見ると、一人の女子生徒が手を上げた。
「うわ、カッコいい。美人だね、よろしくね」
 本当にカッコ良かった。ハンサムな顔立ちは他の少女達と比べて明らかに目立つくらいのカッコよさだった。
 でもどこかで見たことがあるような……。

 美人だと言うとクロエさんは俯いて震えていた。
「よ、よろしく。クロエ=グラフだよ」
「クロエ=グラフ?」
 グラフ。どこかで聞いたような。
「騎士のグラフ家だよ」
 騎士のグラフ……あっクロエルド=グラフじゃん……。凄いな、どこから見ても女の子にしか見えないよ。ナギもすごいけどクロエも凄い美形だ。攻略対象ってすごいなぁ。
「……えっ?」
「あっ、ごめん」
 なんだかゲームキャラを見るようにマジマジと見ていた。
 こんなキレイな娘が女の子のハズがない!を体現したようなクロエの様子に見とれてしまっていた。
「美人だから、つい見ちゃってたよ」
 その一言でクロエが顔を赤くした。
「あ、ありがとう」
 ゲームをなぞった発言に、クロエが顔を赤くする。

「私は、ミーシャ=ヴァレーだよ」
 そう言うと、クロエの表情がピシッと固まる。

 クロエの奥にいる女生徒が手を上げてヒラヒラさせた。
「私はナタリー。姓は無し、商家の娘だよ」
「よろしくね、ナタリー」
 そう言うとナタリーは嬉しそうに微笑んだ。

「でも、ヴァレー?ミーシャさんはヴァレリー理事長の令嬢じゃないの?偽名とか?理事長の娘が転校するってお父さんが言ってたよ。制服の手配とかウチがやったからねー」
 フッフッフと笑うナタリー。
「あぁ、そっちはナギの方だよ。私は親戚かな」
「そうなんだー。理事長の娘だったらお金持ちでしょ?会社とかも持ってるしさー。学食とか奢ってくれるかなー、なんて期待してたのに」
「ごめんね、ナタリー。で、でも学食くらいならお近づきの印で奢るよ?サイフの中にはあんまり入ってないけど、足りるかな?」
「いいよいいよ、冗談だから!」
 にへら、と笑うナタリーとミーシャ。

 硬直がとけたクロエは、ナタリーの口を抑えた。
「ちょ、乱暴?乱暴するの!?やー、優しくしてくれないとダ……モゴモゴ」

 モゴモゴ言うナタリーにやや青ざめた顔でクロエが囁いている。

 なんだろう?

「ナタリー、ヴァレーってつく企業ってどこかわかる?」
 そう言って、んー?と考える仕草をするナタリー。
「ヴァレー……ヴァレーサーバー?ヴァレーマシナリー?ヴァレーディスク?ヴァレープラントに。あー、いっぱいあってわからない」
「あっ、それ。私のお父様がやってる会社だよ」
「どこの会社?」
「えっ……?どこの会社って?」
「えっ?」

 ナタリーと私が見つめ合っているとクロエがまた耳打ちする。くすぐったそうにしていたナタリーは、目を大きく見開いた。
 小動物的な動作が可愛いなぁ、と考えながらナタリーとクロエを見る。

「あの、もしかして。ヴァレー産業機械グループの会長様のご令嬢様ですか?」
「あ、うん……」
 何で敬語。会長様のご令嬢様って、変な言葉だよね。
「ヴァレーフーズ、世界的な食品の流通を抑えた世界で上から数えたほうが速い財閥の方のヴァレーとご関係が?」
「そっちは御爺様が会長をしているけど」
「食品王!?……国王でも頭が上がらない権力者じゃない!!」
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