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第二章 生徒会書記のミーシャ

第17話 ナギとハルミチ

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 さてトゥルーエンドのルートに入った以上もうやる事は決まってる、とミーシャはやることをまとめていく。

「あの、会長」
「ハルでいいわよ」

「コンピュータ学園みたいな呼び方は会長に対して失礼なのでちょっと……」
「コンピュータ学園……?良く解らないけどみんなそう呼んでるわよ?」

「会長って呼んでいいですかね」
「ハルと呼んでいいわよ?」

「会長でいいですかね」
「ハル」

「会長と呼びたいです。示しがつかなくなりますし」
「大丈夫よ、ウチはフレンドリーな雰囲気の生徒会を目指してるの。名前で呼び合いましょう?」

 グイグイ距離を詰めてくるハルミチ。
 だがミーシャも譲らない。

 ゲームでは会長の好感度を標準よりやや上くらいに保たなければデッドエンド。
 ハルと名前で呼ぶくらいなら大丈夫な気もする。
 だけど一度上がってしまった好感度を下げるのは難しいんだよね。
 酷いことをして好感度を下げようとしても、高感度は保ったままヤンデレ化していくから。

 ミーシャはそうざっくりと計算し、名前呼びを避けようとする。
 そして、何度目かのやりとりで、会長が折れた。
「それでは、とりあえずは会長でいいですよね」
「うーん。仕方ないわね、とりあえず今のところは会長でいいわよ。名前で呼んでくれると嬉しいけどねー?」

 良かった、とミーシャは安堵の息をつく。

「あの、ハル。ミーシャに近すぎませんか?」
「……会長よ。貴方にハルなんて呼び捨てさせる許可を出した記憶はないけど?」
 ミーシャが会長と距離を置こうとして、つれなくしたせいか。

 笑顔のまま会長はナギにあたりが強い返事をした。

「そうですか、会長。申し訳ありませんでした。あと、私のミーシャに近付かないでくれますか?不愉快ですから」

 ピキッ

「ふうん……?ミーシャちゃんは可愛いけど、ナギちゃんは可愛くないわね。書記補佐の分際で私に逆らうんだ?」

 ピキッ

「会長なのに、頭悪いんですね。まず、この学校は生徒同士の格差が無いように、自分の家について言及する事は禁止されてますよね。学生同士は平等と言う教育理念からですよ。それなのに、『会長』と『書記補佐』と言う格差を持ち出して『分際で』と言うなら、私も実家を持ち出して、あなたの家程度が私に意見できるんですか?と言いますよ」

 ピキキッ

「あら、貴方は可愛くないだけでなく頭も残念なのね。学生同士は平等よ。でも生徒会は教師の雑用係、教師の意思で生徒をまとめるの。それは格差ではなく区別よ?教師に教わる立場の学生と教師の代行である生徒会は格差でなく役割による区別なの。貴方は教師に注意されたら家を持ち出してあなたの家はどこ?と教師を脅すような行為が正しいと言うのかしら?本当にナギちゃんは愚かよね。お勉強はできても初等教育からやり直したほうがいいわよ?」

 段々ヒートアップして二人の声量と会話量が増えていく。
 導線の長い爆弾に火がついたような焦りで、ミーシャは二人の間に入った。

「ちょ、ちょっとまって!ナギ、ちょっと落ち着こうよ。深呼吸しよ?会長も後輩の言葉にムキにならないで。カッコいいお顔が台無しですよ?」
「ハルよ、ミーシャちゃん?」
「……」

 ナギと会長が険悪になるとこの先不都合がありそうだ。それを考えると……名前呼びのリスクよりも……そうミーシャは考えて。
「は、ハル?かっこいいお顔が台無しですよ?」

 譲歩した。
 
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