半魔転生―異世界は思いの外厳しく―

狐山犬太

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プロローグ―退屈な日々―

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    みんな、みんな燃えてしまった。
 慣れ親しんだ景色は崩れて燃え落ち、大切だった人達は呆気なくいなくなった。
 何の脈絡も無く振り撒かれた厄災により、希望に満ちた俺の人生は一変した。
 退屈が嫌いだった。
 だが、理不尽と不平等に苛まれる人生は退屈以下の不幸だと気づいていなかった。
 その時までは。


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 毎日がつまらなかった。

 特に裕福でも、かといって貧乏でもないありふれた家庭で一人っ子として育った。
 勉強もスポーツも、これといって良い結果は残していないが特に苦手意識も無い。
 高校時代に初めての彼女ができて、それなりに楽しい恋愛が出来たと思う。
 まぁ長続きはしなかったが。

 大学を出た後、ありふれた一般企業に就職して五年が経ってあっという間にアラサーを迎えていた。
 そうやって生きてきていると、こうした味気ない現実にはいつからか期待しなくなってしまっていた。

 日々はあまりに退屈だった。
 代わり映えの無い日々。
 ただ仕事をして家へ帰り、また仕事に向かう。
 休みの日には決まって趣味の世界へと入り浸る。

 そんな俺の趣味と言えば、小さな頃からずっとゲームやアニメ・漫画等のいわゆる「オタク趣味」だ。
 趣味の時間は、退屈な現実から目を逸らす事が出来た。
 そして、年を経るほどに、が持つ「世界」への憧憬は強まった。
 漫画やアニメの世界では、いつでも新しい何かが起きる。
 冒険・死闘・出会い・別れ等様々だ。
 刺激的な世界。
 現実ではありえない数々の事象が、この胸を掻き立てる。

 (自分もこんな世界に飛び込んでみたい!剣を持ち、魔法を唱えて世界を旅してみたい!)

 と、

「何を夢見てんだかなぁ……」

 目を開けてポツリと呟く。
 どうやらベッドでアニメを観ている最中に寝てしまったようだ。
 この年になって、まだこんな子供じみた夢を見るなんて。

「何か買ってくるか……」

 ちょっとナイーブになってしまった。
 気分転換だ、休みの日とはいえ家から一歩も出ない生活というのもどこか味気ない。
 かといって向かうのはコンビニか近くのスーパーマーケットくらいなものだ。
 その日ゴロゴロと過ごすためのお供となる、甘味や酒等を買いに行く程度だ。

 (なんだ?夢を見た後から、いやに頭がボーッとするな)

 家を出てすぐ、自身の身に生じた異変に気が付く。
 大したことでは無いが、気持ちがどこか遠くに引っ張られている様な感覚だ。

 (参ったな、熱か?出るべきじゃ無かったか……頼むから明日には引きずってくれるなよ~大事な会議があるんだよ……)

 よし、スポーツドリンクとフルーツゼリーも追加で買い足そうと思いながら、スマホのメモ帳アプリに指を走らせ、横断歩道に足を踏み入れた矢先

「おい!!まだ赤だぞっっ!!!」
「え?」

 怒声が飛んだ。
 それと同時に、横から走ってきたトラックからは大きなクラクションが鳴らされる。

 (あっ、これは間に合わない……いやいや、もっと早く止めてくれよ、てか何で俺は信号を見てなかった?待ってくれ、まだ見てないアニメが溜まってって待て待て明日は大事な会議が)

 走馬灯のように、高速化された思考が意味のない考えを吐き出していく。
 次の瞬間。

 今までの退屈な日々が嘘のようにあっけなく、俺の人生は終わっていた。

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