灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

文字の大きさ
22 / 137
沈黙の檻

公安地下 司令室

しおりを挟む
モニターに映るのは、湾岸エリアの古びた倉庫群。
室内には、課長と蓮、そして壁にもたれて飴を噛む鴉の姿があった。

「……情報が入った。人身売買ルートの現行犯を押さえる。ターゲットは湾岸32号倉庫。輸送中の少女が数十人、全員日本人。目的は国外売却と見られる」

「最悪だな。くそったれが」

「……ああ。取引は48時間以内に完了する。警察の手は使えない。だから、お前たちを動かす」

「お前ら公安って、便利屋扱いするの好きだよな。」

「黙って聞け。今回は潜入、および人質の奪還が主目的だ。ただし、場合によっては——」

課長の目が鋭く光る。

「“殲滅”を許可する。逃がすな。売る奴も、買う奴も。例外はない」

「……了解」

蓮が鋭い目で応じる。
鴉は飴を奥歯で噛み砕き、わずかに目を伏せた。

「被害者はどこに?」

「倉庫の地下。鉄格子つきの部屋がある。トラックで何度か搬出入が確認された。中には武装した護衛が数人……いや、十数人いる可能性もある」

「侵入口は?」

「裏手に、旧排水路につながる通気口がある。そこを通れ。作戦は深夜2時から。制限時間は90分」

「突入、救出、可能なら幹部確保。状況次第では……全員始末、と」

鴉が肩をすくめる。

「なぁ課長、それ、だいぶ命がけでやる内容じゃねぇのか?」

「任せられるのは、お前らしかいない。それが答えだ」

「……了解。準備に入る」

「ったく……最近、オレら出番多くね?」

「文句があるならやめろ」

「え~?寂しいこと言うなよ、相棒」

「誰が相棒だ。舐めてんのか」

「……以上だ。装備を整えて出発しろ」

蓮と鴉は軽く一礼し、無言のまま指令室を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

僕を守るのは、イケメン先輩!?

BL
 僕は、なぜか男からモテる。僕は嫌なのに、しつこい男たちから、守ってくれるのは一つ上の先輩。最初怖いと思っていたが、守られているうち先輩に、惹かれていってしまう。僕は、いったいどうしちゃったんだろう?

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

処理中です...