灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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独行

朝焼けの距離

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朝日がカーテンの隙間から差し込み、部屋の空気をじんわりと温めていく。

「……んだよ、まぶし……」

鴉がうめくように目を細め、寝返りを打つ。
その動きに反応するように、床に落ちかけていた毛布がずり落ち、寒さに肩をすくめた。

「寝相悪いんだよ、お前」

低く呆れたような声が飛んできた。

鴉が半眼のまま顔を上げると、キッチンの前に蓮が立っていた。湯気を立てるマグカップを片手に、やけに冷たい視線を送ってくる。

「……ん、おはよ。って……目ぇ覚めたら睨まれてんの、理不尽だな」

「寝過ぎだ。そろそろ医者に行けって言ったよな」

「やだよ、だるいもん……俺まだ死にかけてる自覚あるし」

「その口で“だるいもん”とか言う元気あるなら治ってんだろ。さっさと着替えろ」

「鬼かよ……」

ぶつぶつ言いながら起き上がる鴉。
その様子を見て、蓮はわざとため息をひとつついた。

「ていうかさ、俺昨日、命張って庇ったんだけどなぁ?恩を仇で返されてない?」

「命張られても、途中から報告書書いたの俺だけどな」

「それはそうだけどぉ~~……」

情けなく伸びた鴉の声に、蓮は少しだけ口元を緩めた。

「……ま、助かったのは事実だ。感謝する」

唐突に返された感謝の言葉に、鴉がぴたっと動きを止める。

「……っ、え、なに?いまなんて?」

「聞こえてただろ」

「いやいやいや、もう一回言って?」

「うるさい。着替えろ」

「え~~!?恥ずかしがるとか反則なんだけど~!」

「殺すぞ」

「こわ!!」

なんて、朝からいつもどおりのやり取り。

でも――
昨日の夜、ふたりの間に少しだけ生まれた温度が、まだ部屋に残っていた。

それに、どちらも気づかないふりをしていた。
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