灰に堕ちるその日まで

静寂にしのぶ影

内通者の影

外に出た蓮は、病院の監視カメラデータを公安の端末で回収。
情報部と連絡を取り、今朝の看護師の映像を拡大。

「やはり……顔が不自然にぼかされている。加工か」

犯人は潜入のプロ。素性も経歴も洗えない。
ただ一つ――彼女の立ち去った廊下の先、非常階段のドアが、10分後に警備員により発見されていた。

「退路の確認。動機は“接触”じゃなく、“下見”か」

蓮は立ち止まる。

「鴉の動きが、漏れているな。彼女の言葉からして、公安内に、内通者……」

スマホを握る手に力が入る。

「公安内の内通者を炙り出す」

蓮は歩き出す。誰にも告げず、闇に潜るように。