灰に堕ちるその日まで

空白を超えて

疾走の追跡者たち

翌日の任務。
蓮は通信機越しに、新田へ指示を飛ばした。

「新田、対象は移動中だ。付近の監視カメラを確認しろ。逃がすなよ」

『了解です。映像をすぐに繋ぎます』

二人はそれぞれの端末に映し出される情報を見つめながら、対象の動きを追い続ける。
街のざわめきを背に、車両がひとつ、ふたつ――そして、黒いSUVが、静かにエンジン音を響かせた。

「対象は黒のSUV。すぐに周囲の交通を調整、追跡に備えろ」

『はい。警察と連携を取ります』

追跡開始の合図とともに、蓮と新田は車に乗り込み、静かに発進した。

「新田、急がず確実に。逃げられたら意味がない」

『わかってます。蓮さん、任せてください』

街の角を曲がり、狭い路地に入り込む黒いSUV。蓮の車も、それを一瞬たりとも逃さずに追いかける。

次の瞬間――

黒煙を吐きながら、黒塗りのSUVが幹線道路へ飛び出し、猛スピードで駆け抜ける。

蓮はすぐさま無線で新田の声を拾う。

『そこ左、カーブです！』

「了解」

ハンドルを切る蓮の動きは鋭く、無駄がない。プロそのものだった。

路肩ギリギリを攻め、時には対向車線すら一瞬で見極めて使う逃走車両。
だが、蓮の公安車両もそのすぐ後ろに張り付き、距離を詰めていく。

『蓮さん、いけます！　奴らはまだ積荷を捨てていないはずです！』

逃走車両が市街地の狭い路地に突入。
辺りに黒煙が立ち込め、視界が一気に曇る。

「新田、迂回ルートを回せ。あいつらを逃がすな」

『了解、公安部隊にも回します！ 歩行者注意、逃走者を包囲しろ！』

新田の無線が緊迫した声で現場を飛び交う。
一斉にサイレンが鳴り響き、増援の公安車両が次々と路地に雪崩れ込んだ。

逃げる黒幕。追う公安。
速度と緊張が交錯する中、蓮はハンドルを握る手に力を込めた。