灰に堕ちるその日まで

エピローグ

再び任務へ

薄暗い部屋の中、蓮と鴉はお互いの目をじっと見つめ合っていた。そっと重ねた手に、世界が二人だけのものになったような錯覚が広がる。

「こんなに近くにいられるなんて…」
蓮の声はいつもの冷静さを失い、柔らかく震えていた。

鴉は微笑みながらも、どこか冷たさを残した目で蓮を見返す。
「…ああ。でも、俺たちには時間がない」

その時、静寂を切り裂くように携帯の通知音が鋭く響いた。
画面には赤い文字で「緊急任務」と表示されている。

「任務があるからな、仕方ないな」
鴉はイラついたように携帯を手に取り、画面を凝視した。

蓮はその横顔を見つめながら、身をピンと引き締める。
「……行くか」

蓮の声には、先ほどの柔らかさは消え、凛とした覚悟が宿っていた。

鴉は軽く頷き、二人は一瞬でプロフェッショナルな表情へと切り替わる。

甘い空気は一瞬で消え、代わりに戦場の冷たく厳しい空気が部屋を包んだ。

「準備はいいか？」
「いつでも」

覚悟を決めた瞳を交わし合い、二人は静かに闇の中へ歩み出した。