灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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空白を超えて

張り込みゼロ地点

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夕方。薄暗くなりかけた路地裏。
蓮と新田は、人通りの少ない商店街の裏通りに身を潜めていた。

「……ここが、例の受け渡し場所か」

「間違いないっす。監視カメラ、ここの死角になる位置で例の売人が三回出入りしてる。買い手は毎回違うが、時間はほぼ同じ」

「同一ルートか。思ったより手慣れてるな」

蓮が淡々と呟く。
その視線の先、古びた建物の階段下に、目的の男がいた。
黒いフードを被り、スマホを弄りながら何かを待っている。足元には小さな白い紙袋。

「よし、行くか。無駄な走りはしたくない」

「了解」

蓮が先に動き、新田が一歩遅れて続く。
だが、こちらの接近に気づいた男が、不自然に体を引いた。

「……やべっ!」

その瞬間、男が走り出した。
左の路地へ、素早く身を翻す。

「おいコラ、逃げんな!」

新田が反射的に叫び、蓮が瞬時に道を読み、先回りする。

狭い道を縫うように、三人の追いかけっこが始まる。
段差、段ボール、配達バイク――街の騒がしさを切り裂いて、足音と呼吸音が響く。

角を曲がった先、男の腕を新田が強引に掴んだ。

「おっと、ストップ」

「離せって!」

「お前さ、逃げ切れると思った?つかアレ、お前が混ぜたのか?“スノウ”」

「……知らねぇ!」

「口悪いな。けどもう終わりだ」

蓮も追いつき、男の背中にピタリと銃を向ける。

「手、ポケットから出せ。抵抗するなら撃つぞ」

男がその声にビクリと反応し、動きを止めた。

新田がさっと男を壁際に押し付け、手際よくポケットの中身を確認する。

「……あーあ。持ってんじゃん。決定打」

取り出したのは、小袋に小分けされた白い粉末。
ラベルも何もない、だが確実に違法なモノだった。

「これは営業停止だな」

「俺はただ、渡してただけで……!」

「知らねーよ。渡してる時点でアウトだっつの。知識足りてないのに仕事すんな」

蓮は周囲を確認し、無線で応援を呼ぶ。

「こいつの身元、しっかり洗っておけ。上と繋がってる可能性は高い」

「了解っす。てか、こういうやつ、すぐチクるっすよ。ビビりだから」

新田が肩をすくめながら言う。

「連行する。あとは車の中で話してもらう」

「おとなしくしとけよ。今ならまだ減刑あるかもな」

そう言いながら、新田が後ろ手に手錠をかける。
男は観念したように、なすがままにされていた。

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