灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

文字の大きさ
118 / 137
交差点の記憶

湾岸地区・旧倉庫群―深夜1時25分

しおりを挟む
非常灯の赤が、壁を血のように染める。
スピーカーからは警告音と共に、無機質な女の声。

「警告。侵入者を確認。全ユニットは戦闘モードに移行。対象の殺害を許可する。」

「……もちろん殺すつもりはねぇ、だがあいつらにはその気がないらしい」

鴉が呟くと同時に、扉の向こうから銃撃音が響く。
鴉がすかさず前に出て、閃光弾を投げ入れる。

バンッ――白光が走り、敵兵の動きが一瞬止まる。

「今だ!」

蓮が飛び込む。
壁を蹴って宙を舞い、敵の背後に着地。素早く関節を極め、腕を捻りながらナイフを奪う。

鴉もスライディングで床を滑り込み、ライフルの台尻で敵の足元を払う。転倒した敵の意識を、ピンポイントの一撃で奪う。

「次、左通路から三人!」

鴉が叫ぶ。

「オレが行く!」

蓮が飛び出し、敵の一人の足を狙って撃つ。
非致死性弾――だが威力は十分。残り二人が振り返る隙に、鴉の精密射撃がそれぞれの肩と腰を貫く。

「制圧、完了」

「早すぎんだよ、バケモンが」

鴉が笑う。蓮も小さく息を吐いた。

──だが、その時。

「侵入者、最深部に接近。コード:グリム発動」

アナウンスが変わる。

ゴォォォ……機械音と共に、通路の奥から重厚な足音が響いてくる。

現れたのは、フルアーマーを纏った特殊兵。
片腕にシールド、もう片方には高圧電撃のランス。
仮拠点を守る最後の防衛装置だ。

「……やっぱいたか、こいつ」

鴉が舌打ち。

「シールドが厄介だな。真正面からじゃ厳しい」

「じゃあ、挟むぞ。オレが囮」

「馬鹿、死ぬ気か」

「大丈夫だって。死なねぇよ。」

にやりと笑い、鴉が突撃。

電撃ランスをかわし、盾に飛び乗る。

蓮はその隙に背後へ回り、電磁パルスを投げ込む

ジジッ……!

機械が一瞬だけ動きを止める。
その刹那、鴉が背中に向かって回し蹴りをした

巨体が崩れ落ち、火花を散らして沈黙した。

「……やるじゃねぇか、相棒」

ふたりは拳を軽くぶつけ合い、再び前を向く。

「情報網まで、あと少し」

「全部暴いてやる。宵宮の本拠地の場所も、狙いも」

赤く染まる通路の奥へ。
ふたりは、躊躇なく踏み込んだ――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

処理中です...