Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 6

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--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 1F
■【偽善者A】ハロウ

奥へ進んでいくこと暫く。
目の前に現れたモノに対して、自分でも分かるくらいに顔を歪めてしまう。

「あー……またこれね。面倒だわ」
「一応周囲の警戒しておくから、今回はマギくんとハロウで開けなー?」
「了解です」

現在私達の目の前に存在しているのは、両脇に紫色の水晶が1つずつ存在する石の扉だった。
これが今の所この【決闘者の墓場】で確認されているギミックの1つ。

両脇の水晶にそれぞれプレイヤーが1人ずつ手を触れる事で、扉を開けることができるというもの。
一応私がソロで挑んた時に1人では開かない事を確認したため、間違ってはいないだろう。
ではそれの何が面倒なのかと言えば。

私とマギが水晶に触れ、石の扉がそれに連動し開きだす。
瞬間、それは起こった。

正解ね・・・……」
「いくよメアリーちゃん、援護任せた!」
『了解(;´Д`)』

石の扉が開きだすと同時、私達の触れていた水晶から甲高い音が辺り一帯へと響きだす。
それと共に、開きだした扉の中からは、複数のスケルトンがこちらへ向かって襲い掛かってきていた。

これが面倒である理由。
扉の中からはスケルトンがある程度……大体2~3パーティほど出現し。
周囲からは、水晶から響く甲高い音によって他のスケルトンたちも寄ってくる。
そして極めつけはと言えば、

「やっぱり中には入れないのね」

中のスケルトンが居なくなるまで、水晶に手を触れたプレイヤーは中に入ることはできないというルールのような何か。
幸い、スケルトンたちはこちらに近づくように動くため、時間さえかかれば手を触れたプレイヤーだけでも対応は可能なのだが……それをやろうとすると、周囲から集まってくるスケルトンも加わって地獄のような有様になる。

逃げればいいのでは?とも思ったのだが。
この警報が発生した扉以外に、奥に進む事が出来る扉は存在せず。
他に同じような両脇に水晶のある扉を見つけたとしても、警報はおろか扉の中からスケルトンが湧いてくる事もない。
その扉の中に入ろうとも、先に進めず行き止まりのみという完全な外れ。

しかもこの警報は、周囲からスケルトンが居なくなるまで続く。
流石に延々と増え続けるわけではなく、最初に呼び寄せられたスケルトンのみを倒せば終わるものの、逆に言えばそれらを倒さない限りは奥に進めないし警報も止まらない。
……運営も面倒なギミックを考えるものね。

嘆息し、いつ何が来てもいいようにハサミを構えていると、周囲からカラカラカラという独特な音が聞こえてくる。
スケルトンが近づいてきている音だ。

「来たわね」
「来ましたね」
「数分かる?」
「大体2パーティくらいですね、僕が確認できるのはそれくらいです」
「十分、こっちもパッパと終わらせましょうか」

ガキン、という音と共に手に持ったハサミを双剣にして。
私とマギは近づいてきていたスケルトンたちを迎え撃つ。
石の扉を背に、これ以上CNVL達の居る中にスケルトンを入れないように。
長い戦いが再度始まった。



スケルトンとの接触を最小限に留め、複数との戦闘を繰り広げる。
数はおおよそ10数体。今もなお、タンク役と思われるスケルトンたちが私へと攻撃を加えようと剣を振るう。
右の剣で攻撃し、左の剣で相手の振るう剣を受け流す。
片手で剣を扱う都合上、まともに攻撃を受けようものならそのまま腕を持っていかれ防御どころではなくなってしまう。

これが双剣の悪いところか、と思いながら。
良いところである手数の多さでそれをカバーするべく、自身の剣を振るう速度だけを上げていく。

剣を。足を。時に相手の武器を使い。
こちらへと近寄らせず、されど遠ざけずに。
あくまで私の戦いやすい間合いを取り続ける。

「支援行きます!融解薬!」
「了解!」

そして、先ほどの広場での戦闘とは違い、今回は私と共に戦う者がいる。
マギの投げたフラスコは、スケルトンたちの密集している地点へと落ちていき、ガラスの割れる音と共に、何かが焼けるような音が聞こえてくる。

彼は最近何かに目覚めたのか、おかしな薬をよく作るようになった。
その中の1つが今使った融解薬。
普段はガラス製のフラスコの中に入れられているそれは、1滴でも肌に触れればたちまちその部位を溶かし始める劇薬だ。
実際に人体実験の被験者となったCNVLがそう言っていたのだから違いないだろう。

ただ、見た目の割にHPは減らないようで。
完全に見かけだけの薬だったはずなのだが……どうにも、スケルトンたちには効果があるように見えているのは何故だろうか。

「お疲れ様です。回復します」
「ありがとう、所であれって?」
「この前見せた融解薬ですよ。あそこまでの効果はなかったはずなんですけど……」
「ってことは、弱点か何かかしら」

こうして暢気に話せる程度には、マギの投げた薬が有効で。
今も尚、薬が掛かったスケルトンたちは苦しむようなモーションを繰り返している。

「ちょっと後で検証してみますか。幸い、ジョークグッズとして沢山在庫だけはあるんで」
「おっけー……ってあぁ、スケルトン溶けたわね。周りも床に飛び散った薬の所為で近づけてないみたいだし……」
「じゃあ追加で投げておきましょうか。こっちに来られても困りますし」

そう言って、彼はインベントリから融解薬の入ったフラスコを複数取り出し、スケルトンたちの前方の地面へと投げつけ、こちらへと来れないようにした。
これでひとまずゆっくりできるだろう。
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