Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 17

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--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 4F
■【偽善者A】ハロウ

この階層を進むうちに、何度かグレーターゾンビと遭遇し戦闘となった。
頭が異常発達している個体は意外とレアものだったらしく、大体の傾向が把握出来てきた。
と言っても、私達の運が悪かったかもしれないのだが。

遭遇したグレーターゾンビ数十体の大体6割から7割ほどが腕。
2割ほどが足。
そして残りの1割が頭。

基本的には腕が異常発達している個体が出現するため、まぁまぁ大変なのだが……それもCNVLとマギの対策によってある程度マシになった。

そんなことを考えながら全員で歩いていると。
腕が異常発達している個体が出現した。

「お、また腕ねぇ」
「よし、じゃあパターン通りに。マギくんお願いー」
「はーい『筋力超強化薬』【散布】」

まずはマギの新規スキルである【散布】。
これは名前からわかる通り、薬を辺り一帯へと撒き散らすスキルだ。
その際薬の効果量が減少したり、味方以外にも無差別で効果を発揮させたりなどデメリットがあるものの……今までマギのみしか使えなかった薬の効果の恩恵を、少しでも受けられるというメリットには代えられない。

今回【散布】によって周囲へ撒き散らされたのはマギ特製『筋力超強化薬』(命名:マギ)。
マギ曰く、「めっちゃくちゃ筋力が強化される薬です」との事。
珍しく説明が雑というか、語彙力が明後日の方向に吹っ飛んでいたのだが……要するに、飛び跳ねたり走ったりするのが普段よりもより力強くなるという薬だ。
他のゲームでいう身体強化と言われるタイプの奴だろう。

「よーし、じゃあ行くぞー」
「ミスったら援護いくから」
「あは、もう何回目だと思ってるんだい?任せてッ!」

CNVLは薬の効果を受けた後に飛び出していく。
いつも以上に早いその速度は、マギの薬以外に彼女の持つ強化スキルも使っているのだろう。
一瞬でグレーターゾンビの懐まで潜り込み、その強化された身体を使って右手にもった包丁を腕ごと腹へと突き入れた。

グレーターゾンビはCNVLの動きを捉えきれないのか、腹へと腕を入れられそれが引き抜かれようとしている所でやっと反応し始め。
CNVLはそれを置いていくかのように、腕を引き抜きグレーターゾンビの後ろへと回る。
その突っ込まれていた腕には、何か赤黒い長いものを持っていて。

「うわぁ、今回は腸持ってきたのね」
「先輩腸っていうかモツが好きですからね」
「そういう問題?」

先程からCNVLがグレーターゾンビと戦闘する場合、高確率で相手の臓器を引き抜いているのだ。
苦手な相手にはかなりショッキングな光景のようで。メアリーは早々にその光景を見る事を諦め、今も明後日の方向を見て口笛を吹いていた。

背後へと回ったCNVLは、何故かその腸を持ったまま。
相手の背中を器用に登っていき、うなじまでたどり着くと。そのまま出刃包丁を突き入れた。
ビクン、とグレーターゾンビの身体が震えつつ、CNVLを捕らえようとしているのか腕を背中側に回そうとしているのだが追いつかず。
そのまま首を落とされ、すぐに光へと変わっていく。

一番最初の戦闘を考えると、本当に早く処理できるようになった。

「お疲れ様。やっぱり一気に落とせば回復とか関係ないのねぇ」
「ありがとう。いやまぁ、こっちの強化具合もあるとは思うけどね。私の強化とマギくん特製の薬のおかげでいつもの数倍の速度は出せるし」
『あ、終わった?(´・ω・)お疲れ様~』
「そういえば、先輩のあの強化状態だと体感時間どうなってるんです?」
「ん?変わらないぜ。周りがゆっくりと動いてるような感じ?ほら映画とかであるだろう?めちゃくちゃ早く動けるキャラの周囲がすごくゆっくり動くみたいな。アレだよアレ」

本当に作業感で倒しているものの。
これに至るまでに何度も何度も試行錯誤を繰り返した結果なのだ。

最初はどこが急所なのか分からず、とりあえず強化されたまま適当に刺したり斬ったりして。
やはり人型なのだから心臓やらが急所だろうと考え直し狙い直したりして。
そんな中、マギのレベルアップによって取得した【散布】によって状況が変わり。
結果として、『戦闘』から今さっきのような『処理』へと変わった。

「でも広いわね、この階層」
「実際、今までで一番広いかな?研究所っぽいんだよねここ。それも割と面白そうな研究してる感じ」
「あ、先輩が見つけた資料ってそういうのだったんですね」
「そうだよ?所謂死者蘇生について研究してるみたい。割とえぐい内容だったから周りに見せてなかったけど読むかい?メアリーちゃんは……あー、うん。読ませないからクロスボウをこっちに構えるのをやめてほしいかな」

CNVLによる、このダンジョンが出来たであろう経緯を聞きながら私達は奥へ奥へと進んでいく。
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