97 / 192
第三章 オンリー・ユー 君だけを
Episode 29
しおりを挟む--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画デンス 第二階層
■【偽善者A】ハロウ
翌日。
私を含めたメアリー以外のパーティメンバーは、第二階層に集まっていた。
恐らくはメアリーもいつも通りにキングス工房の方で作業しているのだろうが、特に用事もないのに行って作業の邪魔になってしまうのはいけないだろう。
「で、とりあえず第二階層に来たけどどうするの?ダンジョンにいくのかしら?」
「そうだねぇ。やっぱり攻略全般で私達の対応力が足りてなさそうだし、3階層まででスケルトン相手に戦闘繰り返すとかどう?」
「いいわね、レベルも上がるだろうし。私も試したいのがあるし」
そう言って私は2つの印章を取り出した。
1つは木で作られた再生の印章。
もう1つは、
「ん、それ鉄かい?」
「えぇ。初心者キットの中にバーナーも入ってるの見つけて。それで加工してみたのよ」
「へぇ。いいじゃないか。……効果も中々。面白いねぇこれ」
鉄で作られた印章。
昨日、CNVL達が来た後に鉄の欠片を使って作成したものだ。
どうせなら、と自分の足りていない攻撃力を上げられるようにとそれに対応する印も彫刻してある。
――――――――――
攻撃の印章
制作者:ハロウ
効果:捺印した対象に対し、ダメージ上昇効果を付与(30~60s)
説明:鉄材によって作られた印章
攻撃を意味する印が彫られており、特殊なインクを用いることで効果を発揮する
――――――――――
「まぁまだ初心者が作れる範囲にあったものだから、効果量は少ないとは思うわ」
「でもハロウには合ってるよね。攻撃力が上がるって事は」
「それだけステータスが上がりやすくなるって事ですからね」
そんなことを話しながら、私達はダンジョン前へとたどり着く。
メアリーが情報を掲示板に流したからか、前に見たよりも多くのプレイヤーが集まっているようには見えたものの、やはり上の【劇場作家の洋館】の前に比べるとその数は少ない。
そんなプレイヤー達に挨拶をされながら、私達は3人でダンジョンへと潜る。
行先は3階。4階にも潜れなくはないものの、あそこにはグレーターゾンビくらいしか存在せず、私達の今回の目的である『戦闘中の対応力を上げる』には相応しくないのだ。
--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 3F
「よし、じゃあギミック部屋行きましょうか。あそこなら結構集まってくるでしょうし」
「いいね、マギくん強化頼める?」
「了解です。【散布】」
マギによって感覚強化系の薬が【散布】されたのか、私の五感が強化される。
そして早速、強化された聴覚にある音が引っ掛かった。
「ん、これこっち来てるわね」
「丁度いいし迎え撃とうか」
現在私達が居るのは、十字路のど真ん中。
階段で降りてこなかったからなのか、ここには転送装置しかなく。それ以外は全て通路になっている。
そんな通路の中の1つから、足音や金属音が聞こえてきているのだ。
私とCNVLはそれぞれの武器を。
マギはといえば、
「あら、爆弾?」
「いえ、調べてたら開放された投擲用フラスコってやつです。投擲した際、中に入ってる薬の効果が上がる優れものですよ」
「成程ねぇ。そのまま設置型とか出てきそうね」
一見すると、ゲームなどで出てきそうな手のひら大の爆弾のようなものを取り出していた。
炯眼によって名称を見てみれば、彼の言う通り『投擲用フラスコ:強酸』と書かれており彼が何をしようとしているのか理解出来た。
私も、と攻撃の印章を取り出しとりあえず武器に捺印してみる。
すると、【HL・スニッパー改】全体が淡い赤色のオーラに包まれた。
「おっ結構カッコいいじゃないか。ハロウ、こっちにもお願い出来る?」
「いいわよー、どうせなら身体にも押してあげるわ」
CNVLの身体と、彼女の持つマグロ包丁と出刃包丁それぞれに捺印する。
「おぉー!!すごいすごい!見てくれマギくん!私凄くない!?」
「凄いです。でもほら、先輩。スケルトンたち来てますよ」
「つれないねぇ。でもいいや!あはッ!」
そんなことをしていたからか、かなり近づいてきていたスケルトン達へと突っ込んでいくCNVLの後ろ姿を見ながら、私はこっそりとマギに近寄って彼の身体にも捺印しておく。
突然赤いオーラに包まれた彼は目を見開いてこちらを見るものの、私はそのままCNVLの援護へと向かうため文句などは聞かなかった。
数は12。
それぞれ4体ごとに固まっているため3パーティほどの混成だろう。
とりあえず素早く自分にも捺印してダメージ上昇効果を付与しつつ、私は近くにいたタワーシールド持ちのスケルトンへ勢いをつけたまま蹴りを放つ。
すると、だ。
今までの戦闘中では聞けなかった、ベゴン!という音と共にタワーシールドごとスケルトンが後方へと吹き飛ばされていく。その後ろに控えていた数体のスケルトンを巻き込んでだ。
「……えぇ、なにこれ」
ちら、と見ればCNVLの方も同じようにダメージが上がりすぎているのか、スパスパと盾やら剣やらを両断している。
楽しそうだ。
……これダメージ上がりすぎ、というかダメージの計算方法がどうなってるのか気になってくるわね。
まるで自分の身体ではないように感じながら、とりあえず襲い掛かってくるスケルトン達を殲滅していった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません
紫楼
ファンタジー
母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。
なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。
さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。
そこから俺の不思議な日々が始まる。
姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。
なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。
十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる