Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 29

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画デンス 第二階層
■【偽善者A】ハロウ

翌日。
私を含めたメアリー以外のパーティメンバーは、第二階層に集まっていた。
恐らくはメアリーもいつも通りにキングス工房の方で作業しているのだろうが、特に用事もないのに行って作業の邪魔になってしまうのはいけないだろう。

「で、とりあえず第二階層に来たけどどうするの?ダンジョンにいくのかしら?」
「そうだねぇ。やっぱり攻略全般で私達の対応力が足りてなさそうだし、3階層まででスケルトン相手に戦闘繰り返すとかどう?」
「いいわね、レベルも上がるだろうし。私も試したいのがあるし」

そう言って私は2つの印章を取り出した。
1つは木で作られた再生の印章。
もう1つは、

「ん、それ鉄かい?」
「えぇ。初心者キットの中にバーナーも入ってるの見つけて。それで加工してみたのよ」
「へぇ。いいじゃないか。……効果も中々。面白いねぇこれ」

鉄で作られた印章。
昨日、CNVL達が来た後に鉄の欠片を使って作成したものだ。
どうせなら、と自分の足りていない攻撃力を上げられるようにとそれに対応する印も彫刻してある。

――――――――――
攻撃の印章
制作者:ハロウ
効果:捺印した対象に対し、ダメージ上昇効果を付与(30~60s)
説明:鉄材によって作られた印章
   攻撃を意味する印が彫られており、特殊なインクを用いることで効果を発揮する
――――――――――

「まぁまだ初心者が作れる範囲にあったものだから、効果量は少ないとは思うわ」
「でもハロウには合ってるよね。攻撃力が上がるって事は」
「それだけステータスが上がりやすくなるって事ですからね」

そんなことを話しながら、私達はダンジョン前へとたどり着く。
メアリーが情報を掲示板に流したからか、前に見たよりも多くのプレイヤーが集まっているようには見えたものの、やはり上の【劇場作家の洋館】の前に比べるとその数は少ない。

そんなプレイヤー達に挨拶をされながら、私達は3人でダンジョンへと潜る。
行先は3階。4階にも潜れなくはないものの、あそこにはグレーターゾンビくらいしか存在せず、私達の今回の目的である『戦闘中の対応力を上げる』には相応しくないのだ。

--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 3F

「よし、じゃあギミック部屋行きましょうか。あそこなら結構集まってくるでしょうし」
「いいね、マギくん強化頼める?」
「了解です。【散布】」

マギによって感覚強化系の薬が【散布】されたのか、私の五感が強化される。
そして早速、強化された聴覚にある音が引っ掛かった。

「ん、これこっち来てるわね」
「丁度いいし迎え撃とうか」

現在私達が居るのは、十字路のど真ん中。
階段で降りてこなかったからなのか、ここには転送装置しかなく。それ以外は全て通路になっている。
そんな通路の中の1つから、足音や金属音が聞こえてきているのだ。

私とCNVLはそれぞれの武器を。
マギはといえば、

「あら、爆弾?」
「いえ、調べてたら開放された投擲用フラスコってやつです。投擲した際、中に入ってる薬の効果が上がる優れものですよ」
「成程ねぇ。そのまま設置型とか出てきそうね」

一見すると、ゲームなどで出てきそうな手のひら大の爆弾のようなものを取り出していた。
炯眼によって名称を見てみれば、彼の言う通り『投擲用フラスコ:強酸』と書かれており彼が何をしようとしているのか理解出来た。

私も、と攻撃の印章を取り出しとりあえず武器に捺印してみる。
すると、【HL・スニッパー改】全体が淡い赤色のオーラに包まれた。

「おっ結構カッコいいじゃないか。ハロウ、こっちにもお願い出来る?」
「いいわよー、どうせなら身体にも押してあげるわ」

CNVLの身体と、彼女の持つマグロ包丁と出刃包丁それぞれに捺印する。

「おぉー!!すごいすごい!見てくれマギくん!私凄くない!?」
「凄いです。でもほら、先輩。スケルトンたち来てますよ」
「つれないねぇ。でもいいや!あはッ!」

そんなことをしていたからか、かなり近づいてきていたスケルトン達へと突っ込んでいくCNVLの後ろ姿を見ながら、私はこっそりとマギに近寄って彼の身体にも捺印しておく。
突然赤いオーラに包まれた彼は目を見開いてこちらを見るものの、私はそのままCNVLの援護へと向かうため文句などは聞かなかった。

数は12。
それぞれ4体ごとに固まっているため3パーティほどの混成だろう。
とりあえず素早く自分にも捺印してダメージ上昇効果を付与しつつ、私は近くにいたタワーシールド持ちのスケルトンへ勢いをつけたまま蹴りを放つ。
すると、だ。

今までの戦闘中では聞けなかった、ベゴン!という音と共にタワーシールドごとスケルトンが後方へと吹き飛ばされていく。その後ろに控えていた数体のスケルトンを巻き込んでだ。

「……えぇ、なにこれ」

ちら、と見ればCNVLの方も同じようにダメージが上がりすぎているのか、スパスパと盾やら剣やらを両断している。
楽しそうだ。

……これダメージ上がりすぎ、というかダメージの計算方法がどうなってるのか気になってくるわね。
まるで自分の身体ではないように感じながら、とりあえず襲い掛かってくるスケルトン達を殲滅していった。
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