Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第五章 月を壊したかぐや姫

Episode 11

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--浮遊監獄都市 カテナ 第四区画 ディエス 第一階層
■【印器師A】ハロウ

目の前から切りかかってくる人型の紙に対し、私は最低限の動きで攻撃を避け、横から双剣によってその身体を切り裂いた。
それと同時、私に向かって複数の紙が空中から襲い掛かってくる。
私がソロならばこの攻撃でデスペナになっていてもおかしくなかっただろう。

「あはッ!【フードレイン】!」

だがそれでも、私は1人で戦っているわけではない。
私の周囲に血肉の雨が降り、飛来する紙を物量で落としていく。

「流石に面倒になってきたわね……」
「確かに。紙じゃあ私も食べられないからなぁ」

現在、私達はどこかからか襲い掛かってくる紙達に襲われていた。
空から、地上から、そして地下から様々な形状の紙が、ディエスへと足を踏み入れた私達に襲い掛かってきたのだ。
一応、戦いながら進むこと自体は不可能ではない。
事実、その速度自体は遅いものの前へ前へと進むこと自体は出来ている。
というか昨日、天使相手に似たような事をしたのだ。ここにいるメンツが出来ないわけがないのだ。

空中からの敵は、発見次第ソーマやメアリーと言った遠距離攻撃が出来る者達が。
それ以外には私達……基本的には前衛が対処を行っている。

対処自体は特に面倒なわけではない。
それこそ、相手は多方面からやってきているものの、紙なのだ。
攻撃性能は高くとも、防御能力はその名の通り。
下手をすればこちらの攻撃を1度当ててしまえば倒れていく。

しかしながら、そんな相手も数がいるとなると話が変わってくる。
継続的に、そして凡そ予想できない位置から破壊力の高い敵が襲ってくる。
肉体的には問題ないだろうが、精神的には参っていくことだろう。
しかもプレイヤーメイドらしきものだからか、倒しても光となって消えていくだけでドロップ品もないのが厳しいところだろう。

人間範疇生物以外から襲われるというのは、うちのアタッカーであるCNVLのコストだけが減っていくことになる。
……攻めてきているメンバーを把握してるって事かしら?いや、それは考えすぎか……?

ソーマがやっていたように、どこかから監視されている可能性。
これを考えたものの、ディエスの環境下でそれが行えるかどうかを考え、首を横に振る。

ネースは高度な技術が発展し、その技術をもってして形作られた区画だ。
それに比べ、ディエスは結局の所……現実をベースにしているため、ソーマ達と似たように監視を付けモニターで逐一監視し……というのは難しいだろう。
それならば何を。そこまで考えた所で、答えへと辿り着いた。
答えならば今も目の前に・・・・居るだろう。

「マギでもソーマでもいい!ディエスの紙を扱う【犯罪者】って何がいる?!」
「はぁ?!これらですよね?神職系統では?!」
「【複製】……ディエスなら、マギの言う通り神職系だろう。確かそのままの名前で【式紙】というスキルを使えたはずだぞ。恐らくこの状況もそのスキルが原因だろうな。……だがそれがどうした?」
「……こいつら、私達の戦闘を通して情報を送ってないかしら?そういう事も出来たりするスキル?」

私の問いに対し、2人は何かを思い出すようにその場で止まり、少ししてから頷く事で肯定する。
つまりは、だ。

「こいつらが居る限り、私達の情報は漏れ続けるってことね……!」
「もしかして他のプレイヤーがここに来なくなったのもこいつらの所為だったりする?」
「あり得るわ!兎に角突破するしかないッ……!」

ディエスに入った当初、プレイヤーから数回ほど襲われたものの。
今では人の姿を探す方が難しい。
恐らくはこの紙……【式紙】だったか。これを操っている者が何かしらの対処を行っているのだろうが、それに掛かる作業量などを考えると……ここにきて私達への警戒度が高すぎるように感じる。

私とソーマ、そしてCNVLと、以前あった決闘イベントの本戦出場者がいるからか?
だが、本当にこれらだけで対応するつもりならば……もっと数を寄こさねばあまり意味がないというのも分かっているだろう。
それとも、CNVLのコストを減らし、戦力減少を目的としているのか。
……最悪、CNVLには私の腕を差し出すとしても、それは本当に最終手段ね……。

『……んん!?ちょっとハロウいい!?(゚д゚)!』
「どうしたのメアリー?」
『重要拠点の方になんか白い人型のモブが攻めてきたって!CNVLの赤いアレみたいな奴!一応スキニットさん達で対処出来てはいるけど、数が増えたらやばいかもって!(;^ω^)』
「……成程ねぇ」

メアリーからの報告に、頭を抱えたくなる気持ちを抑えながら返事をした。
お陰様で敵……ディエス側の目的が分かったので良しとしたい。
あくまでこの【式紙】達は時間稼ぎ用なのだろう。
だからこそ一応はこちらを殺そうと攻撃はしてくるものの、数が足りていない。
まぁ、デンスの方に出現した白い人型のモブの出所がディエスならば、の話だが。

「ソーマ?」
「言っておくが、こちらは何もしていない。こちらはこちらで重要拠点が攻められているという報告も来た」
「……もしかして、白い人型のモブが襲ってきたりとか?」
「……はぁ、そういうことか。一度オリエンスの酔鴉にも連絡してみろ、結果は見えてるがな」

言われた通り、酔鴉に連絡を取れば……返ってきた答えは同じ敵に襲われているというものだった。
つまりは、だ。

「同時に3つの区画に攻撃を仕掛けてるって正気なのかしら」
「正気なんだろう。俺らのように直接乗り込んできた奴らには遅延戦闘を仕掛け、その上で離れた拠点を狙う。誰が考えたかは知らないが、事実出来ているという事は種も仕掛けもあるゲームの仕様上の戦略なんだろう」
「ちなみにダメ元で聞くけれど……こんなのが出来そうな相手は知ってる?」

ソーマは、その言葉に【式紙】を相手しながら鼻で笑う。

「当然だ。ディエスで広範囲、多数のモブの使役を行えると言ったらあのぼっち姫しかいない」
「ぼっち姫……?」
「知らない、か。いやまぁ俺も神酒が仕入れてこなければ知らなかったんだが……まぁいい。名前はアリアドネ。【犯罪者】は分からないが、今起こってる事くらいは出来るくらいには強力なスキル持ちの、ディエスのプレイヤーだ」

推定首謀者と思われるプレイヤーの名前を彼が口に出した瞬間。
【式紙】達の顔と思われる部位が全てソーマの方へと向いた。
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