17 / 40
家
家1
しおりを挟む
涙を拭いながら、空良はこの部屋で唯一の扉に向かう。
出口がこのひとつである以上、来た道を戻らなければならない。
(確か、逃げていた時に、扉を見かけたな)
桜に助けられて逃げたあの時、パニックになっていた空良は、途中の扉に入る余裕が無くて、通り過ぎてしまっていた。
それを思い出して空良はそっと扉を開ける。
長く続く通路を見て、空良は一度頷き、手を握りしめた。
そして、緊張しながら歩き出す。
緩やかにカーブしている通路を早足で進み、扉を探した。
歩き出して一分もかからない程度進むと、前方に扉を見つけ、空良は駆け足になる。
扉は真っ青に塗られていて、やけに目立っているように感じた。
この扉に入れ。
そう訴えかけて来るような、そんなイメージを脳に主張してくる扉を開けていいものかと、空良は少し迷ったが、逃げていた時に見かけた扉はここだけだった。
(もっと戻るべきか? でも、一応この扉の先も確認した方がいい……よな?)
空良はそう考え、扉を開く事を決意し、強く頷く。
そしてノブの無い扉に手をあて、強く押した。
少し重たい扉が開き、その先には薄暗い通路が続いている。
決してまるで見えないというほどの暗さでは無かったが、遠くは暗くて確認できない。
しかし、道は続いている。
(……進んで、みるか)
不安ではあったが、空良は薄暗い通路を歩き始めた。
さっきまでの通路とは、床と壁の質が違うようで、足音が響き、不気味に反響する。
高い位置に空良の手のひら程度しかない、小さな窓が点々とあり、そこから入る光だけが通路を照らす。
自身の足音以外に、音がないかと警戒しながら歩いていると、正面にまた、真っ青な扉が見えた。
薄暗い中でもハッキリと目立つその扉に近付き、扉を開ける。
すると、扉の先には下りの階段が続いていた。
「これって……下の階に繋がっている階段か?」
言葉をこぼし、空良は薄暗い階段を駆け降りる。
階段をくだりきると、そこには茶色をした木製の扉があった。
ドアノブがあり、今まで見てきた扉とは違う雰囲気がある。
この迷宮にある扉の殆んどは、デザインがどこか非現実的な物が多く、まるでファンタジーな漫画やゲームで出てきそうな物だった。
しかし、今、目の前にある扉は、現代の日本でもよく見るような、リアリティのあるデザインになっている。
空良は、その扉を見て、背筋が凍り付くような感覚に襲われた。
(……この、扉って……うちの扉とそっくりじゃないか?)
自分の勘違いか、ただ似ているだけなのか。
そう考えながら扉を見ていると、扉が『がちゃり』と音を立て、ゆっくり開く。
空良の心臓がドクドクと音を上げて、手が震える。
扉の向こうには、見慣れた玄関があり、玄関から見えるリビングへの扉と、二階に上がる階段があった。
「ここは……俺の家?」
生まれた時からずっと見ている自分の家と、全く同じ光景に、空良は狼狽え、額に気持ちの悪い汗が浮かんだ。
出口がこのひとつである以上、来た道を戻らなければならない。
(確か、逃げていた時に、扉を見かけたな)
桜に助けられて逃げたあの時、パニックになっていた空良は、途中の扉に入る余裕が無くて、通り過ぎてしまっていた。
それを思い出して空良はそっと扉を開ける。
長く続く通路を見て、空良は一度頷き、手を握りしめた。
そして、緊張しながら歩き出す。
緩やかにカーブしている通路を早足で進み、扉を探した。
歩き出して一分もかからない程度進むと、前方に扉を見つけ、空良は駆け足になる。
扉は真っ青に塗られていて、やけに目立っているように感じた。
この扉に入れ。
そう訴えかけて来るような、そんなイメージを脳に主張してくる扉を開けていいものかと、空良は少し迷ったが、逃げていた時に見かけた扉はここだけだった。
(もっと戻るべきか? でも、一応この扉の先も確認した方がいい……よな?)
空良はそう考え、扉を開く事を決意し、強く頷く。
そしてノブの無い扉に手をあて、強く押した。
少し重たい扉が開き、その先には薄暗い通路が続いている。
決してまるで見えないというほどの暗さでは無かったが、遠くは暗くて確認できない。
しかし、道は続いている。
(……進んで、みるか)
不安ではあったが、空良は薄暗い通路を歩き始めた。
さっきまでの通路とは、床と壁の質が違うようで、足音が響き、不気味に反響する。
高い位置に空良の手のひら程度しかない、小さな窓が点々とあり、そこから入る光だけが通路を照らす。
自身の足音以外に、音がないかと警戒しながら歩いていると、正面にまた、真っ青な扉が見えた。
薄暗い中でもハッキリと目立つその扉に近付き、扉を開ける。
すると、扉の先には下りの階段が続いていた。
「これって……下の階に繋がっている階段か?」
言葉をこぼし、空良は薄暗い階段を駆け降りる。
階段をくだりきると、そこには茶色をした木製の扉があった。
ドアノブがあり、今まで見てきた扉とは違う雰囲気がある。
この迷宮にある扉の殆んどは、デザインがどこか非現実的な物が多く、まるでファンタジーな漫画やゲームで出てきそうな物だった。
しかし、今、目の前にある扉は、現代の日本でもよく見るような、リアリティのあるデザインになっている。
空良は、その扉を見て、背筋が凍り付くような感覚に襲われた。
(……この、扉って……うちの扉とそっくりじゃないか?)
自分の勘違いか、ただ似ているだけなのか。
そう考えながら扉を見ていると、扉が『がちゃり』と音を立て、ゆっくり開く。
空良の心臓がドクドクと音を上げて、手が震える。
扉の向こうには、見慣れた玄関があり、玄関から見えるリビングへの扉と、二階に上がる階段があった。
「ここは……俺の家?」
生まれた時からずっと見ている自分の家と、全く同じ光景に、空良は狼狽え、額に気持ちの悪い汗が浮かんだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる