浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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カモナベちゃん

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「失礼いたします」
そういって時間の少し前に訪ねてきた若者がいた。
「どうぞあちらへ」
水芭(みずば)は奥の席を指定すると。
「久しぶり」
「大きくなったな、前に会ったの小学生ぐらいか」
「そうですね、もうそんなになると、しかし、この度はあのアホが大変ご迷惑をおかけしました」
瀬旭(せきょく)と覆木(おおうき)の前で土下座をしたが。
「待って、待って、君は悪くないんだし」
「そうそう、あいつが悪い、だから頭をあげてちょうだいな」
「…本当にすいませんでした」
そういって頭をあげた。
「で、そっちこそ大変だったんでしょ?」
「本来は、10年ぐらい修行してから代替りするっていう話はこっちも聞いてたからね」
「そのつもりだったんですがね、それでもこの世界甘くないだろうからって先に資格だけは取れるようにとか考えてたんですよ、フラれて良かったと言うか」
「えっ?あれってそんな理由なの?」
「はい、お恥ずかしい話ですが、付き合っている彼女がいたんですよね、それもあって、普通に就職もしつつも、兼業でこちらの手伝いをして、やがては…って考えていたんですが…」
別れましょ。
「こっちの世界の説明はやんわりとしかしてなかったんですが、それでもね、いいと…」
「水芭、なんか飲み物とツマめるもの持ってきて」
「わかりました」
「一般世界の高収入、みんながよく知っている企業への内定が取れた人にするそうです」
「…そうか」
「それはあるけども、ただそれだともう一個気を付けなきゃいけないことあるから、いい?稼いでいる話はそっち側にはしないことだよ」
「ああ、それはいいますよね、やっぱりあるんですか?」
「あるよ、事務所方面だと、向こうにはカモネギというか、カモが鍋一式背負って、お腹減ってるときに訪ねてきましたってことで、そこから俺らの中ではカモナベちゃんで、あっ、あの子かってわかるぐらいだし」
「でもその子はちゃんとというか、不思議なことに、そのカモネギ、カモナベちゃんの名付けた奴と付き合って結婚までして、今も仲いいよ」
「これで仲悪かったら、俺らが許してないでしょ」
「まぁね、うちのbarに来れるって、やっぱり家族ではないけども、身内に近いってことだから」
「本当に重ね重ね…」
「君は悪くない、何度もいっているけども、それはやらかしたあいつが悪い」
「あの、それで螺殻(らがら)さんというかたは?」
「今はいない、さすがにあの件はミツも絡んでいるし」
「だからいない時にまず来てもらったの」
「話聞いたとき驚きましたけどもね、うちのアホが、螺殻さん口説いたと」
以前に出入り禁止になった、妻子もいるのにミツをここで口説いた人間の息子が彼の立場であった。
「俺と螺殻さん年齢、そんなに変わらないんですけども、ね…」
出入り禁止になったあと、家族宛に書面が届き、家族会議が行われた。
「本家の人たちまで来ましたからね、それで改めて調べて、強制的に隠居と言うか、追放にするとして、誰を代わりにってことで、資格、KCJの戦闘許可証があったんで俺でした、でなかったら、本家側から誰かを呼んで据えるしかないから、そこはそこで揉めていたでしょうね」
「今は人手不足だから、正直、何かしても甘い裁定になることはあるからね」
「そういう意味では跡継ぎは大事だよね、うちは今のところはミツが俺らの技術は継ぐけどもね、そこからなんだよな~」
「未来のことを考えすぎてもダメでしょ、現実的に考えなきゃ」
「そうなんだけどもね」
「その件でもこちらからお願いと言うか、お詫びというか、私が穴を埋めれるとは思ってはいませんが、出来る限りのことはしたいと、これは本家の方にも話しましたし、その方がいいと許可は取りました」
「えっ?いいの?」
「このままでは、うちは滅ぶだけですから」
「それはうれしいけどもね、ほら、こっちも手は足りないとは思っていたからね」
「サメ達にも協力を仰ごうか、あっ、サメは大丈夫?」
「サメ?」
「そこからか」
覆木が指笛で人間には聞こえない音を出すと、サッと「メッ」が現れた。
「こちらがサメさん、ええっとね、種族は河川ザメ、群れとしては忍ジャメに属してます」
「はじめまして」
「メッ」
「今年から街の治安の協力、嘱託契約が決まって、まだ契約の前だけども、治安に一役かっていたりするんだよ」
それ故に街中にはサメのファンが増えたと言う。
「忍ジャメを呼ぶイベントをやってくれとか、そんな依頼も来てるんだそうだよ」
「メッ」
覆木さん、嫌ですわ、忍ジャメは影の存在ですよ。
「奥ゆかしいんだ」
「えっ?サメの言葉わかるんですか?」
彼には「メッ」とさか聞こえない。
「そう?彼女は結構感情が豊かな方だとは思うよ」
「メッ」
何かあったらまたお呼びください。
「あの子、照れていたよ」
「そう?俺は事実をいったまでだから」
(これがモテるということなんだろうか)
この人達には敵わないな。
「話はわかった、それでね、俺たちからもお願いがあるの」
「何でも、いえ、ご期待にはそえないかもしれませんが、出来る限りの飲みますよ」
「ミツには君の招待を言わないこと」
「えっ?」
「嫌だって、話しちゃったら、君の顔を見るたびにあの時のことを思い出すからね」
「ああ、そこまでは、すいません、考えてませんでした」
「君は悪くないが、それを飲んでくれたら、これから頑張ってくれたらいい」
「はい、でも、その俺でも出来る仕事に関してはバンバン回してくれたら嬉しいです、もしもそうでないなら、資格の勉強や歴史の講義を受けたいと思ってて」
「歴史って…えっ、まさかあいつ、そこら辺サボってた」
「そうなんですよ、途切れているってもう言っていいぐらいですよ」
その後、彼は水芭から用意してもらったティーセットを駆け足で口に入れてから、次の予定のために忙しそうにしていた。
「それであの子はどうなの?」
「悪いやつじゃないよ」
「イメージで何でも測らないでくださいよ、それで痛め目を見たのをお忘れですか?」
そういって水芭が別に資料を持ってくる。
ペラッ
「彼、本当にこれから大変なんだね」
「どれどれ、うわ、俺らが仕事を回した方がまだ楽なんだな、これだと」
「そうなんだよね、だから迷うよね」
「これなら廃業するか、先程も言ってた本家の方に任せた方がいいとは思いますよ」
「水芭、あの辺のしがらみはそうもいってられないんだよ」
「それは…わかりますが」
「出来ればうちから回してあげて、忍ジャメのフォローがあればおそらく休憩時間も取ることが出来るから」
「はい、ではそのように、でも途中で諦めてしまうかもしれませんが?」
「それを咎めたりはしないよ、彼は今でもよくやっているし、普通はこの選択でさえしないからね、ちゃんとわかってて選択しているし、それなのに途中で諦めたからといって、それが悪いとは俺は言わないよ」
「それもそうだな」
「はいはい、もうすぐミツさんが来ますから、そんな顔のままでいないでください」
「こういう、しんみりしているのもいいと思うんだけどもな」
「はいはい」
「水芭は辛辣だと思うわ」
「でも水芭のいってることも確かだし、暗い顔して仕事しちゃダメだ、みんな何か背負ってるんだからさ、それを重く感じさせちゃダメなのさ」
「そうだね、じゃあ、今日もがんばりましょうか」
barの開店時間を告げる照明がその時灯った。
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