浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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玉ねぎのピクルスとカリカリベーコン

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「よーし、今日は腰木(こしぎ)さんがそばでも作っちゃうよ!秋澄(あきすみ)もそれでいいか?」
「良いんですか?ではお願いします」
「Ok!任せておけ」
腰木はそばに対しての精神統一を始めている、これを邪魔してはいけない。
「秋澄さん、ちょっと手伝ってください」
「あっ、はい、わかりました」
そんな仕事をこなしていたら、途中連絡をもらう。
「あっ、秋澄さんお久しぶりです、今年も収穫期が来ましたので、ご連絡を差し上げました」
以前の修行先でお世話になったところからの電話であった。
「今年の出来はどうですか?」
「暑さもありますし、雨も多かったので、キノコがですね」
「そうでしたか…それでは注文なんですが、よろしいでしょうか?」
いつもの分より一件、注文を増やした。

「伽羅磁(きゃらじ)さん」
「はい、なんでしょうか?」
「お荷物が届いておりますよ」
「わかりました」
誰からだろうと送り主を見ると。
「どうかしました?」
「いえ、なんでもありませんよ」
まるでなんでもない顔をしたのだ。
品名はキノコご飯、栗ご飯パックとある。
炊き込んで食べるやつなのかなと、かさばるが箱のまま持ち帰ることにした。
ピッ
自宅に戻ると、シャドウスワローは伸びをするように影から出てきた。
そんな様子を見ながら開封をすると。
「俺の面倒くさがりなところも、すごくよくわかってる」
そのままでも美味しく食べれますが、温めるとより一層香り高くなります。常温で長期保存可能ご飯である。
ピッ
ここでも浸ったが、シャドウスワローの一鳴きで我にかえる。
するとそこにメッセージが届く。
「荷物は届きましたでしょうか?私の修行先で大変よくしてもらった所の名物です。ご飯だけじゃなくて、野菜も合わせて食べてください」
「はーい」
メッセージなのに、声に出して返事した。伽羅磁の心に、いかに秋澄がウエイトを占めているのかよくわかる。
シャドウスワローがまだなのかな?という顔をしている、ちゃんと待てる子ではあるが、やはりその顔をしてしまう。
「ごめん、ごめん、今準備するからね」
パックそのまま温めて、チン!
袋を開くと。
「キノコっていってたけども、松茸だとは思わなかったぞ」
スプーンでご飯の塊を小さく作って、シャドウスワローに盛り付ける。
でもまずは一口分を食べさせてあげると、目を少し大きくして固まってから、飲み込んだ。
「そんなに美味しいのか、まあ、これだけ香りが高いなら…うわ…松茸じゃん」
食べて思わず素も出ちゃう、そして言われた通りに野菜を、簡単に汁物にしてから合わせて食べた。


「そば出来たぞ」
腰木はその場にいた人たち分のそばをこねて、切り揃えてくれた。
そしてこれから湯がくのだが。
「このそばはうちの師匠譲りなんだがな、師匠がいるうちは俺は作ることはできないから、でもさ、作りたくなるときっていうのはあるんだが、一人だとな」
だから食べてくれる人たちが必要なのである。
「じゃあ、なんで蕎麦を食べようかな…って秋澄さん?それはなんでしょ?」
「玉ねぎのピクルスとカリカリベーコン、そして黒胡椒ですが?」
「お前、まさか俺の蕎麦にそれを合わせようと思っているのか!…やるじゃえねか」
「ふっ…それはあなたもね!」
そこで二人して笑うタイミングが同じなので、やはりコンビをそこそこ長く続けているだけのことはある。
もちろん腰木は蕎麦つゆや薬味も用意はしていた。
「失礼」
そういってまずは秋澄が蕎麦だけ食べてから、こんなものかなと、その蕎麦にさらに合うように微調整を加える。
玉ねぎはみじん切りに、ベーコンはちょっと大きめに、黒胡椒の分量も蕎麦を引き立てるように調整し。
「腰木さん」
そういって腰木さんに味の確認を頼む。
「んっ…やっぱりこの辺は旨いな、前にも作った時に、ニンニクをすりつぶすを粒で食べるに変えたときも、家ですりつぶして試したんだけどもさ、やっぱりあの時の味付けは粒なんだよ」
「あれね、味噌使ってるからさ、そうなると、噛んだときに、ニンニクと合う方が食べ応えが違うんだよね」
KCJは意外とみんな食道楽というか、食べることしか楽しみがなくなるとかの状態になりがちのため、苦肉の策でこうなっていくか、全く食に興味がなくなるの二通りに別れがちである。
なお、生存確率はだいたい同じぐらいだが…

「なんか急に職員が作りたくなった時にも許してくれるのは、KCJだなって思いますよ」
もちろん最初はなんで蕎麦に、カレー、砂糖どばっと菓子なのか、把握しきれなかったが、作ろうとする職員が、その直前にどんな仕事をしてきたのか調査すると。
「あれは当人なりのストレス解消法なので、材料費も出しますから、許可もします」
職員たちの衝動的な調理は認められることになった。
そう、だから蕎麦を作る少し前の腰木と秋澄は…

「そんなことならな、やらない方が何百倍もマシだっていうことがお前らわからないのかよ」
腰木は怒り。
「ごめんなさい、間に合わなくて」
秋澄はとても悲しんだ。

報告書には、森羅万象と人が結ぶべき儀式の失敗、そう書かれており。
「来年から大変なことになるぞ」
「そうですね。こういう内容ならばやらなければ良かったのに」
「早く戻るぞ」
「ええ、そうしましょう」
許容範囲が広い二人がここまで言うようなことがあったのだ。


あなたはこんなところで亡くなる人ではなかった。

「秋澄、お前落ち込んでいるか?」
「次は間に合わせます」
「いいねぇ、その調子だ」
この二人は自分の苦手なところを相手に補ってもらえるタイプのコンビであった。

まあ、だからこそ、伽羅磁は腰木のことがとってもとっても気に入らない。
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