浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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水筒ちょっと大きかったね

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本日は連休最終日、帰省し、明日から仕事だという人々が多いであろうということを予想し。
「モーニング営業します」
大将のお店からのお知らせです。
モーニングメニューは、卵かけとトロたまの二種類。
「大将のご飯が恋しくて朝から来ちゃいましよ」
「それじゃあ、お腹いっぱい食べていってよ、どっちにする?」
「卵かけで」
卵かけなので、まあ、定番のものが出てくるのだろうなと思ったところ。
ご飯の上に乗せられた卵というのは、卵の天ぷらであった。
「そちらのお出汁でどうぞ」
卵を割ると、半熟の黄身がご飯に流れを作る、そこに出汁をかけると…あっ、これは天ぷらにして正解だ、衣がいい感じにアクセントになっている。
汁ものは野菜多めになっており、これは卵かけとは名前がつくが、大変工夫をこらされた料理だとわかる。
残念なのは、注文してない方のメニューのトロたまが気になることだ。
「お腹いっぱいで注文できませんが、トロたまってどういう料理なんですか?」
「あぁ、これね、元々病気の人のために作られた料理なんだ、その人は白身は出来れば食べない方がいいっていう体質で」
アレルギーかな?
「なんかそういうのが大人になってからわかったみたいで、それまでは卵かけご飯とか家でも食べていたんだけども、食べなくなったって」
白身に含まれている成分その人にとっては阻害してしまう、加熱処理すると問題はないのだが、やはりそういうことがあってあまり食べないようにしているようだ。
「だからネギ入りの玉子焼をご飯の上にのせて、トロミは片栗粉で作ってたの」
そのお客さんは食べた後に、料理ってスゴいですねって感想を大将に残してくれた。
「抱えていたものがあったんだろうね、もしかしたらこれからもっと食べれないものが増えるんじゃないかとかさ」
「俺は特にそういうのはないけども、誰だってそうなることは考えられますからね」
「そうだね、知り合いに病院とか、食事制限のための食事を仕事にしている人は多いけども、今まで食べていたものが食べれなくなるというのは、想像以上に苦しい、ストレスがあるんだなって思う」
その食事制限をやめてしまう人も多いという。
「うちのお店のアカウントを見てくれていると思うけども、あんまり来られない人とかでもね、楽しみにしてくれている人がいるんだよ」
もう病気で好きなものは食べれないんだけどもね、大将さんのお店はいつも楽しそうだね。
「俺ってあんまりしゃべるのとか上手くないから、美味しいものさえ作っていればお客さんは来てくれるって、だからあんまりそういう発信はよくわからなくてさ」
大将さんはね、本当にお料理が上手なのよね、昨日はこどもの日だったでしょ?鯉のぼりのお菓子、ちびっこのお客さんにサービスしているのを見たらね、うちの息子の小さいときのことを思い出しちゃってね。
「その息子さんから、話を聞いたら俺泣きそうになった」
病気で息子さんが息子さんだとわからないらしく、そのお母さんの中では、息子さんはずっと小さいときのままなのである。
お父さんと一緒にお出かけしたね、水筒ちょっと大きかったね。
でもすぐにちょうどよくなると思ったのよ。
あの時はとっても天気が良かったね。
「やだ~そういうの、泣いちゃうじゃないですか」
「うん、俺もその話を聞いたら泣いちゃった。うちのアカウントってそんなに見ている人いないんだけども、そういうお客さんがいるから、奥さんとも話してできるだけ長くやっていこうと思って」
「それは無理してはほしくはないけども、ずっとやってほしい」
「飲食店というのは、私はまだまだわからないことがたくさんあるんだけども、あの時は人生というのが見えた感じだった」
考えられますからね」
「でもさっきも出たけども、無理はしないでほしい、そこで体を壊しちゃったら俺は泣いちゃうよ」
「それじゃあ、連休も終わるから、今日の夜は消化に良いもの作ってもらおうかしら」
「そりゃあ、もう喜んで」
夜は少し早仕舞い、大将が自宅で二人分の食事を作っている最中、奥さんは素人なりにブログの研究などをしていた。
職人気質の大将からすると、その打ち込む姿勢というのは惚れ直すには十分だったという。
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