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第七話
しおりを挟む「クロ…!お前、怪我してるのか…!?」
『クゥン…』
体毛が黒いクロの怪我に、俺はすぐに気づいてやれなかったようだ。
「すまんクロ…ええと…家の中に治療道具が…あ…」
家の中へ戻ろうとした俺は、はたと思い出す。たった今、『回復スキル』を手に入れたばかりだったことに。
「使ってみない手は…ないよな…」
この際なので、俺は回復スキルを実際に試してみることにした。
もしゲームみたいに怪我の治療が一瞬でできるのだとしたら…それはとんでもないことだ。
モンスターの出現したこの地上を生き抜くのに大いに役立ってくれること請け合いだろう。
試してみる価値はある。
「ええと…どうすればいいんだ?」
回復スキルを使ってみる。
そう決めたはいいものの、俺はどうしていいかわからずに戸惑う。
「ゲームや漫画だと…スキル名を唱えるのが多いよな…やってみるか…」
オーソドックスなのは、やはり手を翳すなどしてスキル名を叫ぶやり方か。
かなり恥ずかしいが、やるしかないだろう。
「か、かい…くっ…これ結構恥ずかしいな…」
いざやってみようとすると、ものすごく恥ずかしくて俺は躊躇ってしまう。
「誰もいないよな…」
こんな時だってのに、俺は思わず周囲を見渡して誰もみていないことを確認してしまった。
幸いなことに、周囲に人の気配はない。
「よ、よし…やるぞ…か、回復!!!」
羞恥心を押し殺し、俺はクロの怪我の部分に手を向けてスキル名を叫んだ。
次の瞬間。
「おお…っ!?」
パァアアアアアと俺の手のひらが光が出て、クロの怪我を包み込んだ。
俺が驚きに目を見開く中、光はすぐに収まり、クロの怪我は一瞬にして完治してしまった。
「す、すげぇえええ!!!」
思わず興奮した声を出す。
クロの怪我の部位を手で確認してみるが、完全に治っていた。
『ワンッ!!ワンワンッ!』
クロが俺の元を離れて元気いっぱいに庭の中を走り出した。
もう少しも痛がる様子はなく、傷は完治してしまったようだ。
「すげぇ…まじかよ…」
本当にゲームの世界に迷い込んだみたいだと、俺はそんな感想を抱いたのだった。
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