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第一章
第二十五話
しおりを挟む俺とソフィアは、捉えた男を担いで宿の部屋へと戻ってきた。
「バインド・トラップ!」
「イッテェよ!?」
念のため、拘束スキルを重ねがけした男を椅子に座らせて、尋問を開始した。
「お前らは何者だ?なぜ俺たちを襲ったんだ?」
「…」
「俺たちはまだこの都市に来て日が浅い。誰かに恨まれるようなことをしたかな?」
「…」
「雇われたんだろ?お前ら。依頼人は大体検討がついている。本当のことを喋ってくれ。そうすれば解放してやってもいい」
「…」
男はダンマリを決め込んでいた。
「ど、どうしましょうアレン様。この男、喋りそうにありませんよ?」
ソフィアがこそこそと耳打ちしてくる。
「そうだなぁ…どうしようか…」
「彼らは『漆黒の翼』に雇われた人間なのでしょうか?ライルさんが言っていた暗殺ギルドの人間なのでしょうか?」
「多分そうだと思うんだが…しかし、確証が欲しいな」
俺はちょっとした交渉を男に持ちかけることにした。
「なぁ、取引をしないか?」
「…」
男が初めて顔を上げた。
「俺たちにはお前が何者で誰に雇われたのか、大体検討がついている。だが確証が欲しい。もし雇い主の名前を教えてくれるのなら、お礼をした上で解放してあげてもいい」
「お礼?」
「ソフィア。お金を持ってきてくれ」
「え…あ、はいっ!!」
ソフィアが急いで大きな皮袋を持ってきた。
そこには、俺たちが今までに稼いだたくさんの金貨が入っている。
俺が袋の中を見せると、男が目の色を変えた。
「どうだろう。依頼人の名前を教えてくれないか?もし教えてくれたら、これを全てお前にあげようと思うんだが」
「…」
「うーん、だめか?どちらが賢い選択は分かりきってると思うんだがなぁ。このまま何も喋らずに表に出されて罪を裁かれるか、それとも依頼人のことを喋ってこの金貨を受け取って解放されるか…どっちにする?」
「…本当に依頼人の名前を喋ったら、その金貨をくれるってのかよ?」
初めて男が口を開いた。
俺は頷く。
「ああ、全てお前にやるよ」
「…」
男は明らかに葛藤していた。
俺は静かに男の答えを待った。
やがて、男が口を開く。
「いいぜ。乗ってやるよ」
不適な笑みとともにそう言った。
「よし。じゃあ、まず依頼人の名前を」
「ただし、条件がある」
男は俺の言葉を遮って言った。
「…なんだ?」
「まずはこの拘束を解け。話はそれからだ」
「…」
俺は何か企みがあるんじゃないかと、男の表情を伺った。
しかし、何も読み取ることは出来ない。
一応ボディーチェックはしたが、まだ何かを隠し持っている可能性も十分に考えられる。
言われるがままに拘束を解くのは危険だ。
俺がためらっていると、男が不気味に笑った。
「安心しろ。襲いかかったりはしないさ。あんたの腕はよくわかってる。俺が何か怪しい動きをしたら、スキルを使えばいいだろう」
「…」
殺し屋のいうことだったが、それもそうかとも思った。
俺はスキルの拘束を解いた。
「ふぅ…」
男が立ち上がる。
「うぅ…アレン様…」
俺は不安がるソフィアを背に庇いながら、男に尋ねる。
「依頼人の名前は?」
「お察しの通り『漆黒の翼』だ」
「…っ…やはりそうか…!」
「これで満足だろ?じゃ、約束通り、金を渡してもらおうか」
「…ああ、いいぜ」
俺は男に皮袋を手渡そうと前進する。
「止まれっ!!」
男が怒鳴った。
「それ以上近づくな。投げてよこせ」
「…わかったよ」
俺は金貨の入った皮袋を男に投げてよこす。
だが、皮袋が俺の手を離れるのと同時、男は踵を返して、走り出した。
そのまま窓に向かって飛び蹴りをかます。
パリィイイインン!!
ガラスを蹴破った男の体が、暗闇の向こうに消えた。
「あ、アレン様!?」
「最初からそのつもりだったようだな」
金貨の皮袋を投げたタイミングなら俺の隙をつけると思ったんだろう。
悔しいがしてやられた。
俺は、実を言うと男に金貨を渡すつもりも解放するつもりもなかったのだ。
「ま、依頼人の名前を聞き出せただけでもよしとするか」
「やっぱり『漆黒の翼』の仕業だったんですね…どうしましょう?」
ソフィアが割れた窓を見ながら不安げに呟いた。
「そうだなぁ…とりあえず、明日にでもアレクシアさんに相談してみよう」
「…そうですね」
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