『無能』と追放された補助専門魔法使い【リミッター解除】で超覚醒し最弱から最強へ至る〜チートスキル?いいえ、補助魔法です〜

亜界 ハル

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装備を整え、仲間を集める!

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 『城塞都市ジェノバース』へ向かうか……大陸最大の『王都ラシントン』に次ぐ広さを誇る大都市だ。
 
 ここからだと王都の方が近いが、あそこはザッカス達が所属する構成員千名以上の超大型ギルド『カンパニー』の総本部があるからな……せっかくクソ野郎達と別れられたのに、また恐喝暴行される日々はゴメンだ。

 当面の目標はザッカス達みたいな奴等に絡まれても撃退できる強さを手に入れる事としよう。
 商業も盛んで、仕事クエストも豊富であろうジェノバースで装備を整えて、仲間を集め……パーティを結成する。

 仕事が軌道に乗れば、孤児院への仕送りだって出来る……立派な施設を建て直してシスターマリアを喜ばせてあげるという幼い頃からの夢……その第一歩に、ようやく踏み出せるかもしれない……よし、頑張るぞ!

♦︎

 運良く、街道を通りかかったジェノバース行きの馬車に乗せてもらう事が出来た。

 揺れる荷車の中で、師匠が最後に言った『大魔王』という言葉を思い出していた。
 その昔、この世界は〝終末の災禍ラグナレク〟により1度、滅んでいて……それを起こしたのは魔王を超えし『大魔王』である……と言う話がある。
 この話は正確な文献も残っておらず、空想家の描いた物語として伝わっていて……いわゆる、御伽話だ。この世界に存在するはずの無い、勇者や魔王が登場する創作小説の1つ。

 もしも……それらが、全て真実だとしたら……師匠は世界を滅ぼした張本人……?

 それは無い。絶対に無い。僕を命懸けで守ってくれた人……僕を信じて導いてくれた、尊敬すべき人だ。
 きっと『大魔導』と言い間違えたのだろう。次に会った時に、再び聞いてみよう。……再会してガッカリされない様に師匠の教えを活かし、『努力と研鑽の積み重ね』をしていかなければ。

♦︎

 ─『城塞都市ジェノバース』 主要区 正門広場

 城塞都市の名に恥じぬ、豪壮かつ分厚く重厚な城壁を抜け街の中へ入る。

 早速、素材換金所に向かいガラヒゴ山の成果を金に換えたところ……なんと合計で25万G!
 『カンパニー』で働いていた頃の1ヶ月の累計報酬より、ずっと多い。しかも、当時はザッカス達に搾取されていたので手取りは……更に、更に、少なかった。

 これだけの大金を持ったのは初めてだ……周りの視線が全て僕の金を狙ってるのではないかと思えて、恐ろしい。
 ……いや、違うな。血が滲んだ僕の服を見てるのだ。入り口から感じていた皆の視線は、僕の悲惨な装備の所為だったか……まずは、装備を新調しよう。

♦︎

 ─武具店 『マッソーよろず鍛治堂』

 今まで着ていたボロボロの防具を全て破棄してもらい、魔術士用の装衣を新調した。
 動きやすく、軽くて丈夫な布と皮を使った上下の服とブーツ、そしてメインはフード付きの術士用ローブ。
 モンスターの素材を数種類混合した繊維を使用する事により防御力も有りつつ、微小ながら魔法抵抗力と様々な耐性が備わっているという性能の高さ。

 そして何より見た目が良い……この全身を覆う様が魔術士感を演出している。
 お値段……合計7万G。ここまでの自己投資は初めてだが良い買い物をしたと思う。

「まいどありっ! 魔術士のあんちゃん、ついでに杖も新調したらどうだい?」

 筋肉マッチョな店員さんにセールストークをされる。……うーん。確かに僕の杖はボロいんだが、店に置いてある杖は大体が各種属性向けに作られていて、精霊元素の融和率を上げるものばかりだから『属性無し』の僕には無用の長物なんだよな……。

 1つ、目に留まった物があった。鉄で出来た無骨な棒……手にとってみるとズッシリとした重さを感じる、けれど今までの杖同様、手に馴染むし武器としては良さそうだ。

「じゃ、コレ買います」

「おいおい、あんちゃん。そりゃ鍛錬棒ってやつで魔術士用じゃねぇんだが良いのかい?」

「毎日鍛えるつもりなので、ちょうど良いですよ。敵に近づかれても戦える魔術士目指してますから」

「……アンタ、気に入ったぜ。最近のナヨっちい魔術士達とは違うみたいだな。その鍛錬棒は安くしといてやるよ」

「え、ありがとうございます!……それと、店員さん……良い筋肉してますよね。なにかトレーニングを?」

「おう、よくぞ聞いてくれた! 僕流のトレーニング方法があってよ、あと食事にも気を遣って──」

 筋トレ初心者の僕には嬉しい情報盛り沢山の筋肉談義や雑談に花が咲いた。

「アライズさんよ、また来てくれよな。そん時には、上級魔術士用のキレッキレな杖を用意しとくからよ」

「ありがとうございますマッソーさん! また来ます!」

 笑顔で鍛治堂を後にし、次は雑貨屋をいくつか見て回り……安価なポーションが作れる『初心者用調合セット』と、野営用道具に、ちょっとした食材……あとはポーションをいくつか購入した。師匠から頂いたバッグのお陰でスッキリと移動できるが中身の重さは据え置きだ。なので……。

「【筋力強化パンプアップ】」

 補助魔法を使えば軽々持てる。……いずれは魔法に頼らずとも大丈夫な様にマッソーさん直伝トレーニングで鍛えていこう。
 
 色々買った結果、残り財産は11万G。本当は採取調合に重宝する『植物図鑑』も欲しかったのだが…。値が10万Gだったので諦めた。
 この先、仲間を『雇う』可能性も充分あるから手持ちの金には余裕を持ちたいからな。という事で仕事と仲間を求めて酒場へ向かう。

♦︎

 ─クエスト斡旋所兼酒場 『煌めき亭』

 ジェノバースの酒場には初めて来たが、王都と変わらないくらい活気があるな。
 僕は自分の能力に見合った仕事と仲間を探す為、総合窓口の受付嬢さんに話しかけた。

「煌めき亭へ、ようこそ! 御用件をどうぞ!」

 ハキハキと元気よく挨拶してくれる、大きな丸眼鏡と垂れた三つ編みがチャームポイントの可愛らしい受付嬢さんだ。何となくだが新人さんな気がする。

「魔術士のアライズと言います。自分のランクに合った仲間を斡旋して欲しいのですが……」

「かしこまりました! では、『メンバーカード』をお預かりしますね!」

 持っているメンバーカードを受付嬢さんに渡す。クエスト仲介組合から発行されるこのカードには、今まで自分が成した成績や所属するギルドが登録されている仕組みがある。
 クエスト仲介業者達は【パーソナル】というスキルを持っており、カードを媒介として情報の書き込みと読み取りを行う事が出来るのだ。

「あ……あの……申し訳ございません。情報が真っ新でして……ランクが初期化されているようです」

「えっ? ……そうか、追放と共にカンパニーからの除名までされてるのか……あいつら、こんな時だけ仕事早いんだから……」

 半年間の苦労を、また1からやり直しって事か。ま、大した成績残して無かったから良いか……新規一転といこう。

 僕の独り言を聞き、受付嬢さんはアタフタとしている。

「あっ、あのっ! 酒場にいる冒険者や傭兵の方々と直接交渉する方法も有ります。ちょうど、あそこのテーブルに座っている3人組が術士さんを探していましたよっ」

「なるほど……。ありがとうございます」

 僕は受付嬢さんが指差した、3人組パーティに声をかけてみた。


 

 
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