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その頃、ザッカス達は……
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ザッカス達『フィアー・ローエンド』はガラヒゴ山から王都に帰還後、ギルドマスターからの緊急召集を受け執務室へと足を運んでいた。
─『王都ラシントン』 カンパニー本部 執務室
「ちーっす……何だよ、急に呼び出しやがって」
カンパニー重役しか入ることの出来ない執務室にて、太々しい態度で現れるザッカス。それもそのはず、ギルドマスターの椅子に座っているのは……。
「ごめんねぇ、ザッカスちゃん……。ちょっと聞きたい事があるのよ」
年増の中年女性……ザッカスの母親、イオンヌ・ローエンドである。カンパニー発足から携わる『ローエンド家』の重鎮であり超大型ギルドのトップ。しかし、戦闘能力は皆無であり、彼女の知らぬ所では『権力にしがみつくシワシワの魔女』と中傷されている。
そしてイオンヌの側に立つ大男が口を開く。
「ああ、コイツがガラヒゴ山の事を聞きたいってよ」
頑強そうな鎧を纏う大男……ザッカスの兄、ゴルディオス・ローエンド……カンパニーのナンバー2。母とは違い、実力は確かである。彼に従う一派を『領主派』と呼び、カンパニーに多大な利益をもたらしている。
そして、執務室にいた最後の1人を見てザッカスは冷や汗をかく。
(げっ……。コイツは……ブレイブ。何でココに来てやがる……)
ザッカス達3人を、全てを見透かす様な銀色の瞳で、寡黙に見つめる騎士。
(うぉぉ……。『極天騎士』じゃねぇか……)
(オーラ、ハンパねぇ……初めて見た)
恐れ知らずの『フィアー・ローエンド』が震えるのも無理は無い。目の前にいる寡黙な騎士は、極天騎士ブレイブ・ソードレイ。全身を包む絢爛な白銀の装具『カヴァーチャ』と、二対の長双剣『グランディス・レガルタス』……武器と防具、2つのレジェンダリ装備に認められし〝人類最強の男〟である。
その規格外の強さから、ラシントン国王直下の治安維持軍隊『国軍』と国内最大ギルド『カンパニー』の両方に『最高特別顧問』という地位を持ち世界中を駆け回っている。
そんな彼が、特定の人物達を呼び出したとあれば……事が重大なのは明白であった。
執務室を包む重い空気の中、ブレイブは問いた。
「ゴルディオス、何故この3人をガラヒゴ山に向かわせた? 本来なら俺の推薦パーティが行く筈のクエストだ」
「ん? 弟がガラヒゴ山に用が有るってんでパーティを急遽変えたんだよ。コイツらは実力は確かだから問題ねーだろ? 何たって俺の弟だからな」
「実力は確か……か。ならばマンティコアと戦わず逃げたのは何故だ?」
「……おいおい、ザッカス……マジか?」
執務室が緊張に包まれる……。
(チッ……。なんで知ってやがる。あ~……めんどくせぇ。シラを切っても無駄そうだな)
「まぁ、なんか……そん時は用事あったんで……。文句あるなら今から倒して来ますけど?」
不遜な態度を露わにして喋るザッカス。
そんな不貞の輩をブレイブは冷めた目で見る。
(……コイツらが戦いもせず逃げた確証は無かった。しかし、一目見た時点で分かる……コイツら3人は口だけのカスだ)
ブレイブは頭の中でザッカス達を冷評しながら話をする。
「そんな事はしなくていい。俺の友人に急遽無理を言ってガラヒゴ山に向かって貰ったからな……その結果、2体のマンティコアの死体が見つかった。既に何者かにより討伐されていたのだ」
その発言を聞いたザッカス達3人は苦笑いする。
「はぁ? じゃあ何の問題も無いでしょ」
「俺達は何で呼ばれたんだ? 訳がわからない」
「……帰っていいっすか?」
それに続くようにゴルディオスも苦笑しながら話す。
「コイツらの言う通りだ。……ま、でも、わざわざ呼び出したんだ。これで話はオシマイじゃねーんだろ?」
「そう、本題はここからだ。……そもそも高難度ダンジョン奥地でしか発見されていないマンティコアが人里近いガラヒゴ山に現れるなど、通常あり得ない……しかも、『つがい』でだ。……何か『大きな力』に引き寄せられて来た可能性が高い」
ブレイブの話を聞く執務室の面々……しかし、ゴルディオス以外の4人は真剣には聞いていなかった。
ブレイブは話を続ける……。
「さらに、マンティコアの死体の内1体は、たった1つの武器で細切れにされ……もう1体は手足以外を詳細不明の攻撃方法で消滅させられている。……俺の予想では、ガラヒゴ山に現れた『大きな力』が行った行為と思っている。……それが、我々の脅威となる悪しき力ならば……もう敵は、すぐそこまで迫ってきているという事だ」
ブレイブの持論に、一同は沈黙した……しかし……。
「ぶわっはっはっ! おいおい、ブレイブ! 流石に考え過ぎだぜ!」
比較的真剣に聞いていたゴルディオスさえも爆笑し、他の4人も笑い始める……。
「そうねぇ……! そんなに強い人が居るならスカウトしなきゃねぇ! ウブブブ!」
この状況に、ブレイブは目を閉じて思案した。
(ゴルディオスも真剣に取り合わないとは……。所詮は金の事しか頭に無い楽観主義の俗物か。それにカス3人組も、俺が知っている情報以上は知らないだろう……時間の無駄だったな)
再び目を開け、ブレイブはイオンヌに話しかける。
「ギルドマスター、『大練行』の予定を早める。今すぐにカンパニーの精鋭を集めてくれ」
『大練行』とは……毎年『ファフナ天宮』にて、ブレイブが行うカンパニーと国軍の合同強化訓練の事である。
「い、今からっ!? む、無理言わないで頂戴な!」
「出来ないなら、俺はカンパニーを抜ける」
「はぁっ?! そ、それは勘弁して頂戴! 分かった、分かったわよ! 集めるから!」
大英雄であるブレイブはカンパニーにとっては最高の広告塔……それを失う訳にはいかないとイオンヌは躍起になる。
「話は以上だ。俺は、もう行く。……ゴルディオス、お前も来い」
「悪いな、ブレイブ。俺は金勘定の大事な件が立て込んでてな!」
「……好きにしろ」
執務室を去ろうとするブレイブにザッカスが絡んでくる。
「極天騎士さんよ~。大練行のメンバーには、俺達『フィアー・ローエンド』も参加していーんスよね? 精鋭ですよ俺ら」
「……武器防具も付けてない奴等が精鋭か? ……お前等には無理だ」
「はぁ?」
ボロッ。ゴトッ。
いつの間にかザッカス達3人の武器防具は全て斬られて床へと落ちていた。彼等にはブレイブが剣を抜いた事すら気付いていなかった。
「「「えっ!? ちょっ! はぁっ!?」」」
慌てふためくザッカス達をゴルディオスは笑う。
「ぶわっはっは! 流石は極天騎士だぜ! だが弟よ、心配するな、俺が優秀な指導役を派遣してやる! それで強くなってブレイブを見返してやれ!」
「……ま、無理だろうがな」
そう冷たく言い残し……執務室から出るブレイブ。
恥をかかされたザッカス達の心中は、極天騎士への憎悪で染まっていた……。
─『王都ラシントン』 カンパニー本部 執務室
「ちーっす……何だよ、急に呼び出しやがって」
カンパニー重役しか入ることの出来ない執務室にて、太々しい態度で現れるザッカス。それもそのはず、ギルドマスターの椅子に座っているのは……。
「ごめんねぇ、ザッカスちゃん……。ちょっと聞きたい事があるのよ」
年増の中年女性……ザッカスの母親、イオンヌ・ローエンドである。カンパニー発足から携わる『ローエンド家』の重鎮であり超大型ギルドのトップ。しかし、戦闘能力は皆無であり、彼女の知らぬ所では『権力にしがみつくシワシワの魔女』と中傷されている。
そしてイオンヌの側に立つ大男が口を開く。
「ああ、コイツがガラヒゴ山の事を聞きたいってよ」
頑強そうな鎧を纏う大男……ザッカスの兄、ゴルディオス・ローエンド……カンパニーのナンバー2。母とは違い、実力は確かである。彼に従う一派を『領主派』と呼び、カンパニーに多大な利益をもたらしている。
そして、執務室にいた最後の1人を見てザッカスは冷や汗をかく。
(げっ……。コイツは……ブレイブ。何でココに来てやがる……)
ザッカス達3人を、全てを見透かす様な銀色の瞳で、寡黙に見つめる騎士。
(うぉぉ……。『極天騎士』じゃねぇか……)
(オーラ、ハンパねぇ……初めて見た)
恐れ知らずの『フィアー・ローエンド』が震えるのも無理は無い。目の前にいる寡黙な騎士は、極天騎士ブレイブ・ソードレイ。全身を包む絢爛な白銀の装具『カヴァーチャ』と、二対の長双剣『グランディス・レガルタス』……武器と防具、2つのレジェンダリ装備に認められし〝人類最強の男〟である。
その規格外の強さから、ラシントン国王直下の治安維持軍隊『国軍』と国内最大ギルド『カンパニー』の両方に『最高特別顧問』という地位を持ち世界中を駆け回っている。
そんな彼が、特定の人物達を呼び出したとあれば……事が重大なのは明白であった。
執務室を包む重い空気の中、ブレイブは問いた。
「ゴルディオス、何故この3人をガラヒゴ山に向かわせた? 本来なら俺の推薦パーティが行く筈のクエストだ」
「ん? 弟がガラヒゴ山に用が有るってんでパーティを急遽変えたんだよ。コイツらは実力は確かだから問題ねーだろ? 何たって俺の弟だからな」
「実力は確か……か。ならばマンティコアと戦わず逃げたのは何故だ?」
「……おいおい、ザッカス……マジか?」
執務室が緊張に包まれる……。
(チッ……。なんで知ってやがる。あ~……めんどくせぇ。シラを切っても無駄そうだな)
「まぁ、なんか……そん時は用事あったんで……。文句あるなら今から倒して来ますけど?」
不遜な態度を露わにして喋るザッカス。
そんな不貞の輩をブレイブは冷めた目で見る。
(……コイツらが戦いもせず逃げた確証は無かった。しかし、一目見た時点で分かる……コイツら3人は口だけのカスだ)
ブレイブは頭の中でザッカス達を冷評しながら話をする。
「そんな事はしなくていい。俺の友人に急遽無理を言ってガラヒゴ山に向かって貰ったからな……その結果、2体のマンティコアの死体が見つかった。既に何者かにより討伐されていたのだ」
その発言を聞いたザッカス達3人は苦笑いする。
「はぁ? じゃあ何の問題も無いでしょ」
「俺達は何で呼ばれたんだ? 訳がわからない」
「……帰っていいっすか?」
それに続くようにゴルディオスも苦笑しながら話す。
「コイツらの言う通りだ。……ま、でも、わざわざ呼び出したんだ。これで話はオシマイじゃねーんだろ?」
「そう、本題はここからだ。……そもそも高難度ダンジョン奥地でしか発見されていないマンティコアが人里近いガラヒゴ山に現れるなど、通常あり得ない……しかも、『つがい』でだ。……何か『大きな力』に引き寄せられて来た可能性が高い」
ブレイブの話を聞く執務室の面々……しかし、ゴルディオス以外の4人は真剣には聞いていなかった。
ブレイブは話を続ける……。
「さらに、マンティコアの死体の内1体は、たった1つの武器で細切れにされ……もう1体は手足以外を詳細不明の攻撃方法で消滅させられている。……俺の予想では、ガラヒゴ山に現れた『大きな力』が行った行為と思っている。……それが、我々の脅威となる悪しき力ならば……もう敵は、すぐそこまで迫ってきているという事だ」
ブレイブの持論に、一同は沈黙した……しかし……。
「ぶわっはっはっ! おいおい、ブレイブ! 流石に考え過ぎだぜ!」
比較的真剣に聞いていたゴルディオスさえも爆笑し、他の4人も笑い始める……。
「そうねぇ……! そんなに強い人が居るならスカウトしなきゃねぇ! ウブブブ!」
この状況に、ブレイブは目を閉じて思案した。
(ゴルディオスも真剣に取り合わないとは……。所詮は金の事しか頭に無い楽観主義の俗物か。それにカス3人組も、俺が知っている情報以上は知らないだろう……時間の無駄だったな)
再び目を開け、ブレイブはイオンヌに話しかける。
「ギルドマスター、『大練行』の予定を早める。今すぐにカンパニーの精鋭を集めてくれ」
『大練行』とは……毎年『ファフナ天宮』にて、ブレイブが行うカンパニーと国軍の合同強化訓練の事である。
「い、今からっ!? む、無理言わないで頂戴な!」
「出来ないなら、俺はカンパニーを抜ける」
「はぁっ?! そ、それは勘弁して頂戴! 分かった、分かったわよ! 集めるから!」
大英雄であるブレイブはカンパニーにとっては最高の広告塔……それを失う訳にはいかないとイオンヌは躍起になる。
「話は以上だ。俺は、もう行く。……ゴルディオス、お前も来い」
「悪いな、ブレイブ。俺は金勘定の大事な件が立て込んでてな!」
「……好きにしろ」
執務室を去ろうとするブレイブにザッカスが絡んでくる。
「極天騎士さんよ~。大練行のメンバーには、俺達『フィアー・ローエンド』も参加していーんスよね? 精鋭ですよ俺ら」
「……武器防具も付けてない奴等が精鋭か? ……お前等には無理だ」
「はぁ?」
ボロッ。ゴトッ。
いつの間にかザッカス達3人の武器防具は全て斬られて床へと落ちていた。彼等にはブレイブが剣を抜いた事すら気付いていなかった。
「「「えっ!? ちょっ! はぁっ!?」」」
慌てふためくザッカス達をゴルディオスは笑う。
「ぶわっはっは! 流石は極天騎士だぜ! だが弟よ、心配するな、俺が優秀な指導役を派遣してやる! それで強くなってブレイブを見返してやれ!」
「……ま、無理だろうがな」
そう冷たく言い残し……執務室から出るブレイブ。
恥をかかされたザッカス達の心中は、極天騎士への憎悪で染まっていた……。
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