聖なる悪魔~sin of faith~

須桜蛍夜

文字の大きさ
22 / 32
Day by day

保健室(2)

しおりを挟む
 だが、何も起こらなかった。サクは呻きをあげて目を瞑る。魔力を練り上げた途端、頭に走った激痛に、術を保つ事などできなかった。

「良かった、効いてたんだね。いやー、ひやひやしたよ。さっき君が飲んだ水には魔力の流れをでたらめにする薬が入っていたんだ。それが効いている限り君は術を使えないよ」

 全てを封じられていた。少女は視線で彼を殺すように睨みつける。

「そんな恐い顔しないでよ。らしくないよ。あ、もしかして僕が君を殺すと思ってる? そんな事しないから安心してよ」

「なんで……」

「上から殺せって言われたら殺さなきゃいけないけど、まだ君の存在は知られていない。なら、殺す必要は無いだろ? でももちろん、ただで帰すつもりも無いよ」

 サクは、彼の全てを見つめ、真意を探る。

「僕には特異な能力があるって言った。でもそれは魔力を感じられる事じゃない。それはただの付属品。本当の能力は魔力を喰える事。他人の魔力を喰って自分の物にできる。ここまで言えば、僕が何を要求するか分かるんじゃない?」

「喰わせろって言うの?」

「そう、定期的に僕の餌になってくれればいい。もちろん生活に支障ない程度には留めるさ。それさえ許してくれれば僕は君の存在を口外しない。元々僕は君らに関するいざこざには興味ないんだ。みすみす餌を殺させやしないさ。悪い取引ではないだろ?」

 確かに悪い取引ではない。魔力を喰うとはなんなのか。この男の掌で踊らされていていいのか。思うところは色々ある。

だが彼女にとって、殺されなければなんでもよかった。

「一つ条件がある。魔契約を交わして」

 魔契約は魔術的拘束力のある契約で、決して破る事のできない約束だ。

「なるほどね。君はもう聖者じゃない訳か。いいよ、気が済むまで交わそうじゃないか」

 Drは机から魔契約書取り出すと、それを彼女の手に握らせ、自分の手もそこに重ねた。

「我々は誓約を交わす。ルートはサクが聖なる民である事を口外しない。サクはルートに危害を加える事なく魔力を提供する。期限は――」

「サクの事情が公然となるまで。サクはここにそれを誓う」

「ルートはここにそれを誓う」

 魔契約書は青白い光を放ち、空間へと溶けてなくなる。

「これで契約は成立っと。それじゃあ早速貰うね、対価」

 いうが早いか彼女の上へと馬乗りになった。サクは突然の事に抵抗しようとするが、もちろんそれが叶う訳がない。Drはそんな彼女の首元に口を近づける。

「うっ……」

 魔力が逆流する気持ちの悪い感触。そして激しい程の虚脱感が一気に身体へのしかかる。

「甘露だ。こんな濃厚な魔力は初めてだよ」

 ルートは子供のような声でそう言うと、先程より激しく魔力を欲する。

「ゔ……ぁ」

 彼女が呻こうとも、苦しもうとも彼は微塵も気にせず、欲望のままに貪っていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

没落令嬢、バイト始めました 〜毒舌執事と返済ライフ〜

いっぺいちゃん
ファンタジー
タイトルは「没落令嬢、バイト始めました 〜毒舌執事と返済ライフ〜」 婚約破棄により一夜にしてすべてを失った侯爵令嬢・エリシア・フォン・リースフェルト。 残されたのは誇りと、支払いきれない式場キャンセル料、ドレス代、其の他諸々計二万五千リラ。 家は差し押さえ、財産もゼロ。 そんな彼女の傍に残ったのは、皮肉屋で冷静すぎる執事――セシルだけだった。 「働くのよ、セシル! 借金を返して、私の人生を取り戻すの!」 「……お嬢様、まずは焦げたパンをどうにかしてください」 料理も家事も世間知らずな令嬢と、口の悪い完璧執事。 身分を失った主従が、パン屋・酒場・劇場……とバイトを転々としながら、借金返済と再起を目指す日々が始まる。 ぶつかり合いながらも、次第に生まれていく信頼と絆。 そして、やがて明らかになるセシルの過去の秘密――。 没落から始まる、二人の再生と恋の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...