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Day by day
復活
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目が覚めたのは丸一日が過ぎてからだった。寮のベッドに寝せられていて、丁寧に風邪で休む旨の連絡までしてある。
眠ったおかげで少しは魔力が回復しているが、狂いそうな渇望は健在だ。動ける状態ではない。サクはふらふらと欠席の文書を作成して飛ばす。こんな魔術ですら、大魔術のようだった。
――あの変態医者。
魔闘祭に向けて調整をしなくてはならなかった。食事の約束もあった。全てが崩れていく。
――今が一番大事な時期なのに。
息を吐く。考えても仕方のない事だ。サクはおとなしく身体の要求に従って意識を手放した。
サクが登校できたのは倒れた夜から三日後だった。
「おはよう」
飛び込んできた白髪に教室はドッと沸き立つ。タルクはその様子を遠くから見つめて微笑んだ。
彼女が風邪で寝込むのは三年間で初めてだった。心配していた。だから、クラスメイトに囲まれて笑う彼女にほっとしている。
「良いのか? パートナーさんはあの輪に加わらなくて」
「どうせ一緒にご飯とかは食べるし、なんか悪いかなって」
サクは意外と人気者だ。わがままではあるが、憎めない性格の彼女は、先輩後輩問わず多くの友人を持っている。人見知りと言う訳ではないが、狭い範囲で行動しているタルクにはそれが少し羨ましい。
「いや、んな事言ってないで自分の姫様くらいかっさらってこい」
モリグは思い切り彼の背中を押した。悲鳴を上げる少年は勢いよく輪の中心へと飛び込んでいき、潮が引くようにサクは輪から解放される。
――何事もなきゃいいけど。
少年は二人を見守る。握りしめられた手と額に光る汗。彼の目に映る少女は今にも崩れてしまいそうだった。
眠ったおかげで少しは魔力が回復しているが、狂いそうな渇望は健在だ。動ける状態ではない。サクはふらふらと欠席の文書を作成して飛ばす。こんな魔術ですら、大魔術のようだった。
――あの変態医者。
魔闘祭に向けて調整をしなくてはならなかった。食事の約束もあった。全てが崩れていく。
――今が一番大事な時期なのに。
息を吐く。考えても仕方のない事だ。サクはおとなしく身体の要求に従って意識を手放した。
サクが登校できたのは倒れた夜から三日後だった。
「おはよう」
飛び込んできた白髪に教室はドッと沸き立つ。タルクはその様子を遠くから見つめて微笑んだ。
彼女が風邪で寝込むのは三年間で初めてだった。心配していた。だから、クラスメイトに囲まれて笑う彼女にほっとしている。
「良いのか? パートナーさんはあの輪に加わらなくて」
「どうせ一緒にご飯とかは食べるし、なんか悪いかなって」
サクは意外と人気者だ。わがままではあるが、憎めない性格の彼女は、先輩後輩問わず多くの友人を持っている。人見知りと言う訳ではないが、狭い範囲で行動しているタルクにはそれが少し羨ましい。
「いや、んな事言ってないで自分の姫様くらいかっさらってこい」
モリグは思い切り彼の背中を押した。悲鳴を上げる少年は勢いよく輪の中心へと飛び込んでいき、潮が引くようにサクは輪から解放される。
――何事もなきゃいいけど。
少年は二人を見守る。握りしめられた手と額に光る汗。彼の目に映る少女は今にも崩れてしまいそうだった。
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