パンドラ

須桜蛍夜

文字の大きさ
127 / 158
盈月

118

しおりを挟む
「瑠璃自身……?」

「わたしのチカラは記憶を読んで書き換える。でも、そんな生易しいもんじゃない。わたしのチカラは、対象者の記憶を全て読む。生まれてから今までを全部、体験したかのように鮮明に。だから、矛盾なく記憶を書き換えられるの」

初耳だった。でも考えてみれば、確かにそうかもしれない。記憶は繋がっているのだ。部分だけでは、何も分からない。

「でも、わたしの頭はそんなに記憶を貯められる訳じゃない。今は上手く整理できるようになったけど、昔はそうじゃなかった。だからーーわたしは記憶を失った」

「…………」

「教団に囚われる前……もしかしたら後のことまで何一つ分からない。教団でチカラを乱用したせいで、他の記憶に塗りつぶされちゃったから。だから、わたしはわたしが分からない。どこで生まれたのかも、なんで教団に居るのかも、両親の顔も名前も、誕生日も、苗字も、瑠璃って名前が本物かすら分からない。だから知りたいの、わたしが何者か。それを探してる」

語り終わったのか、瑠璃は視線を外して歩き出す。おれを置き去りに進んでいく。
おれは動けない。こんなことを聞かされて、普通でいられるはずがない。だけどーー。

「瑠璃」

「なに?」

小さな身体を思い切り抱きしめた。

「瑠璃、ありがとう。大変だったな」

事実をすぐには受け止められないけれど、固まっているだけではいられない。

「同情される気は無いよ」

「そうだとしても、労わせてくれよ」

瑠璃の頭を優しく撫でた。この子は、小さな身体にどれだけのものを抱えているのか。どれだけの苦しみを乗り越えてきたのか。

どうか、これからは安らかに過ごして欲しい。

ーー蛇目教はおれが潰してやるから。

我が子を守るため、全てを賭けてもいいと思えた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

笑顔が苦手な元公爵令嬢ですが、路地裏のパン屋さんで人生やり直し中です。~「悪役」なんて、もう言わせない!~

虹湖🌈
ファンタジー
不器用だっていいじゃない。焼きたてのパンがあればきっと明日は笑えるから 「悪役令嬢」と蔑まれ、婚約者にも捨てられた公爵令嬢フィオナ。彼女の唯一の慰めは、前世でパン職人だった頃の淡い記憶。居場所を失くした彼女が選んだのは、華やかな貴族社会とは無縁の、小さなパン屋を開くことだった。 人付き合いは苦手、笑顔もぎこちない。おまけにパン作りは素人も同然。 「私に、できるのだろうか……」 それでも、彼女が心を込めて焼き上げるパンは、なぜか人の心を惹きつける。幼馴染のツッコミ、忠実な執事のサポート、そしてパンの師匠との出会い。少しずつ開いていくフィオナの心と、広がっていく温かい人の輪。 これは、どん底から立ち上がり、自分の「好き」を信じて一歩ずつ前に進む少女の物語。彼女の焼くパンのように、優しくて、ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなるお話です。読後、きっとあなたも誰かのために何かを作りたくなるはず。

幸せの賞味期限――妹が奪った夫は、甘く腐る

柴田はつみ
恋愛
幸せには「賞味期限」がある。 守る実力のない女から、甘い果実は腐っていく 甘いだけのダメンズ夫と、計算高い妹。 善意という名の「無能」を捨てたとき、リリアの前に現れたのは 氷の如き冷徹さと圧倒的な財力を持つ、本物の「男」だった――。 「お姉様のその『おっとり』、もう賞味期限切れよ。カイル様も飽き飽きしてるわ」 伯爵家の長女・リリアは、自分が作り上げた平穏な家庭が、音を立てて崩れるのをただ見つめるしかなかった。 信じていた妹・エレナの狡猾な指先が、夫・カイルの心の隙間に滑り込んでいく。 カイルは、優しくて美貌だが、自分の足で立つことのできない「甘い」男。彼はエレナの露骨な賞賛と刺激に溺れ、長年尽くしてきたリリアを「味のないスープ」と切り捨て、家から追い出してしまう

私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません

しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」 ――それは私を縛る呪いの言葉だった。 家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。 痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。 でも、、そんな私、私じゃない!! ―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。 「私の人生に、おかえりなさい。」

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

記憶をなくしても君は忘れない

水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

処理中です...