パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

40

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「ねぇ、頼み事あるんだけどいい?」

試合の合間の休憩時間。私はそう切り出した。

「ん、なに~?」

ユウコ、ミカ、沙羅の順番でこっちを向いた。私に頼られる事が嬉しいのか、その瞳はきらきらと輝いている。

「たま子先生がさ、このクラスにいじめがあるって知ったらしくて、学級委員として調査して欲しいって頼まれたんだよね。何か知らない?」

つらつらと嘘を並べてみる。
無邪気を装い、笑顔をうかべながら。

「……え?」

凍りつく三つの顔。あからさまな動揺が流れ出る。

「あ、何か知ってるんでしょ。教えてよ」

その動揺に気付かない振りをして秘密に踏み込む。あくまで無邪気に、そして無遠慮に。

「……何も知らないよ。沙羅達関係ないもん」

声は上擦り、ぎこちなく視線が背けられる。

バレバレだという事に気がつかず、まだ隠し通すつもりらしい。

ーーま、そっちの方が都合いいけど。

「そっか。沙羅達ならなんか知ってるかなって思ったのに、残念。じゃ、なんか分かったら教えてよ」

「う……うん、なんか分かったらね」

「うん、分かったらウチも教える。……ウチら巴ちゃんの友達だし、協力する」

「あたしも!」

今までの不安を掻き消すように騒ぎ出す。でも、そこに在るのは仮初めの安堵。

「ありがと。これで少しは楽になるかな。にしてもさーー」

言葉を紡ぐ。ここからが本題。

「いじめってダサいよね」

ピシッ!

再び固まる三人組。

「なーんでそんな事するんだろ? お陰で私がこんな面倒くさい調査なんかやんなきゃいけないしさ。まったく。いじめなんてさ負け犬の足掻きでしょ。弱者が自分を正当化する為に強がってるだけみたいな? ほんとにかっこ悪い」

ケラケラ笑ってみせる。沙羅の顔がはっきりと歪んで今にも泣き出しそう。

「そ、そうかな。あたしはそうでもないと思うけど」

そんな沙羅を庇うように、自分自身を守るようにユウコは言った。ミカと沙羅がその台詞に希望を見いだす。蜘蛛の糸へと縋り付く。

ーーなら、その希望も潰さなきゃね。
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