魔王を失くした妃様は勇者の旦那に監禁されたようです

OPLIA

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色々あるけど監禁って大変だよ、多分

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私が吐き出したさいころほどの肉塊は一瞬でもくもくと体積を増やし、見慣れた姿を形作る。

血を馴染ませたような赤色の長髪に対となるような水色の瞳。唇はそれらを混ぜたような色で染まった、白い肌の青年。長身の青年は体の形が完全に回復するや否や跪いた。

「奇術師。このオルナリウス、妃を守るという使命すら果たせず、さらには命まで助けられた。私はどう償えば・・・」

「オルナリウスそんなことは3の次だ。まずは知りたいことがある。手伝ってくれ」

「・・・はっ」

「いいか?何よりも私はここがどこなのかを知りたい。時の流れから離脱して、もう数十年だ。何も覚えてはいない。まずはここからでて、私のあるべき状況を知らなくてはならないんだ」

「例えば、現在日が落ちていれば、私がスキルを使って日ごろの索敵と同じように一定範囲の様子を知ることは可能です。ですが、問題はやはり彼らです」

「お前はコウモリにとどまらず、お前が知る限りのありとあらゆる生物に化けられるだろう。こういうとあれだが、ノミでもなんでもいい。何かに化けられないのか?」

吸血鬼のスキルは汎用性が高く、なにを使ってもデメリットが無いのが特徴だ。そのため、古来からの文献がその種族数とは反比例するように多く存在する。それが災いし、あまりにもわかりやすい弱点が生まれてしまったのは有名な話だ。

「例えばこの部屋、いくら何でも清潔過ぎです。細菌の量が完璧に調整されています。空気中にホコリが舞っていないのにはお気づきになりましたか?単純な話、彼らは潔癖症です。極度の。小さな虫が土の中から出てくることを想定していないわけがありません。さらに今回は特別。あなたが隠し玉を用意している可能性を考慮し、さらに警戒を強めているでしょう」

 確かにそうだ。ではどうする?本当にこのまま、ここで堕落するのか?考える私の視界の端でオルナリウスは口角を上げていた。笑っていたのだ。

「おい。不謹慎だぞ」
 
オルナリウスはハッと表情を整える。

「いや、妃。申し訳ない。なんだか妃が、久しく見るような柔らかい表情をしてたものなので」

「柔らかい顔だ?」

「楽しそうな顔、とでも言い換えましょうか。王があなたを戦略会議から外して以来、あなたがそのような顔をすることは無かった。」

「・・・・黙れ。それだけ馬鹿げた発言をするからには意見の1つでも用意したのだろうな?」

私は強引に話を変える。

・・・まさか私の表情をそんな一生懸命見ている馬鹿がいたとは。まぁ、あの人とオルナリウスの付き合いが長いように、私とオルナリウスの付き合いも短くない。当然と言えば当然かもしれない。

「妃。たとえば、たとえばですが道はあります。」

「なんだ?」

「妃、その、用はどこで足すのですか?」

「・・・あ?」

そうだ。この地下室にトイレらしきものは無い。しかも今の私にはせいぜいクッションの上でのたうちまわることしかできない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「とゆーかお前!さっさとこの手錠を壊せよ!」

「しかし妃。ここから見るとぴっぴっぴと音を立てて、最終的にドカーンとなるあれがその手錠の紐と繋がっているようにしか見えないのですが」

「なんでだよ!綺麗なんじゃないのかよ!意味わかんないホント。・・・はぁ、もういいや。それでトイレがなんだって?」

「はい、妃。貴女も人間、用を足さずにはいられません。そこでです。妃が手水へ行きたいといえば、きっとあなたは手水へ案内されるでしょう。その時に上の階へ行けるはずです。私は身を削り妃の影に隠れる」

「なるほど。確かにそれが最善っぽいわねそれなら・・・」

「ただ。」

「ただ?」

「準備のよい彼らがトイレを用意しないということがありえるのでしょうか?」
 
私は思わず、え?と呟いた。

「どういうこと?」

「つまりですね、妃。えっと・・・おむつなどがさり気なく取り付けられたりしていませんか?」

「!?」  

とっさに私は太ももを動かす。変な感覚はしないが、全く安心できない。そうだ。あの男は最初、存在感を欠片も感じさせずに私の目の前に現れたではないか。

「あわわわわわわわわわああわっわわわ」

「妃、落ち着いてください。ほ、他にも可能性はあります。そ、そのクッション、実はトイレだった・・・とか?」

 私はゆっくりと自分が沈んでるクッションを見る。

「・・・・・・」

「・・・・妃?」

「いやぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁ!」

私は叫ぶ。無我夢中で叫ぶ。拘束されたり変な男に言い寄られたことで溜まっていた生理的嫌悪感が限界に達したのだ。

「妃!落ち着いてください!きさ」

突然オルナリウスの声が止んだ。そしてその姿も消えた。何かと思って辺りを見回していると、コツコツと音を立てて例の男が上の階から降りてきた。

  
スイッチが切り替わる。チャンスはここだと思う。オルナリウス自体は、どうやら小さな肉片を私の耳の裏にくっついた様だった。

『妃。失礼いたします』

「えぇ」

 男が完全に顔を出す。

「やぁ。アーチェフィルム」

「あ。ちょうど良かった!私とい

「少し外に出ようか」

『え?』
「え?」  
  
       
      
     
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