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転生後〜幼少期

#4コア目

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あれからまた一年が経過した。

一歳の時にあうあう言ってたシュレットであったが、その時から徐々に言葉を発するようになった。

通常赤ちゃんは八ヶ月から一歳半で話し始めるが、
シュレットは無属性魔法[言語]がある為、会話することは意識が戻った時から出来ていた。

もちろん意識が戻ってから言葉が出てこなかったのは、入ってくる情報によって混乱していた為である。


異世界転生なんて本来は存在しない。混乱するのが当たり前だ。書物の中のあの冷静さは異端すぎて寧ろ怖いまである。

その為に言葉は言えるが小さ過ぎる頃から会話が成立していては気味が悪いと思われるだろうと一歳から徐々に慣らしていったのだ。


もちろん母のイレーナにはいの一番に「ママ」、マーガレットには「まぁがぇっと」と呼んであげた。

マーガレットには結構ギリギリなラインでの発音だったため若干怪しいかもという気持ちではあったが、
歓喜どころか発狂もので少々恐怖したことは墓まで持っていこうというのがシュレットのこの世界での一番目の秘密である。


さて、なぜ父の話がそこまで出ていないかだが、それはほとんど会話が出来ていないからに他ならない。
そもそも子爵家と言えど、この領地はそこそこに辺境にあるのだとか。

領内もそう広くなく、人口も少ない。

それもその筈。

カールストン子爵領は魔境の森と呼ばれる場所に隣接しており、カールストン子爵家はそこまで兵を抱えている訳ではない。
その為、父が率先して魔境の森で魔物を間引いているのだとか。

なのでたまーに帰還する父には最大にして最高の笑顔で「パパ」と伝えた。
涙しながら抱かれた事はシュレットの脳内思い出館に保存しておいた。


ここまでの話はイレーナとマーガレットとの対話という名の聞き専をしていたので実際に見た訳ではない。

兄と姉はほとんどの時間は家庭教師を雇ってのお稽古やお勉強をしているので時折だが会ってお話ししている。
もちろん家庭教師の時間以外は会っている。そもそも二歳の赤子が食事の席に着くわけがないので隙間時間などだ。

兄のカーズや姉のキャディアにも「にに」「ねね」と言って可愛がってもらっている。
双子は「にに」「ねね」と言うといつもにこにこと笑顔を見せてくれる。

転生前の世界であったらそこまで可愛がられることもなかったので、転生させてくれた神様には感謝しかない。
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