現代で落ちこぼれの三男〜異世界転生してコアの力で人生を謳歌する〜

転生後〜幼少期

#68コア目

「先ほどのダンジョンの補足を説明します。
　ダンジョンの中はそれこそ数えきれないほどの環境や地形が存在します。
　その中には湿地帯や沼地があるフィールドも存在するのです。

　そして今回シュレット様がお聞きになったお湯がでる魔道具に使用する部位、
　それが、沼地に生息する魔物、エンペラーフロッグの外皮と胃袋がそうなのです。
　
　この魔物は上級の冒険者、BランクからAランク相当の方が一パーティー居て倒せるか倒せないかなのです。

　ダンジョン自体はマルズレット子爵領の隣の領地、エンバー伯爵領にあるので比較的行きやすくはあるのですが、
　高位の冒険者は王都に多い為、なかなか討伐はされないのです」


カシュアは魔物の詳細が載っている本を片手にシュレットに説明していく。


「そ・・うなのですか・・・分かりました。外皮と胃袋に関しては父様に確認してみます。
　ダメそうなら諦めるしかないですね」

「確認させて頂きたいのですが、今回そのお湯がでる魔道具を開発したい目的というのは・・・？」

「えぇ、この子爵領に公衆浴場を建設出来ないかなと思って」

「公衆浴場ですか」


カシュアは風呂という単語を耳にしたが、聞き慣れないのか首をかしげる。


「カシュアさんはお風呂という単語に聞き覚えは？」

「お風呂ですか。はて、あまり聞き慣れない単語ですね」

「お風呂というのはですね、整えられた大きな穴にお湯を張り、
　そこに身体を入れて身体全体を湯で癒していくものです。

　また、全身を湯に潜らせるというのは病を身体の内から予防できるという代物ですね。

　大昔の人たちは湯浴み着を着てみんなで入ったそうですよ」

「そのようなものが！ それに使う魔道具とは、大胆なことをしますね。
　本来は王侯貴族の方たちが屋敷を円滑に使える為にと年に数個作成される代物なのですが。

　いやはや、恐れ入ります。それに民の為を思っての行動、天晴れです」


カシュアはシュレットの説明に感心し、腕を組み、目を瞑りながら頷いている。


「まぁ単に自分たちだけで入ってたら申し訳ないという気持ちからなのですがね。あはは」

「いえいえ、大半の貴族の方というのは、民の為に何かをするというのはありますが、
　高価な魔道具を使ってまで政まつりごとをするというのは、ないことですから」

「そういうものなんですねぇ。僕自身は民が居てこその国だと思いますから。
　分け隔てなくやった方が回り回って自分に還ってきますからね」

「立派なお志でございます。このカシュア感服の極みです」

「ありがとうございます。
　あ、そういえば、湯が出る魔道具とは別に確認したいことがあるのですが、
　錬金にまつわる本などはありますか？ 
　作る魔道具によって素材が違うと思うので一覧があればなと」

「えぇ、ございます。私が持っている本をお貸ししましょう」


カシュアはそう言いながら、本棚から目的の本を一冊取り出す。


「いいんですか！？」

「もちろんでございます。私は全て頭の中に入っているので問題ありません。
　まぁそれがないと明日のご飯が食べられませんから」

「さすがですね。ではお借りしても？」


カシュアにとっては錬金の情報であれば逐一頭に叩きこまなければいけない。
そうしないとアーミット商会で使ってもらえなくなるからだ。


カシュアは妻と子供がいる身。
家族のためにも頑張っているのだ。


「はい、シュレット様に活用いただけるなら本望でしょう」

「ありがとうございます！ 助かります！」

「他にご質問などはございますか？」

「いえ！ 大丈夫です！ 聞きたい事は全部聞けました！ 
　また分からないことが出来たら聞きにきてもいいですか？」

「えぇ、いつでも来てください。歓迎いたします」

「その時はよろしくお願いします！」


シュレットに新たに第二の先生が誕生した日である。