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第一章 日常
001 はじまり
ーー都内某所。
『右、右右右右右左左左、左ですセンパイ。』
「どっちだよ。」
『3秒前は左でした。』
「過去形で指示されてもさぁ。」
『あ、確定しました。5秒後に右から来ます。』
「了解。」
深い夜の闇に紛れるように、漆黒の青年が細い路地裏に立っていました。右手には刃渡り2mくらいの黒い長剣。その根元に埋め込まれた深紅の結晶からは、まばゆい赤い光が放たれています。明らかに銃刀法違反ですが、とある事情により許されています。
『あ、やっぱり左。』
「ふざけんなテメエおらあああああッ!!!!」
いつものことで反射神経が鍛えられているらしく、凄まじい勢いで跳ね返った青年の剣が影を切り裂きました。バン、という音とともに破裂したその物体から吐き出されるのは”黒い液体”。それが見事なまでに青年にぶっかかります。
「・・・チッ。しくった。」
『うわー、大丈夫ですかセンパイ。またやっちゃいましたね、ドンマイドンマイ。』
「さて、誰のせいだったかな?」
『責任追及は時間の無駄だ、って偉い人が言ってました。』
「はは、そりゃ偉い人はそう言うだろうな。」
『んー相変わらず笑えない冗談好きですよね、センパイ。』
返事をせずに、青年は垂れ落ちる液体を腕で簡単に拭いました。そしてその足元でびくびくと跳ねているモノを一瞥します。焦点の合わない4つの目、微細な牙がずらりと生えた口、真っ二つに切り裂かれた隙間から覗く黒い血肉、いまだぐねぐねと蠢く7本の手足ーー悪魔。
少しずつ”黒塵”になりながら消えていくそれを見ながら、青年は無表情のまま口を開きました。
「兄弟、ね。三匹ぶっ殺したからあと一匹だ。」
『それが魔力反応ないんですよー。』
「さっきからレーダーイカれてんのか。いねえ訳ねえだろ。」
『同胞を失った個体って可能性もありますし、最近増えてきてる変異体かもしれません。とにかくセンパイの周囲にそれらしい反応はないです。』
「・・・んなことある?」
さっきのさっきでいまいち信用しきれない青年でした。これ以上ないほど渋い顔してます。
「・・・戻るか。たりぃし。」
『そうですねー、状況整理しましょ状況整理。』
「シャワー浴びてからな。」
色んなことを諦めたように深くため息をつくと、青年はジーンズのポケットから白い球体を取り出しました。
「ー”展開”。」
その瞬間、球体は宙に浮き上がり、何やら地面に円形の幾何学模様を映し出します。薄く発光しているその”転移魔方陣”の傍で、ぼんやりと浮かび上がる黒い塊。黒塵として消え去った悪魔が食い残したもの。
無惨に引き千切られた名も知らぬその"死体"を、青年は相変わらずの無表情で見つめていました。どこか諦念を湛えた赤い瞳からは、何を考えているか読み取ることは出来そうにありません。ただ、何かしらの思う所はありそうです。
『ーーッ、センパイ後ろッ!?!』
だから、青年は背後から忍び寄る"もう一匹"に気付くのが遅れました。姿なき声の悲鳴で我に返り、考えるよりも早く身体が剣を振るいます。しかし、このままだと悪魔の鋭利な牙の方が届くのは先でしょう。
このままだと。
『ーー〈因果の祝福〉ッ!!』
「〈運命の裁き〉。」
『右、右右右右右左左左、左ですセンパイ。』
「どっちだよ。」
『3秒前は左でした。』
「過去形で指示されてもさぁ。」
『あ、確定しました。5秒後に右から来ます。』
「了解。」
深い夜の闇に紛れるように、漆黒の青年が細い路地裏に立っていました。右手には刃渡り2mくらいの黒い長剣。その根元に埋め込まれた深紅の結晶からは、まばゆい赤い光が放たれています。明らかに銃刀法違反ですが、とある事情により許されています。
『あ、やっぱり左。』
「ふざけんなテメエおらあああああッ!!!!」
いつものことで反射神経が鍛えられているらしく、凄まじい勢いで跳ね返った青年の剣が影を切り裂きました。バン、という音とともに破裂したその物体から吐き出されるのは”黒い液体”。それが見事なまでに青年にぶっかかります。
「・・・チッ。しくった。」
『うわー、大丈夫ですかセンパイ。またやっちゃいましたね、ドンマイドンマイ。』
「さて、誰のせいだったかな?」
『責任追及は時間の無駄だ、って偉い人が言ってました。』
「はは、そりゃ偉い人はそう言うだろうな。」
『んー相変わらず笑えない冗談好きですよね、センパイ。』
返事をせずに、青年は垂れ落ちる液体を腕で簡単に拭いました。そしてその足元でびくびくと跳ねているモノを一瞥します。焦点の合わない4つの目、微細な牙がずらりと生えた口、真っ二つに切り裂かれた隙間から覗く黒い血肉、いまだぐねぐねと蠢く7本の手足ーー悪魔。
少しずつ”黒塵”になりながら消えていくそれを見ながら、青年は無表情のまま口を開きました。
「兄弟、ね。三匹ぶっ殺したからあと一匹だ。」
『それが魔力反応ないんですよー。』
「さっきからレーダーイカれてんのか。いねえ訳ねえだろ。」
『同胞を失った個体って可能性もありますし、最近増えてきてる変異体かもしれません。とにかくセンパイの周囲にそれらしい反応はないです。』
「・・・んなことある?」
さっきのさっきでいまいち信用しきれない青年でした。これ以上ないほど渋い顔してます。
「・・・戻るか。たりぃし。」
『そうですねー、状況整理しましょ状況整理。』
「シャワー浴びてからな。」
色んなことを諦めたように深くため息をつくと、青年はジーンズのポケットから白い球体を取り出しました。
「ー”展開”。」
その瞬間、球体は宙に浮き上がり、何やら地面に円形の幾何学模様を映し出します。薄く発光しているその”転移魔方陣”の傍で、ぼんやりと浮かび上がる黒い塊。黒塵として消え去った悪魔が食い残したもの。
無惨に引き千切られた名も知らぬその"死体"を、青年は相変わらずの無表情で見つめていました。どこか諦念を湛えた赤い瞳からは、何を考えているか読み取ることは出来そうにありません。ただ、何かしらの思う所はありそうです。
『ーーッ、センパイ後ろッ!?!』
だから、青年は背後から忍び寄る"もう一匹"に気付くのが遅れました。姿なき声の悲鳴で我に返り、考えるよりも早く身体が剣を振るいます。しかし、このままだと悪魔の鋭利な牙の方が届くのは先でしょう。
このままだと。
『ーー〈因果の祝福〉ッ!!』
「〈運命の裁き〉。」
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