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第一章 日常
002 仲間
「大丈夫・・・そうだな、刻。」
そんな声と共に、暗がりから一人の青年が現れました。どことなくホッとした様子です。
「・・・澄晴。」
対照的に真っ白な装いをした青年の名をぶっきらぼうに呟きながら、漆黒の青年ーー常磐 刻はゆっくりと黒剣を下ろしました。その目の前には、腹部に大穴の空いた悪魔が、そこからブシュブシュと血を吹き出しながら塵化しています。
「無事で良かった。血の気が引いたよ。」
「ドッキリ成功、ってことで。」
「馬鹿、冗談じゃない。殺し合いしてる自覚が足りてないぞ、お前。」
「…いやブッ壊れたカーナビ女がイカれた事ばっかり言いやがるからさぁ。」
『あ!酷いですセンパイ!全部私のせいにして!もうナビしてあげませんよ?東京メトロで迷っても知りませんからね。迷宮の塵になるがいい。』
「テメェも迷ってた癖に言うなッ!」
醜悪な責任のなすり付け合いです。大体こういうのに終わりはありません。頭が痛いとばかりにこめかみを抑えてため息をついた夢咲 澄晴は、仕方なさそうに微笑んで口を開きます。
「はいはい、喧嘩は帰ってから好きなだけやっていいから。一旦引くべきだ。」
「んー、なんかヤバい状況ってこと?」
「ああ、少しな。柚さん、周辺の魔力探知は?」
『~~~~~♪』
返事の代わりにトルコ行進曲5倍速の口笛が聞こえてきました。すごい技術ですね。
「うん、つまりそういうことだ。」
「はぁ?何が。」
「この辺一帯に高濃度の魔力がばら撒かれている。探知が無効化されてるのさ。これは何かしら意図的なものだと見るのが妥当じゃないかい。」
『わ、ほんとだ。濃度平均値がこのあたりだけ70%オーバーしてますセンパイ!今まで多少なりとも息苦しいとか思わなかったんですか?とんでもなく図太いですね!尊敬します!』
「おうお前帰ったら覚えてろよ。」
そう言った刻の額に青筋が浮かぶのと、白い球体が展開し終えるのは同時でした。
ーー転移魔方陣、展開完了。移転フェーズに移行します。
機械的な音声が響いて、周囲が白い光の粒に覆われていきます。そんな幻想的な光景の中で、刻は隣で静かに佇んでいる”親友”に視線を向けました。
「・・・そういやお前、よくここが分かったな。D区街はどうした?」
「ああ、ちゃんと終わらせてから来た。異常はなかったよ。」
「早ェな。」
「僕の兵装は哨戒戦闘特化だ。ここで役に立たないなら、何の意味もない。」
「・・・。」
「刻、はい。また盛大に汚したな。」
にっこり笑って、澄晴は全身黒い血まみれの刻に真っ白なタオルを渡そうとしました。見るからに汚れたら落とすのが大変そうなタイプのタオルです。
「いーよどうせすぐシャワー浴びるし。」
「遠慮するな、らしくもない。・・・ん、いや。お前は寧ろ、余計な遠慮をするタイプかな。」
「あ。」
「悪魔の腸なんぞ体に悪い。ちゃんと拭け。」
刻の頭にバサリと掛けられたタオルが、みるみるうちに赤黒く染まっていきます。あーあもったいない、という顔をしていますが、澄晴はどこ吹く風です。さすがおぼっちゃん。
ーーカウントダウン開始。転移まで、10、9、8・・・
『センパイ、そういえば不思議なことがあるんですが。』
「お前の思考回路とか?」
『やだぁもう、そんなに褒めないでください♡残念ですけど違います~。』
「・・・で、何。」
『魔力でも探知できませんでしたが、因果律でも特定不可だったんです。さっきの。』
「・・・?」
『うーんあと3秒で説明しきれる気がしないので、また後で!अलविदा!』
「待てや何語だそrーーー
シュン、と騒がしいのと共に光が掻き消えると、辺りは元の静寂を取り戻しました。真っ暗な路地裏に残されたのは、澄晴の”矢”に貫かれて半分塵化している悪魔の死骸と、正体不明の人間のバラバラ死体。
・・・そして今、その指先が、ピクリと跳ねました。
そんな声と共に、暗がりから一人の青年が現れました。どことなくホッとした様子です。
「・・・澄晴。」
対照的に真っ白な装いをした青年の名をぶっきらぼうに呟きながら、漆黒の青年ーー常磐 刻はゆっくりと黒剣を下ろしました。その目の前には、腹部に大穴の空いた悪魔が、そこからブシュブシュと血を吹き出しながら塵化しています。
「無事で良かった。血の気が引いたよ。」
「ドッキリ成功、ってことで。」
「馬鹿、冗談じゃない。殺し合いしてる自覚が足りてないぞ、お前。」
「…いやブッ壊れたカーナビ女がイカれた事ばっかり言いやがるからさぁ。」
『あ!酷いですセンパイ!全部私のせいにして!もうナビしてあげませんよ?東京メトロで迷っても知りませんからね。迷宮の塵になるがいい。』
「テメェも迷ってた癖に言うなッ!」
醜悪な責任のなすり付け合いです。大体こういうのに終わりはありません。頭が痛いとばかりにこめかみを抑えてため息をついた夢咲 澄晴は、仕方なさそうに微笑んで口を開きます。
「はいはい、喧嘩は帰ってから好きなだけやっていいから。一旦引くべきだ。」
「んー、なんかヤバい状況ってこと?」
「ああ、少しな。柚さん、周辺の魔力探知は?」
『~~~~~♪』
返事の代わりにトルコ行進曲5倍速の口笛が聞こえてきました。すごい技術ですね。
「うん、つまりそういうことだ。」
「はぁ?何が。」
「この辺一帯に高濃度の魔力がばら撒かれている。探知が無効化されてるのさ。これは何かしら意図的なものだと見るのが妥当じゃないかい。」
『わ、ほんとだ。濃度平均値がこのあたりだけ70%オーバーしてますセンパイ!今まで多少なりとも息苦しいとか思わなかったんですか?とんでもなく図太いですね!尊敬します!』
「おうお前帰ったら覚えてろよ。」
そう言った刻の額に青筋が浮かぶのと、白い球体が展開し終えるのは同時でした。
ーー転移魔方陣、展開完了。移転フェーズに移行します。
機械的な音声が響いて、周囲が白い光の粒に覆われていきます。そんな幻想的な光景の中で、刻は隣で静かに佇んでいる”親友”に視線を向けました。
「・・・そういやお前、よくここが分かったな。D区街はどうした?」
「ああ、ちゃんと終わらせてから来た。異常はなかったよ。」
「早ェな。」
「僕の兵装は哨戒戦闘特化だ。ここで役に立たないなら、何の意味もない。」
「・・・。」
「刻、はい。また盛大に汚したな。」
にっこり笑って、澄晴は全身黒い血まみれの刻に真っ白なタオルを渡そうとしました。見るからに汚れたら落とすのが大変そうなタイプのタオルです。
「いーよどうせすぐシャワー浴びるし。」
「遠慮するな、らしくもない。・・・ん、いや。お前は寧ろ、余計な遠慮をするタイプかな。」
「あ。」
「悪魔の腸なんぞ体に悪い。ちゃんと拭け。」
刻の頭にバサリと掛けられたタオルが、みるみるうちに赤黒く染まっていきます。あーあもったいない、という顔をしていますが、澄晴はどこ吹く風です。さすがおぼっちゃん。
ーーカウントダウン開始。転移まで、10、9、8・・・
『センパイ、そういえば不思議なことがあるんですが。』
「お前の思考回路とか?」
『やだぁもう、そんなに褒めないでください♡残念ですけど違います~。』
「・・・で、何。」
『魔力でも探知できませんでしたが、因果律でも特定不可だったんです。さっきの。』
「・・・?」
『うーんあと3秒で説明しきれる気がしないので、また後で!अलविदा!』
「待てや何語だそrーーー
シュン、と騒がしいのと共に光が掻き消えると、辺りは元の静寂を取り戻しました。真っ暗な路地裏に残されたのは、澄晴の”矢”に貫かれて半分塵化している悪魔の死骸と、正体不明の人間のバラバラ死体。
・・・そして今、その指先が、ピクリと跳ねました。
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