Be Crazy To Be Crazy!!

ENIGMA

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第一章 日常

006 作戦

「さて。それじゃ、仮想敵あいては魔人としようか。」

ひとしきり拭きまくって満足したのか、刻の髪を綺麗な七三に分けながら澄晴がそう言いました。知的な爽やかさが不要にアップしています。

「・・・美容師目指したらいいよ、お前。」
「いや、特にヘアスタイルに興味はないが。ちょっと規定より長くないか?前髪。」
「あっそ・・・。」

職業病でした。前髪を指で測る仕草が年季入ってます。刻を見つめる白灰色の瞳が穏やかに細められたかと思うと、顔を上げた瞬間、そこには冷酷な光が灯っていました。

「しかしなると、少し方針を立て直す必要があるな。今まで通りに見つけ次第排除、で済みそうにはない。」
「”前回”は分かりやすくレンちゃん目当てでしたからね。そういう連中は遠征先を狙うでしょうし・・・いまいち目的が掴めません。居ないうちに私たちを叩く算段ですかね?」
「・・・何にせよ返り討ちにしてやろうぜ。」
「ああ。まず居場所を洗い出そう。悪魔れんちゅうが発現できる範囲は限られている訳だ、僕の千里眼スキルがどこまで通用するかは定かじゃないが、探る価値はある。柚さんの方はどうかな?」
「うあー、メリーゴーランドの上のコーヒーカップ乗ってる気分ですけど、センパイのサポートくらいならいけそうですよ。因果律はぐっちゃぐちゃで終わってます!」
「・・・右左連呼しだしたら切るぞ。」
「センパイも生まれ持ったその野生動物並みの勘を生かして頑張って下さーい!・・・真面目な話、いざとなったら私の探知よりご自分の感覚の方がアテになると思います。」

珍しく殊勝げに笑って、柚はペロリと舌を出しました。

「ふーん、お前の能力狙い撃ちってことね。おもしれぇじゃん。」
「裏方を潰して来た、となると、ある程度こちらの情報が掴まれているらしいな。・・・現状、後手に回るしかなさそうだ。」
「はい!情報収集のお時間です!牛乳とアンパン持って電柱の陰に隠れましょう!」
「・・・新聞ゴミ箱に捨てて合図する奴な。」

アナログ式調査法。いにしえの刑事ドラマでなら見かけそうですね。

「ですから今回は、遠隔じゃなくてセンパイと一緒に現場を回ろうかなって思ってます。ここにいても仕方ないですし。」
「はあ?戦闘力ミジンコ以下が何言ってやがんだ。」
「だってセンパイがまともに情報収集できると思えません私。それに、サポート能力がないセンパイと、サポート能力がある私が揃えば百人力でしょう!」
「0.5+0.5=1って言いたいのかテメェ。」
「~~~~~♪」

今回はショパンの革命が5倍速です。ピアノコンクールは無理でも、口笛コンクールなら優勝しそうです。毎回チョイスがクラシックなのは何か理由があるのでしょうか。

「・・・わあったよ。チッ、また七面倒な・・・。」
「ん、・・・そうだね。柚さんといてくれた方が、僕としては安心だ。柚さん、取り敢えずしばらくは諜報メインで動く。刻が無茶をしないようにして欲しい。」
「テメェは何ポジだッ!!」
「これが信頼度の差ですよ、センパイ。」
「黙れ。」

通達無視3犯の前科は重いようです。

「探索地域は僕が2区街全域ずつ、刻と柚さんは分割街ごとに周ってくれ。初めは僕がA・B区街、二人は今日と同じCの東街からだ。まともな手掛かりがない以上、僕の方は広範囲を一気に確認して回りたいと思う。」
「・・・了解。」
「わかりました~!」
「何かしらの痕跡や情報があれば、その都度共有して欲しいな。特にあたりはね。聞き込みとかも出来るかい?」
「私がやるので大丈夫です!」
「おいコラ。」
同類ヤンキー相手の時はお願いしますね!センパイ!」
「はは、いい覚悟だクソが。」

刻の額に再び青筋が返り咲きました。最早見慣れた光景です。

「・・・今日の所はこれで解散かな。」
「うーん、そうですね。今の時間は、と。ーーありゃ?」

赤い猫耳パーカーのポケットからスマホを取り出した柚が、そう呟きました。

「あ?どうした?」
「いえ、22:31ですね。いい頃合いです。」
「そうだな。明日もよろしく頼む。刻、帰ったらゲームしないですぐ寝ろよ?遅刻するぞ。」
「うっせえ、分かってる。・・・てか何で知ってんだよテメェは!」
「なんか分かりやすいんですよねーセンパイって。大体ダメな方選ぶから。」
「・・・。」

何も言い返せない刻でした。残念。

刻と澄晴が出ていき、会議室の電気のスイッチに手を掛けた柚は、神妙な顔つきで己のスマホを眺めました。

「・・・明日には出ますかね。。」

そう呟くと、パチンと電気を消し、会議室は漆黒の闇に包まれました。


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