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第一章 日常
LOG The Creeping Abyss
「ちぇー泊まってけっつったのにホントつれねー奴、まーいいけどひゃはは」
漆黒のカーテンで締め切られた薄闇の中で、白い人影が笑い声をあげました。仄暗い照明が照らし出すのは、だだっ広い部屋にポツンと置かれた黒いソファー。淡い光沢を放つベルベット生地の上に寝転がった銀髪の男は、酔い醒ましに刻から渡されたサントリー天然水を徐に飲み干して、空になったそれをグシャリと握り潰しました。
「・・・警戒してんだか心配してんだか、かわいいねぇ刻」
どこか寂しげな様子でそう言うと、男は音もなく起き上がり、潰れたペットボトルを部屋の隅めがけて放り投げました。その先にゴミ箱がある訳でもなく、ただ黒々とした闇が部屋の縁を覆っているだけの筈でしたが。
グニャ
バクッッ
ーーその闇が、動きました。
まるで獲物に喰いつく肉食獣のように、"ソレ"はペットボトルを一瞬で飲み込むと、何事もなかったかのようにして周囲に溶けていき、あっという間に再び静かな"闇"に戻りました。
「あーってか"探偵ゴッコ"の待ち合わせ決めんの忘れたわマジ二度手間ファッキュー刻はあとで鬼電の刑に処す」
その"光景"を当たり前のような態度で受け流した男は、嬉々とした調子で窓へと向かい、シャッと勢いよくカーテンを開きました。明朝の薄い陽光が暗い室内に差し込み、男の銀髪に反射してキラキラと輝きます。
「こーゆー時何て言うんだっけ本日天気晴朗なれども波高し?違う?てか波って何」
「我々にとっての好機、ですかね。」
相変わらず意味不明な一人ノリツッコミを繰り広げていると思いきや、男の背後から突然声が聞こえてきました。それに動じた様子もなく、男は淡々と続けます。
「はあん、そりゃサイコーだぜやるなら今しかないって訳」
「ええ、全ての"手筈"は整っております。何なりとお命じ下さい、契約者よ。」
男は美貌を冷酷な微笑に歪めながら、無造作にジーンズのポケットに手を突っ込み、何かを取り出しました。
「ったく刻の奴可哀想になァ、風紀の点数稼ぎにされちゃってまあ」
柔らかい声音とは裏腹に、男は底冷えのする瞳でその"几帳面な文字の書かれたメモ"を見やります。瞳孔の開いた金の双眸は、底知れない憎悪を湛えていました。
「"主"のお示しになった通り、リザヴェーダの手の者でしたね。如何いたしますか。」
「んー?皆殺しに決まってんだろ」
ただし刻は生かしとけよ、と、男は静かに言いました。
「あいつは散々痛めつけて苦しませて縋りつかせてから俺たち・・・っつーか俺一人であの能力ごと優しく"食べて"あげるんだから、さ」
"親友"への歪んだ愛と行き過ぎた加虐癖の滲む、恍惚とした狂気の笑顔を浮かべながら、男は背後に佇んだ"人影"に、ヒラリと手を振ります。
「了解致しました。」
それを合図に気配が掻き消えるのを感じ、男はそっと呟きました。
「そうすればずっと"一緒"だからなー、刻」
漆黒のカーテンで締め切られた薄闇の中で、白い人影が笑い声をあげました。仄暗い照明が照らし出すのは、だだっ広い部屋にポツンと置かれた黒いソファー。淡い光沢を放つベルベット生地の上に寝転がった銀髪の男は、酔い醒ましに刻から渡されたサントリー天然水を徐に飲み干して、空になったそれをグシャリと握り潰しました。
「・・・警戒してんだか心配してんだか、かわいいねぇ刻」
どこか寂しげな様子でそう言うと、男は音もなく起き上がり、潰れたペットボトルを部屋の隅めがけて放り投げました。その先にゴミ箱がある訳でもなく、ただ黒々とした闇が部屋の縁を覆っているだけの筈でしたが。
グニャ
バクッッ
ーーその闇が、動きました。
まるで獲物に喰いつく肉食獣のように、"ソレ"はペットボトルを一瞬で飲み込むと、何事もなかったかのようにして周囲に溶けていき、あっという間に再び静かな"闇"に戻りました。
「あーってか"探偵ゴッコ"の待ち合わせ決めんの忘れたわマジ二度手間ファッキュー刻はあとで鬼電の刑に処す」
その"光景"を当たり前のような態度で受け流した男は、嬉々とした調子で窓へと向かい、シャッと勢いよくカーテンを開きました。明朝の薄い陽光が暗い室内に差し込み、男の銀髪に反射してキラキラと輝きます。
「こーゆー時何て言うんだっけ本日天気晴朗なれども波高し?違う?てか波って何」
「我々にとっての好機、ですかね。」
相変わらず意味不明な一人ノリツッコミを繰り広げていると思いきや、男の背後から突然声が聞こえてきました。それに動じた様子もなく、男は淡々と続けます。
「はあん、そりゃサイコーだぜやるなら今しかないって訳」
「ええ、全ての"手筈"は整っております。何なりとお命じ下さい、契約者よ。」
男は美貌を冷酷な微笑に歪めながら、無造作にジーンズのポケットに手を突っ込み、何かを取り出しました。
「ったく刻の奴可哀想になァ、風紀の点数稼ぎにされちゃってまあ」
柔らかい声音とは裏腹に、男は底冷えのする瞳でその"几帳面な文字の書かれたメモ"を見やります。瞳孔の開いた金の双眸は、底知れない憎悪を湛えていました。
「"主"のお示しになった通り、リザヴェーダの手の者でしたね。如何いたしますか。」
「んー?皆殺しに決まってんだろ」
ただし刻は生かしとけよ、と、男は静かに言いました。
「あいつは散々痛めつけて苦しませて縋りつかせてから俺たち・・・っつーか俺一人であの能力ごと優しく"食べて"あげるんだから、さ」
"親友"への歪んだ愛と行き過ぎた加虐癖の滲む、恍惚とした狂気の笑顔を浮かべながら、男は背後に佇んだ"人影"に、ヒラリと手を振ります。
「了解致しました。」
それを合図に気配が掻き消えるのを感じ、男はそっと呟きました。
「そうすればずっと"一緒"だからなー、刻」
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